オールスター戦の前日に行われる恒例のホームラン競争で、ヤンキースのロビンソン・カノがレッドソックスのエイドリアン・ゴンザレスを1本差で破り、優勝した(7月11日付ESPN)。

 今年のホームラン競争は見所が多かった。一回戦、二回戦を立ち上がって決勝戦に進んだのがカノとゴンザレスで、ヤンキース対レッドソックスのライバル同士の闘いとなったこと。両者ともに二回戦を終えた時点で、ホームランの数が20本と、高いレベルの闘いとなったこと。そして、カノに投球したのが父親のホセ・カノだったこと。

 一回戦はカノが8本、ゴンザレスが9本だったが、二回戦でカノが12本、ゴンザレスが11本と互いに一歩も譲らず、観客を沸かせた。決勝では先にゴンザレスが11本のフェンス越えを放ち、これで決着がついたかと思えた。なにしろ、これまでのホームラン競争で、決勝で11本を打ったのはボビー・アブレイユ(2005年)とデイヴィッド・オルティーズ(2010年)のふたりしかいないのだ。

 カノはあきらめなかった。最初の7振りで5本を客席に叩き込むと、着々と本塁打を打ち続けた。観客が総立ちで声援を送るなか、11本目が飛び出し、ゴンザレスに追いついた。そして12本目を打つと、マウンドに駆け寄り、父親と抱き合って喜びを爆発させた。

 父親のホセは元メジャーの投手で、1989年にはアストロズでレッズ戦に登板して完投で初勝利を飾ったが、これがメジャーで最後のマウンドとなった。その後、息子がバットを振れる年齢になると、いつも打撃練習の相手をしたという。「うちでいつもやってたから、息子からホームラン競争で投げてくれないかと電話があったときは二つ返事で引き受けた」

 ロビンソンは自宅でいつもそうしてきたように、内角低めを父親に要求。それがホームランの大量生産につながった。息子がホームランを打つたびに、ホセはマウンドで「あと10本、あと9本」と数え続け、ゴンザレスに追いついてからは「あと1本。1本だけでいいんだ」と心の中で唱えながら投げたという。

 ロビンソンは「競争に勝ったのはぼくじゃない。このトロフィーは親父のものだ」と朗らかに笑った。「すばらしい思い出ができた。いつまでも忘れないだろう」