優勝を果たし、喜ぶスペイン選手たちの隣りで笑顔を見せるトランプ米大統領(C)ロイター/Imagn Images

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【現地発 北中米W杯は今日もクレージーだった!】#17

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 ボンジーア! 長かったW杯もスペインの優勝で幕を閉じた。それにしてもクレージーな大会の決勝はやっぱりクレージーだったよ。

 予想通り、トランプ米大統領は大会最後にやって来た。ただ、決勝を観戦しに来たというよりは、邪魔をしに来たって感じだったね。スタジアムの上空をヘリコプターで旋回し、到着をアピールした後、近くのヘリポートから車を連ねて会場へ。その間、一般人は通行禁止。暑い中ずっと待ってなきゃいけなかったんだ。

 防弾ガラスのVIPボックス席でトランプは終始ご機嫌。FIFAのインファンティーノ会長と共に観戦していたけど、そこでありえないことが起こった。普通、W杯トロフィーは表彰式まで厳重に保管されているはずだけど、今回はインファンティーノが、ブラジルの元エース・ロナウドに持ってこさせ、ずっとトランプの後ろに置かれていたんだ。世界王者しか触れちゃいけないトロフィーを素手で気安く叩くトランプの姿がカメラに残っている。

 そして表彰式。ピッチにトランプが現れると、1分間はブーイングの嵐。表彰台にはトランプの他にメキシコの大統領とカナダの首相も出席したけど、選手にメダル、トロフィーを渡すのはトランプだけ。3カ国共催だってのに失礼だよね。とにかくインファンティーノはトランプの顔色しか見ていない。

 でも逆に選手たちは塩対応だったよ。みんなできるだけトランプと目を合わさないようにしていたし、アルゼンチンのロメロなんてガン無視だったからね。メッシも握手はしたものの視線は別のところにあった。実は数カ月前、メッシはインテル・マイアミの一員としてホワイトハウスに招待され、そこでトランプと満面の笑みで写真を撮った。これがアルゼンチンではすごく批判されて、その二の舞いを演じたくなかったのかもしれない。

トム・クルーズも人生最大の“ミッション・インポッシブル”

 そしてトランプはまたやった。昨年のクラブワールドカップの時もあんなに非難されたのに、またも優勝セレブレーションに割り込もうとしたよ。でも予測していたキャプテンのロドリがうまくトランプを追い払った。どうしても自分が主役でありたいんだね。でもトランプ自体は満足したみたいで「また近いうちにアメリカでW杯をやろう」って言ってるみたい。もうごめんだけどね。

 そうそう、ハーフタイムショーのことも話さないといけない。ショーは予定通り行われて結局27分。サッカー史上最長のハーフタイムとなった。でも全て中途半端。進行も悪く、バカみたいな格好をさせられたロナウドとロナウジーニョがマドンナと登場したけど、歌が始まった後はどうしていいかわからず、途方に暮れていた。とにかくスタジアムじゃ盛り上がりもなく、多くはトイレやピザを食べに行ってスタンドはおよそ半分が空になった。

 さらに試合前のトム・クルーズの演説も、結局アルゼンチンサポーターのチャントにかき消され、何のためにいるかもわからなかった。彼にとっては人生最大の“ミッション・インポッシブル”だったかもしれない。結局全て米国とFIFAの自己満足。選手は長いハーフタイムに何のコメントもしていないけど、アルゼンチンの協会幹部は「百害あって一利なし」とそっと教えてくれたよ。

(Ricardo Setyon/ジャーナリスト)

翻訳=利根川晶子(とねがわ・あきこ)埼玉県出身。通訳、翻訳家。1982年W杯でイタリア代表タルデッリに魅せられ、89年にイタリア・ローマに移住。「ゴールこそ、すべて」(スキラッチ自伝)など著書、訳書多数。