ブリヂストン次世代タイヤ『エアフリー』をタイヤの達人が深堀り(後編) 空気がなくて乗り心地は大丈夫? 気になるコンパウンド特性
実際に乗ってみた感触は
滋賀県東近江市にて、エアフリーを装着したスローモビリティ『奥永源寺けい流カー』が社会実装されることになり、現地で実際に同乗試乗してきました。
【画像】滋賀県東近江市にて、スローモビリティ『奥永源寺けい流カー』出発式の様子 全36枚
興味深かったことが2点あります。

空気入りタイヤも経験済みのドライバーさんも、接地性の良さを強調。 ブリヂストン
ひとつ目は、乗り心地がいいこと。路面のひび割れや段差を乗り越えても、ゴツンとかドンとかいったタイプのショックが一切なく、想像以上にしんなりとショックを受け止めていたことです。
奥永源寺けい流カーで空気入りタイヤのときからドライバーを務め、今回も運転していただいた仲谷さんも、接地性の良さを強調していました。
従来の空気入りタイヤだと、路面の継ぎ目や小さな段差を拾って(タイヤが弾み)ワーニングが点灯するのですが、エアフリーだとその頻度が半減しているのだそうです。
このことは、エアフリーのタイヤとしての特性を良く表しているのではないかと思います。
トレッドゴムをたくさんのフィンで支えているので、一見すると硬そうに見えるし、変形を元の形に戻そうとする反発力も強いのかなと思っていたのですが、エアフリーには全然違ったチューニングが施されていました。
同乗で感じたタイヤの乗り心地の良さは、空気入りタイヤのそれとは違い、ひたすらショックを受け止める乗り味で、反発感は少なく感じられたのです。
タイヤの変形による反発力が少ないのでは
空気入りタイヤは空気の特性上、(変形により)圧縮すると反発力が生まれるのですが、エアフリーはショックを逃がしているような印象で、変形したフィンが元に戻ろうとする反発感が少ない印象なのです。
これは仲谷氏のコメントとも符合しています。タイヤが弾み、接地圧が少なくなることで比較的頻繁に起点灯していたワーニングが、エアフリーに変えたことで点灯しにくくなったということです。

空気入りのタイヤと違い、スポーク部の材質や形状によって変形と反発を別々に設定できる。 斎藤聡
つまり、タイヤの変形による反発力が少ないのではないかということが推測できるわけです。
現在われわれが使っている空気入りタイヤは、空気をタイヤに充填し、空気の反発力をタイヤの剛性として使っているのですが、エアフリーは、空気を充填しないため、スポーク部の材質や形状によって、変形と反発を別々に設定できるわけです。それが乗り心地の良さにつながっているのだと思います。
ということは、空気入りタイヤのような反発特性を作り出すことも不可能ではないわけです。現在小平市で実証実験している軽自動車+エアフリーは速度域も高く、奥永源寺けい流カーとはまた違った特性になっているのかもしれません。
使用するコンパウンドは?
もうひとつ、同乗試乗させてもらって感じたことがあります。それは、トレッドゴムコンパウンドに、空気入りタイヤのような柔らかさはいらない、ということです。
ちょっと誤解を招きそうな言い回しになってしまいますが、空気入りタイヤと違ってソリッドゴム(中実ゴム)です。

耐千切れ性能が高く、ウエット性能にも優れた生ゴム(NR)の比率が高めか。 斎藤聡
もちろんゴムの材料構成によって、柔軟性の高いものから弾性の高いものまで、さまざまな種類が考えられますが、今回採用になったエアフリーのトレッドコンパウンドに限っていうと、転がり抵抗と耐摩耗性、それにあえて言えば耐千切れ性を重視したトレッドゴムであるように思います。
1枚のソリッドゴムなので、空気入りタイヤのようにタイヤが変形して力を逃がすことができないため、交差点など低速でハンドルを大きく切った場合、かなりトレッド面に力がかかるように見えます。
とはいえ、ぶら下がり取材のコメントから推察すると、たぶんそれほど特殊なコンパウンドを使っていないのではないかと思います。
とすると、耐千切れ性能が高く、またウエット性能にも優れた生ゴム(NR)の比率が高く、またゴムの強度(弾性)を高める目的でカーボンブラックを相当量配合しているのかな、などと想像を巡らせてしまいます。
想像以上に早かった実用化
今回いよいよ社会実装となったエアフリーは、使用する気象条件や、モビリティの種類などによって、様々な仕様を作ることができるのだと思います。
例えば、福井の電気バス型車両(スローモビリティ)では、降雪時の性能もある程度考慮されているのかもしれません。当然、コンパウンドの配合も、低温特性と耐磨耗性のテストも組み込まれているのかもしれません。

路面の悪さを拾って点灯するワーニングが、空気入りタイヤの時と比べて半減したという。 斎藤聡
話が飛躍してしまいましたが、今回社会実装された奥永源寺けい流カーに同乗試乗して感じたのは、想像以上に実用化が早かったということです。
エアフリーにより、メンテナンスフリーとサスティナビリティを掲げた『持続可能な地域交通の実現』という目標は達成したといってもいいのではないかと思います。この後も、地域の環境や使用するモビリティに合わせたエアフリーの社会実装が広がっていくことが期待できます。
個人的には、小平市で実証実験を行っている軽自動車用エアフリーが気になります。ブリヂストンによれば、いつとは明言しなかったものの、そう遠くないタイミングで、より詳しい取材ができそうですので、併せてお楽しみに。

