スウェーデンで激増する「子どものヒットマン」日本の闇バイトに酷似した“巧妙な手口”と刑事責任年齢引き下げの抜け道

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かつて福祉国家の象徴だったスウェーデンでは今、組織犯罪の罰則が軽い15歳未満の少年が、数万円程度の報酬で「使い捨ての暗殺者」として利用されている。SNSで殺人を「ミッション」と呼び、ゲーム感覚で勧誘する手法はまるで日本の「闇バイト」のようだ。個人情報が公開されている社会構造や移民の貧困問題を背景に、一度足を踏み入れると逃れられない、平和な国家の衝撃的な闇の部分。

【画像】子どもたちを犯罪の道へ…悪質な勧誘手段

谷本真由美氏の書籍『世界のニュースを日本人は何も知らない 激レア&ディープ情報版』より一部を抜粋・再構成し、スウェーデンで急増する「子どものヒットマン」の実態を解説する。

スウェーデンのヒットマンは小学生だらけ

政府は2025年9月、急増する少年犯罪に対抗するため、刑事責任年齢を15歳から13歳に引き下げる歴史的決断を下しました。

スウェーデンは近年薬物をめぐる犯罪が悪化、縄張り争いに起因する暴力犯罪の急増を抑制しようと、10年以上にわたり苦闘してきました。

全体的な犯罪数は2017年以降減少しているのですが、15歳未満の子どもが関与している可能性のある犯罪の件数は10年で倍増しています。しかも凶悪犯が増加し、爆弾犯罪や殺人事件の容疑者である15歳未満の子どもは2年で5倍に急増しました。

組織は逮捕されても罰則の軽い10代前半の少年を「兵士」としてリクルートし、数万円程度の報酬でライバル組織の殺害などさまざまな工作に使うのです。

子どもは銀行口座や車両登録、雇用履歴など、通常警察が犯罪者を追跡するのに使用する資産や物を持っていないので、追跡がむずかしいのも好都合のようです。

さらに犯罪者は子どもの刑が軽いことも認知しています。スウェーデンでは15歳未満の子どもは拘禁できず、15歳から17歳の子どもは通常、成人刑務所ではなく、国立機関ケア委員会(SiS)が運営する閉鎖型の未成年者向け施設である「閉鎖型青少年ケア施設」に送られます。

ここで起訴されないと、青少年強制保護法(LVU)により社会サービス保護施設で更生を受けます。暗殺や殺人を犯しても起訴されないこともあります。

また、基本的に子どもたちは使い捨ての“鉄砲玉”です。むかしはスウェーデンでも犯罪組織が組織化されていて、ヒットマンは高度な技能があり、職業犯罪者によって遂行される「しのぎ」だったのですが、子どもを使ったほうが効率が良くコストも安いので、近年は暗殺や殺人、爆破などで大人気なのです。

日本の闇バイトとそっくりなスウェーデンの未成年兵士リクルート

そして、なんと驚くべきことにスウェーデンの未成年兵士リクルートの仕組みは日本の闇バイトにそっくりです。

スウェーデンとデンマークの司法大臣が2024年に実施した記者会見によれば、リクルートの最初の入口にはソーシャルメディアが重要と述べています。

まずFacebook(フェイスブック)やInstagram(インスタグラム)、Xのような公開プラットフォームで、ミーム(ネットでみんなが真似して広めるネタ)、ミュージックビデオなどを流し、そこに犯罪者が、隠語が含まれたフレーズやキーワードを流すのです。

ミームや音楽に惹きつけられた子どもは、コメントに書かれたり、その動画の中で流れる隠語に親しみます。そして、リクルートする側は徐々に「クイックワーク」(簡単なバイトがあるよ!)と流し、TikTokやTelegram(テレグラム)に誘導して交流を始めるのです。

さらに仕事は分割して与えられます。子どもや若者には全体像は知らせません。荷物を配達する、見張り役として行動する、または攻撃を実行するなどの役割を分割し、誰が最終的な実行役かわからないようになっています。

ソーシャルメディアには依頼の広告も出ますが、料金も掲載されています。

以下はアルジャジーラによる2025年12月15日の「殺人の準備はできたか?」(「 Ready to Murder?」)という記事に掲載された広告の例です。

●殺人 ※「k」「m」の上の数字はスウェーデン・クローナ(通貨単位)の金額

マルメ 緊急:800k~1m (8万5000~10万7000ドル/約1300~1600万円)
ヨーテボリ 緊急:300~400k(3万2000~4万3000ドル/約512~680万円)
ストックホルム 緊急:500k(5万3000ドル/約840万円)
デンマーク:100k(1万5100ドル/約227万円)

●手榴弾を投げてください

マルメ:30~50k(3100~5300ドル/約50~80万円)
また、スウェーデン警察当局が公開したリクルーターのチャットを文字起こしすると次のようになります。

(1)狙撃手が必要です、今すぐ、今すぐ、今すぐ。マルメ。すべての準備が整いました。住居も交通費も必要なく、ただ行くだけです。800k
(2)オレブロに仕事はありますか?
(3)先ほど、デンマークで500k、ヘッドショットで500k、手榴弾を投げて200k、スウェーデンで殺人100k、スウェーデンで爆弾を投げて50k、たくさんの現金が稼げる
(4)ストックホルムで仕事を探していますが、殺人は求めていません

このような依頼はかなり気軽でポップな広告として登場し、「チャレンジ」や「ミッション」と呼ばれており、ゲームの中にでてくるような印象にされています。

狙われる貧困層の若年層

このゲームらしく見せかけることを「ゲーミフィケーション」と呼びます。子どもはゲームに慣れ親しんでいるので、こういう殺人闇バイトが、魅力的で気軽な遊びのように見えるのです。リクルーターに接触してから子どもが犯罪に及ぶ期間は数日から1か月。子どもたちには、銃撃や爆破事件の前に感覚を鈍らせるためにオピオイド系鎮静剤が与えられます。

そして一旦リクルーターに関わると逃げ出すのが困難です。日本の感覚では驚くべきことですが、スウェーデンでは個人情報や住所はほとんどの場合、一般公開されています。一般的に欧州やカナダは、実は不動産や個人情報が一般に公開されていることが少なくありません。これは社会の透明性を確保するためです。

しかしこういう透明性が犯罪抑制にプラスないっぽうでマイナスにもなります。

リクルーターに接触した子どもは、犯罪を実行する前にすべての身分証明書を提供するよう求められます。したがって不起訴や釈放になっても、ギャングの構成員に個人情報を握られてしまうので、さらなる犯罪を強いられる危険にさらされます。家族に危害を加えると脅すこともあります。個人情報が公開されているので、家族の個人情報や居場所の特定も簡単なのです。

子どもたちはこのような「仕事」をすると、ステータスが上がるのです。すごい犯罪者として自己承認も得られます。

さらにソーシャルメディアテレビで目にする「服、金のチェーンネックレス、スマートフォン、車、贅沢な生活」が手に入ります。経済的に困窮している子どもたちには魅力的に映ってしまうのです。

こうした背景から、どんな子どもがリクルートされるかというと、主に郊外地域の貧困地帯出身です。

スウェーデンでは1960年代から70年代に、労働者階級向けに公団を作りました。当初は社会主義的な理想を持って提供された住宅だったのですが、社会が豊かになると退去する人が続出。空き室を移民や難民に割り当てたのです。こういう公団は固まって存在していて豊かな地域とは隔絶しており、経済格差もあるのでスウェーデンのほかの階層とは接点がありません。

住んでいる人の多くは移民や難民なので経済的には貧しい家庭が多く、家庭は崩壊しています。そういう地域の子どもたちで、家を追い出され、お金もなにもない子たちが兵士としてリクルートされているのです。ギャングの仲間になれば面倒を見てもらえ、居場所もあり、存在が認められ、大金や武器、服、スマートフォンも手に入ります。

『世界のニュースを日本人は何も知らない 激レア&ディープ情報版』

谷本真由美

2026/6/9

1,265円(税込)

192ページ

ISBN: 978-4847067242

元・国連専門機関職員の著者が忖度なしで書く
60万部突破の大人気シリーズ 特別版――

「世界はそんなことになってたのか!」

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●スウェーデンのヒットマンは小学生だらけ
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