■継続は力なり

第5節に今季初勝利を奪った岡山は、その後クラブ史を塗り替える快進撃を続けて6勝2分の8試合無敗で過ごした。第13節の岐阜戦に敗れて無敗はストップしたものの、影山体制3年目を迎えて『6位以上』の目標を掲げた今季、チームは確かな成長を見せている。

継続は力なり。この言葉を信じて疑うことなく岡山はチーム作りを進めている。今年から飛躍的に採用するチームが増えた[3-4-2-1]を岡山は昨年から一貫して継続してきたことによって、既存選手たちの戦術理解度は高く、ピンポイントで補強したことによって新戦力も早期にフィットした。第13節を終えた段階でリーグ3位の8失点に抑えている守備面ではその成果が顕著で、ポジションごとの役割が細部まで浸透したことによって「オートマチックにできるようになっている」と指揮官が手応えを語るまでになっている。

攻撃面ではゴールゲッターとして期待が集まったブラジル人アタッカーのアンデルソンが長期離脱となる誤算があったものの、同じく新潟から加入した川又堅碁が額面通りの力を発揮し、2年目のキム・ミンキュンは抜群のキープ力とパスセンスでけん引。昨季から取り組んできた最終ラインとボランチの5人でポゼッションしながら両ワイドへ配給していく形の精度が向上してきたことで、チャンス数が飛躍的に増えて個人能力も際立つようになっている。

■チーム全体の一体感や選手の責任感を高める

影山監督のマネージメントも今季のチームの成長を語る上では欠かせない。前述したアンデルソンは今後の復帰も目途が立っておらず、ディフェンスリーダーの一人である近藤が今季中の復帰が絶望的な負傷を負うなどアクシデントが絶えないことを逆手にとり、指揮官は述べ19人のフィールドプレーヤーが一度は先発メンバーに名を連ねる日替わりメンバーで戦ってきた。

常にチーム内の競争を活性すべく選手たちには目の前の一戦だけに集中することだけを求め、練習場でのアピール合戦に勝利した選手を試合に起用する指揮官のマネージメントによって試合前日まで高い緊張感が保たれた中で練習が行われている。そのため選手たちは「練習からみんなの勝ちたい気持ちがあふれているし、全員で次の試合に勝ちに行こうというまとまり感がある」(川又)と語って充実感をにじませ、チーム全体の一体感や選手個々の責任感を高めることにつながっている。

■一歩ずつ成長していくために

ただ、岡山は決して爆発的な成長を見せているわけではない。むしろ、その足並みは遅々としたモノだ。第13節の岐阜戦ではホームスタジアムに9千5百人を超える観衆が集まった中、最下位の岐阜に敗戦して失意に包まれた。ハードワークを基盤にしているチームが相手にハードワークで上回られて足元をすくわれた一戦は、まだ「6位以上」に入る資格を有していないことを示したと言えるだろう。次節の東京V戦と次々節の京都戦で岐阜戦の教訓を活かすことができるか。岡山は前半戦のターニングポイントを迎えることとなるが、結果に捉われることなく一歩ずつ成長していくための足並みを止めることはない。

「結果がわれわれに自信を与えてくれていて、ちょっとずつ膨らんだ自信がまた結果につながっている。ただ、いつかは失点するし、いつかは負ける。そういった中でも落ち込みすぎずにダメだったところを反省して次のゲームに臨めばいい。これからも結果に一喜一憂しないで自信になったところを高めながら続けていくことが大事だと思います」。まったくブレることのない影山監督の下、少しずつ、確実に、岡山は成長を続けている。

■著者プロフィール
寺田弘幸
サンフレッチェ広島とファジアーノ岡山を主に、ユースや高校サッカー、中学サッカーなどのカテゴリーを取材。今年は新しくなる東西リーグとプリンスリーグ中国を精力的に取材する予定。9月から『蹴球広島』という有料メールマガジンの配信を開始した。