■相手の心理を読む守備ができるように

年間25失点という堅守を実現できたのは、個々が守備範囲を広げることができただけでなく別の要因もあった。手倉森監督は先程の守備範囲の話をした後に「ただ守備でオーガナイズを組むだけではなくて、対戦する相手の心理を読みながらゲームをすることが、選手一人ひとりに身についていると感じます。例えば残留争いをしているチームに対して、優勝争いをしているチームに対して、それぞれのホームやアウェイというところで、そのゲームのシチュエーションで起こりえるところを予測して今シーズン戦いきることができたと思います」と語っている。

相手の心理が読めるようになってきた、という話が監督や選手から聞かれるようになったのは秋頃からだ。特に夏場勝てない時期にゲームコントロールがうまくいかなかった反省から、しっかりとゲームコントロールして、相手の出方を読む戦いができるようになった。夏場の勝てなかった時期も成長の糧にできたことが、チームのさらなる躍進に繋がった。

「今年は震災があって、この震災には『勝つ』という表現はしないで、震災に『負けない』という表現はすると思うのですけれど、まさに負けたくないメンタリティをみんなが持っているからこそ、守備の意識が高いのだろうなと思っています」と11月の浦和戦後の記者会見で語った手倉森監督。確かに「負けたくない」というメンタリティが守備の安定に繋がったのは確かだろう。しかし、これだけ安定した守備を見せることができたのは戦略的な補強によって守備範囲を広くする試みが成功し、相手の心理を読む守備ができるようになったことが最も大きい。守備の面での「V-Shift」は、当初の狙い以上の成功を収めた一年と言えるだろう。

次回はシーズン当初の狙いを踏まえて、今シーズンの仙台の攻撃を再検証したい。

■著者プロフィール
小林健志
1976年静岡県静岡市清水区生まれ。大学進学で宮城県仙台市に引っ越したのがきっかけでベガルタ仙台と出会い、2006年よりフリーライターとして活動。ベガルタ仙台オフィシャルサイト・出版物や河北新報などでベガルタ仙台についての情報発信をする他、育成年代の取材も精力的に行っている。

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