《母子支援施設では風呂場までゴミが溢れ…》ライブ配信中に刺殺された佐藤愛里さん(22)、法廷で明かされた“複雑な生い立ち” 母親は高野健一被告に「厳罰を希望する」
東京都新宿区の路上で2025年3月、ライブ配信をしていた佐藤愛里さん(当時22)を刺殺したとして、殺人罪などで起訴されていた高野健一被告(44)。その裁判員裁判が東京地裁(井戸俊一裁判長)で7月1日より開かれている。
【写真を見る】体育座りをする学生時代の高野被告ほか、着物姿で記念撮影をする”最上あい”さんの私生活での素顔(友人提供)など
起訴状によると、犯行は3月11日の朝9時50分ごろ、JR高田馬場駅近くの路上で起きた。「最上あい」という名義でライブ配信中だったため凶行も配信され、大きな衝撃を与えたこの事件。公判では、2人の特殊な関係性や金銭トラブルが明らかにされた。
佐藤さんに250万円を超えるお金を貸していた高野被告。金銭苦に悩み、借金を返さないままライブ配信を続ける佐藤さんに恨みを募らせ犯行に及んだと見られる。法廷では佐藤さんの複雑な生い立ちも明らかにされた--。【全3回の第3回。第1回を読む】
母親の供述調書に「複雑な生い立ち」
ライブ配信中、佐藤さんはナイフで繰り返し刺され、命を落とした。
司法解剖した医師によると、死因は多発刺切創による出血性ショックだという。頭部、頸部などに最低55か所の傷があり、中には貫通している箇所もあったという。刺し傷は、頭部8か所、側頭部・顔面に7か所、頸部に8か所、他にも上半身に多数の傷があった。
7月1日の初公判では、佐藤さんの母親の供述調書が読み上げられた。検察側は検察官に対する母親の供述調書から、さらに弁護側は警察官に対する母親の供述調書から、佐藤さんの生い立ちを明かした。それぞれの内容には微妙に差異があったが、基本的に一致する点をまとめると次のようになる。
佐藤さんは内縁の夫との間に生まれ、2人の兄と1人の姉がいた。幼少期に実の父親が逮捕され刑務所に入ってしまったので、家庭環境は良くなかったという。
母親にはパニック障害があり、児童相談所から施設に入れることを提案され、4兄弟とも施設で育つことになった。佐藤さんは生後6か月で乳児院に入り、その後高校入学まで児童養護施設に入っていたという。
自身の経験から社会福祉士になりたいとして、福祉課のある高校に入学し、家庭にも戻った。しかし1年目の冬ごろには中退してしまう。その後親元を離れ、紹介で出会った男性と交際し、出産した。
しかし男性とはすぐに離れてしまう。佐藤さんは子供を置いて行方不明になることなどもあり、精神的に不安定だった。
2021年10月に母子支援施設に入る。この期間に配信を始めたと思われ、母親に食事をおごるなど羽振りの良い時期もあったが、2022年10月ごろ、子供を置いて行方不明に。子は乳児院に預けられ、親権は父親に移った。そしてそのころ、父親の職場や母子支援施設などに、佐藤さんにお金を貸したと名乗る人物から返金の督促があったという。
行方の分からない佐藤さんに代わって、母親は母子支援施設の部屋の引き渡しに訪れたが、電気、水道は止まっており、風呂場にまでゴミが溢れている異様な状況だった。
その後、配信をしている様子を見て、母親は娘が元気にしていることを知ったという。
「厳罰を希望している」
事件当日は、配信者の人が襲われたとニュースで見て、娘ではないかと不安になった。知らない電話番号から着信があり、出ると警察だった。第一声で「この度はご愁傷様です」と言われ、母親は頭が真っ白になったという。
遺体を確認すると、傷の部分は包帯が巻かれ、顔は痛々しく真っ青だった。なんでこんなことになったのかとショックで動けなかった。火葬の際には娘の体を抱いて、「もう痛くないね、ゆっくり休みなね」と声をかけた。
母親は、娘はなぜ死ななければいけなかったのかと何度も思ったという。佐藤さんが高野被告に250万〜260万円の返済の必要があったと聞き、その点は娘が悪いとは思った。
ただ、なぜ殺してしまったのか、他にいくらでも方法があったのではと思った。「母親は高野被告に厳罰を希望している」と、検察官から明かされた。
不安定な環境や金銭苦のなか、高野被告とも金銭トラブルが生じてしまっていた佐藤さん。高野被告は自らの言葉で、事件の経緯をどのように説明するのか。
(了。第1回から読む)
傍聴取材/普通(裁判ライター)
