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 スマートフォンやパソコンが当たり前になった今、私たちの脳は以前とは違う使われ方をしているという。検索すればすぐに答えが見つかり、予定や連絡先も機械が覚えてくれる便利な時代。その一方で、自分で考えたり、記憶をたどったりする機会は減っている。

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左右の脳の使われ方に偏りが

 脳内科医の加藤俊徳先生によると、人間の脳は部分ごとに役割が分かれているという。加藤先生は、それぞれの働きがわかるよう脳を“地図の番地”に見立て、8つの機能に分類。「脳番地」と呼んでいる。

「脳には、考える、感じる、話す、身体を動かす、理解する、聞く、見る、覚えるといった役割があります。脳はその人自身の生活習慣によって、よく使う部分と使わない部分に差が出てくるのです」(加藤先生、以下同)

 中でも現代人は、言葉や計算などを担う左脳ばかりを使いがちだという。一方で、視覚や理解、記憶などを司る右脳は、以前より働く機会が減っている。

「検索をすればすぐに答えが出る生活では、自分で考えたり、思い出したりする力を使わなくなります。その結果、右脳の機能が衰えやすくなります」

 こうした左右の脳のアンバランスな使われ方の状態を加藤先生は「脳のゆがみ」と表現。

「特定の脳番地ばかりを使い続けることで、使われない部分は急速に衰えます。左脳だけを酷使し、右脳を使わない生活が続くと、物忘れや集中力低下、言葉が出てこないといった不調にもつながりやすくなるのです」

 そこで具体例を加藤先生に挙げてもらった(下の図参照)。

 また、脳は同じ行動ばかりを繰り返していると使われる部分が固定されやすい。

「いつも同じ道を歩く、同じ店で買い物をする、スマホばかり見る─。そうした生活が続くと、脳への刺激が偏ってしまいます。脳は新しい刺激を受けることで活性化していくのです」

睡眠や食事の時間を一定に

 前述したように、右脳は普段の生活習慣からも影響を受けやすい。

「特に、脳を休ませるための睡眠は影響が大きいといえます」

 睡眠で大事なのは、寝る時間を一定に保つこと。寝る時間が不規則な人は、脳が衰えやすいという。

「私たちは目が疲れると、夜はかすんで見えにくいという不調のサインが出るので、目を休ませようと考えます。しかし、脳の疲労は自覚しづらいため、時間で区切りをつけて、意識的に休ませることが大切です。寝る時間を一定にして、十分な睡眠を取りましょう」

 忙しくて睡眠時間が4〜5時間の日が続けば、脳が衰えて日中の仕事や家事に支障が出る。同じ時間に寝るためには、食事の時間も一定にするのが望ましい。

「規則正しい生活リズムを崩さないことが、脳の衰えを防ぐことにつながります」

 さらに、日々鍛えることで脳の機能を元の状態に戻すことが可能だ。

「右脳を鍛える方法に『簡単右脳トレ』があります。次ページにある方法を習慣化すれば、脳を元気に保つことができます」

 簡単右脳トレ(次ページ)は、右脳の中でも衰えやすい視覚系、理解系、記憶系の3つを鍛えるトレーニング。続けていけば、年齢に関係なく脳に変化が起こり、70代であっても1か月ほどで効果が期待できる。

「これは、意識して異なる行動を取ることを促すトレーニングです。意識的に右脳に負荷をかけることで、活性化することができるのです」

 右脳が刺激を受けてよい方向に変化すると、トレーニングを行う前の状態には戻りにくくなる。

「何歳になっても脳の機能は高めることができますし、続ければ続けるほど、衰えにくい脳に変わっていきます。脳は100歳になっても成長できるので、ぜひ習慣づけてトレーニングしてほしいですね」

脳のゆがみで起こる症状

 思い当たる症状がある人は、脳の使い方に問題が。まずは自分の脳の状態を理解しよう。

□ 若い人と話ができなくなった
□ 立ち上がった瞬間に何をしようとしたのか忘れる
□ 会話中すぐに言葉が出てこない
□ 複数のことを並行してできない
□ 朝、新鮮な気持ちで起きられない
□ 怒りやすくなった

衰えがちな視覚系・理解系・記憶系を鍛える簡単右脳トレ

ポイント
・すべてを毎日やらなくてもOK!
・複数のトレーニングを組み合わせると、より効果的
・毎朝のルーティンに取り入れて継続することが大事

視覚系

 目で見て、情報を集める

部屋を片付ける

 日用品や衣類で散らかった部屋が目に入ると、その視覚情報によって落ち着きがなくなり、脳が疲れやすくなる。部屋の空間をきれいに保つよう意識することで右脳が鍛えられる。整った部屋を見ると気持ちの上でも安心感が得られる。

空を見て天気を判断

 天気予報をそのまま信じるのではなく、自分の目で空を見て天気を予測してみる。「遠くに雨雲があるから雨になりそう」など、自分で得た情報から天気を判断する習慣が、視覚の働きを活発にして右脳を鍛えることに。

移動中「かわいいもの」「きれいなもの」を探す

 スマートフォンやテレビの画面ばかり見ていると、眼球の動きが固定され、脳への刺激が単調に。外出時、ほかの人のアクセサリーや服の柄など「かわいいもの」や「きれいなもの」を意識して探すと、視覚が活性化。

理解系

 外部から入った情報を理解して使用

姿勢を正す

 自分が楽だと思う姿勢で立ってみると、真っすぐではなく、傾いていることに気づくはず。体幹の位置を確認して、正しい姿勢が取れているか、自分の身体を定期的にチェックすることで、理解系脳番地が鍛えられる。

予算を決め、実物を見て買い物する

 買い物をするときはネットショッピングではなく、事前に予算を決めて、直接お店に行くことが大切。売り場で商品を見比べて選び、「この数なら持ち帰れる」「予算内に収まった」と判断しながらの買い物が脳のトレーニングに。

右利きの人は左手で歯を磨く

 人の身体は左半身を右脳が、右半身を左脳が支配している。右利きの人が左手で歯を磨くと、普段使われにくい右脳を鍛えるトレーニングに。

記憶系

 覚えたり思い出したりすることに関係

「楽しかった日記」を書く

 日記に楽しかった出来事を書き出すことを習慣に。読み返すと楽しかった思い出がよみがえり、今の自分と比べることで刺激になる。過去を思い返すことは、記憶力の強化にもつながり、アルツハイマー型認知症の予防にも有効。

冷蔵庫の中身を記憶する

 買い置きしたものや作り置きしたものを傷まないうちに使い切ろうと意識することで記憶系脳番地が鍛えられる。冷凍食品は便利だが、記憶には残りにくいので、切る、焼くなど自分でひと手間かけた調理がおすすめ。

青春時代の音楽を定期的に聴く

 若いころに好きだった音楽を聴くと、その曲を一緒に聴いた友達や情景など、当時の記憶が呼び起こされる。記憶系脳番地が鍛えられると同時に、当時よく使っていた脳番地も活性化し一石二鳥。

教えてくれたのは…加藤俊徳先生 脳内科医。加藤プラチナクリニック院長。株式会社「脳の学校」代表。近著に『脳は右から若返る』(大和書房)がある。

取材・文/松澤ゆかり 脳番地イラスト/FUJIKO(大和書房『脳は右から若返る』より)※「脳番地」は脳の学校の登録商標です