消費増税可決後に「復興予算6兆円余っていた」ことが判明

写真拡大




なぜこの時期に「6兆円余っていたこと」を発表したのか?


消費税増税を柱とする社会保障・税一体改革関連法案が衆議院本会議で可決されたのは、2012年6月26日であった。そして、7月10日付の東京新聞に「6兆円余らせ なお増税」という記事が1面のトップに掲載された。消費増税が決まってから、たった2週間後に復興予算が6兆円も余っていたことが明らかになったのである。



復興予算が6兆円も余っていたことは、昨日今日になって分かったことではない。当然、2週間前に同法案が可決されたときに、閣僚や議員、政府関係者、各省庁の官僚らの多くは、そのことを知っていたと思われる。ならば、予算が6兆円も余ることを分かっていながら、さらなる予算を得るために消費増税を強行したことにならないか。



大辞泉には、「詐欺」とは「他人をだまして、金品を奪ったり損害を与えたりすること」と書かれている。実は予算が余っているのに、予算が足りないといって増税をすることは、ある種の詐欺であるように思えるのは筆者だけであろうか。国民をだまして、緊急には必要のない増税を決行し、国民の懐に負担をかけるのだから。



復興予算の約15兆円も、それに含まれる「余った6兆円」も、「そもそも、所得税や個人住民税のほか、子ども手当見直しなどの歳出削減、政府保有株式を売却することなどで工面」したお金である。6兆円もの余った予算があるのなら、消費増税を衆議院で可決する前に、政府は国民へその実態を報告するのが筋だとは言えないか。



被災地の復興が滞っている大きな原因のひとつは、復興庁の設置が大幅に遅れたことだと言える。省庁の縦割りにメスを入れ、予算の決済や使われ方をスムーズにさせる復興庁が設置されたのは、なんと震災から11カ月も経過した2012年2月10日であった。結局、2011年度の復興予算は、各省庁が「『復興』の名の下に、あらゆる事業を盛り込んで予算額の奪い合いに走った」ものとなったのである。


すべては政府のアクション遅延が問題?


政府のアクションが愚鈍であったがゆえに復興庁の設置が遅れ、設置が遅れたために予算が余ってしまった。このこと自体に憤りを感じるが、さらにその事実を消費増税を衆議院で可決した後に公表した点に、政府の姑息さを感じる。2011年度の国家予算は約94兆円であり、余った6兆円というのはその6.4%にあたることを、読者のみなさんには考えてほしい。



いまだに反対の意見も多い消費増税だが、国家予算が6兆円も余っていたことを事前に知っていれば、さらなる国民が法案可決に反対したのではないか。繰り返すが、予算が余っているのに、予算が足りないといって増税法案を可決することは、国民に対する政府の詐欺に限りなく近い行為なのではないか。政府・民主党には失望し続けてきたが、この件で失望が絶望に変わってしまった。





(谷川 茂)