■リーグ首位に立つ長野、それを追う長野

JFLが激しさを増している。町田ゼルビアと松本山雅FCのJリーグ加盟、ジェフリザーブズのチーム活動終了に伴い、地域リーグ決勝大会を勝ち抜いた3チーム(Y.S.C.C、藤枝MYFC、HOYO大分)が今季から新たに参戦(その後、アルテ高崎も退会)。リーグの構成はさらに混沌の度合いを増した。個人的には良いことだと考えている。

JFLは決して上を目指すクラブの『通過儀礼』のためにあるわけではない。Jリーグ準加盟クラブだけではなく、企業クラブや街クラブもアマチュアの最高峰リーグで栄冠を目指して奮闘しており、Jリーグ経験豊富な選手を多く補強したドリームチームが、無名の選手ばかりのチームに簡単に足元をすくわれるリーグである。もちろん準加盟3チームの動向も気になるところで、まずJFLの現況、そしてJ2との入れ替え戦などについて述べさせていただく。

チーム数が奇数の関係で消化試合数にバラツキがあるものの、第23節が終わった時点でリーグの首位を走っているのは長野パルセイロ。そしてV・ファーレン長崎が勝ち点差2で追う展開となっている(ただ長崎は濃霧中止のために消化試合が1試合少ない)。ついでSAGAWA SHIGA、Y.S.C.C、HondaFCと続く。リーグ開幕当初は順調にトップグループを走っていたカマタマーレ讃岐は勝ち点を積み重ねることが出来ず6位となっている。

■大健闘を見せているYSCC

注目は、『新規参入組』のY.S.C.Cが4位の大健闘を見せていることだ。2009年、2010年の地域決勝で筆者はこのチームのサッカーを目にしている。特に2009年は松本山雅と対戦しているだけに、個人的な思い入れもそれなりにある。特徴はなんといってもリーグ最多得点を誇る攻撃力だろう。

きっちりとポゼッションしながら崩していくというサッカーは見応え十分。フィニッシャーとして辻正男が存在感を発揮しているのも強みで、その分失点も多いのは御愛嬌だが、もともとJリーグ加盟など上を目指す意思はなく、総合型地域スポーツクラブとして現実よりも理想を追いかける事が許される。こういったチームの活躍こそがJFLの本質であろう。SAGAWA、Hondaも共に世代交代を進めており、JFLの雄のプライドにかけて、準加盟チームを易々と勝たせることはしまい。

■今季から導入された、J2・JFL入れ替え戦

そして今季のJFLの大きな特徴はやはり『J2・JFL入れ替え戦』だろう。これまではJリーグは拡張路線をとり、Jリーグに加盟したクラブが再びJFLに降格するということはなかった。しかし、Jリーグが全40クラブとなったシーズンからJ2とJFLのクラブによる入れ替えが行われることは2008年7月のJリーグ理事会において決定されている。

もちろん、JFLで1位になったから来季はJリーグに加盟できる、といった話ではない。そこに出てくるのが準加盟制度であり、クラブライセンス制度である。準加盟についてはこれまで同様だ。幾つかの諸条件を満たしたクラブがJリーグに認められて、初めてJへの挑戦権を得ることが出来る。ツエーゲン金沢やFC琉球などは準加盟を申請したものの認められていない。

現在、JFLに所属するクラブで準加盟資格を持つのは、長野・長崎・讃岐の3チームである。さらに2013年以降はクラブライセンスの取得が必要となった。長野は現在リーグ首位。しかし、本拠地である南長野運動公園総合球技場はJリーグ公式戦を開催できる要件を満たしていないため、クラブライセンスの申請を行っていない。つまり来季Jリーグに参戦出来る可能性があるのは、準加盟資格を持ち、かつクラブライセンスの申請を行っている長崎と讃岐ということになる。

■昇格を狙う長崎

意気が高いのは長崎であろう。本拠地の県立総合運動公園陸上競技場は2013年3月から使用が可能と報道されており、2013シーズン開幕に間に合うことになる。順位も好調、また平均入場者数もここまで4000人を超えている。名門国見高がありサッカー文化も根付いている長崎の地にJリーグクラブが誕生するのか耳目を集めそうだ。