先の6月7日、Googleは、Googleが提供するテクノロジーを使ってモバイルアプリを開発する企業や団体をGoogle公認の開発機関として認定する「Google Developers Agency Program」を発表した。

ざっくり簡単にいうと、このプログラムの認定を受けることでGoogleからお墨付きが出る、それを他の企業との差別化に使えるということ。

Google Developers Agency Programのサイトにはプログラムの一環として、
・最新のGoogle APIやベストプラクティスに関するトレーニング
・開発者向けのイベント
・アーリーアクセスプログラムへの参加
・1対1のオンラインサポート
アプリのUXレビュー

が上げられている。

実は、これまでもMicrosoftやAdobeなど開発元による公認プログラムは多々あった。

しかし、Google Developers Agency Programが、いま出てきたというのは注目だ。

◎そもそもスマートフォンスマートフォンアプリが化けた理由
いまや私たちの生活になくてはならなくなったスマートフォンだが、ハードウェア以上にスマートフォン上で動くアプリが重要だ。

多種多様なアプリが登場し、それがスマートフォン普及の大きなドライブになったからだ。

背景には、AppleやGoogleが、個人・企業を問わず、開発者にアプリ開発のツールを開放したことが大きい。
それまでソフトウェアの開発というと、大手企業が大人数のエンジニアを投入して行うものだった。とても個人や小規模な企業で行うことは難しかった。それを「開発用にSDKやツールを準備しましょう」としたことで、個人でもアプリ開発に参入しやすくなったのだ。

販路という面でも、流通チャネルのない素人でもビジネスできるよう、オンラインにマーケットを作った。このことも、スマートフォンアプリ開発に個人が参入する大きな後押しになった。

結果、世界中の開発者が参入。特に、iPhoneアプリ市場の初期には、個人が開発したアプリが世界中でヒットするという社会現象も生み出した。
そうした背景を考えると、Google Developers Agency Programはちょっと時代がさかのぼったのではないか、という印象もある。

◎AppleとGoogle
SDKや各種ツールが基本無料とはいえ、Appleの場合、アプリとしてリリースするには有償のDevelopper Programに登録する必要がある。また、アプリをインストールするにはApp Storeを経由しなければならず、無料アプリであってもApp StoreでリリースするにはAppleの審査を受けることになる。リジェクトされた場合は、アプリをApp Storeでリリースできない。

一方、これまでGoogleはアプリ開発への縛りらしい縛りはなかった。
Androidの場合、アプリのインストールは基本自由。多くの場合、Gppgle PlayやAmazon Androidアプリストアなどのアプリマーケットから入手することになるが、開発者から直接アプリをファイルでもらって実機にインストールすることも、実は可能だ。

それが、
・iPhoneアプリはリリース前の審査により安全が保証されていて安全(反面、エログロ系のNGといったコンテンツのポリシー以外にも、広告や課金の仕組みもAppleの規約に準拠する必要がある)

・検閲を受けないAndroidアプリは自由(反面、セキュリティ上の問題など発生しやすい)

という図式を生んでいた。

今回、Google Developers Agency ProgramによるGoogle公認の開発機関が登場することで、これも今後変わるのかもしれない。
Googleの提供するプラットフォームで動作するアプリに、より安定した技術がシステマチックに入ってくることになり、機能や性能、品質が上がることが期待できるからだ。

このGoogle Developers Agency Programは、数ヶ月前からすでにインド、英国、ロシア、米国、インドネシア、カナダなど、一部の国で実施されているという。
前時代的なシステム(つまりは機能しないもの)になってしまうのか?
有意義なシステムになるのか?
現状では、まだわからない。

一方、AppleもApp Storeのメジャーアップデートの実施を公表している。
明らかにされているのは、アプリの審査時間の大幅な短縮化、サブスクリプション課金(定期購読課金)の開放、検索連動型広告(リスティング広告)の導入など。

いずれにせよ、普及期から成熟期に移行し、スマートフォンアプリ市場も変換点、転換期を迎えつつあるといえるのだろう。


大内孝子