アップルとグーグルの2強君臨、日本勢は屈辱の敗北…「国家対巨大IT」攻防始まる

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[検証デジタル ニッポンの苦境]スマホOS編<4>

恨み節

 「第3のスマホOS(基本ソフト)」を目指したタイゼンの国内販売中止は、日本のアプリ業界にも大きな波紋を広げた。

 NTTドコモは、アプリ事業者がタイゼンのアプリストアで支払う手数料を、「iモード」と同じ売り上げの9%に設定する予定だった。「アップル税」とも呼ばれるアップルの手数料は当時30%で、グーグルも同率。米2強より事業者の負担を少なくし、タイゼンに多くのアプリを呼び込む戦略だった。

 だが、タイゼン搭載スマホを発売できない事態となり、全て撤回せざるを得なくなった。「これからは売り上げの3割も手数料を取られる。ひどすぎる」。ドコモが開いたアプリ開発企業との会合では、経営者らから恨み節が相次いだ。

 ドコモ取締役の永田清人からタイゼン協会議長を引き継いだ杉村領一(元パナソニック携帯子会社幹部)は「何も言えず、黙って批判に耐えるしかなかった」と振り返る。

 杉村とともに「世界中の関係者に謝罪行脚した」というドコモ担当課長、的場直人は「(スマホOSは)世の中に三ついらなかったのかもしれない。椅子取りゲームには最初から二つしか椅子が用意されていなかった。そしてそこには2人すでに座っていた」と語る。

 iPhone(アイフォーン)とアンドロイド向けにアプリを作るので精いっぱい。三つ目のOSが出ても対応できる状況ではない――。アプリ事業者からはそんな声も聞かれた。

 「始める時よりも撤退する時の方が10倍、20倍難しい」。タイゼンの挫折は杉村にとって、今も苦い記憶として残る。

値引き合戦

 2013年からiPhoneの販売を始めたドコモも、その後はバラ色ではなかった。携帯大手がアップルに提示された「屈辱的な条件」(大手首脳)をのみ、3社がそろってiPhoneを扱う構図となったことで、「悲惨な安売り競争」(NTT関係者)が始まったからだ。

 「実質0円」での販売のほか、家族4人で契約を乗り換えれば「100万円を還元」するといった異常な「値引き合戦」が繰り広げられた。

 大手各社がiPhoneに依存する状況になったことで、携帯大手を頂点に端末メーカーが供給を支えるピラミッドは崩壊。代わりにアップルが君臨する新たなピラミッドが形成された。

 消費者の圧倒的な支持を背景に通信会社を屈服させたアップルと、OSを起点に支配力を強めたグーグル。2強の勢力拡大を前に、日本勢はなすすべがなかった。

「デジタル小作人」

 その後に待っていたのは「国家対巨大IT」の攻防だ。

 欧州連合(EU)や米国など世界各国・地域で、スマホOSを握った米2強の強大な力に対抗し、当局が独占禁止法や新たな規制法で抑え込もうとする動きが目立つようになる。

 日本で25年12月に全面施行されたスマホソフトウェア競争促進法(スマホ新法)もその一つだ。規制の対象になったのは、アップルとグーグルのOSやアプリストア。背景には、日本のアプリ事業者が「デジタル小作人」などと呼ばれる苦しい立場に追い込まれている実情があった。

 アプリ事業者の業界団体「モバイル・コンテンツ・フォーラム」専務理事の岸原孝昌は「アップル税」の弊害を訴え、「寡占で競争相手がいないから両社は高い手数料を維持できる。『第3のOS』があれば引き下げ圧力がかかり、状況は変わっていたかもしれない」と話す。

 巨大化したアップルとグーグルは政府相手にもひるむ気配はない。スマホ新法が全面施行されると、両社は新法の規定をかいくぐるようにアプリ事業者への新たな手数料を設定。新法を所管する公正取引委員会と水面下で攻防が続く。

 世界の人口の半分を超える約44億人が所有するとされるスマホ。巨大市場で米2強の支配が続く。かつて携帯電話で世界の注目を浴び、グーグルに助言を求められた日本の姿はもうない。(敬称略、肩書は当時)