<17文字を詠む若者たち>俳句を競技として青春かける高校生/デザイン学校に俳句が必要?
今、若い世代が「俳句」に挑戦しています。思わぬ分野で役立つ、言葉の力。そして、高校生が取り組む俳句競技とは?
【写真を見る】<17文字を詠む若者たち>俳句を競技として青春かける高校生/デザイン学校に俳句が必要?
”17音”に向き合う若者たちを追いました。
デザイン専門学校で「俳句」?
熊本市内のデザイン専門学校です。多彩な分野で未来のクリエイターを目指す若者たちが学んでいます。
この学校でユニークな取り組みが行われています。実は、年に2回、俳句大会を開催しているのです。
デザイン専門学校で、俳句?学生たちの最初の反応はどうだったのでしょうか?
学生「えっ、こんなことあるの?みたいな」
学生「息抜きであるのかなと思ってて」
学生「デザイン科に来て、語彙力求められるんだって」
「どう描くか」の前に「何を描くか」 デザイナーを支える言葉の力
俳句大会を発案したのは、校長の内藤謙一さんです。きっかけは、以前、広告会社で働いていた時に感じた「言葉の力」でした。
内藤 謙一 校長「広告会社でですね、コピーライターの『言葉』というのが、ものすごく実は大きな力を持っているということを知りまして。デザイナーは、まず手を動かす前に、どういうデザインをしたいのか言葉にすると。『どう描くか』ではなくて『何を描くか』を短い言葉でまとめると。俳句をやるということは、デザイナーにとって、自分のアイデアをまとめることにとても勉強になる」
5年前に始まった俳句大会は、今ではデザイン教育の1つとして定着しています。
”簡単で難しい”が面白い
大会の選考委員長を務める、俳人の西口裕美子さんに、俳句の魅力について尋ねました。
俳人 西口裕美子さん「自分の中にある言葉とか、世界に転がっている言葉を見つけてきて、17音にするというのは、簡単でもあり難しいんです。その『簡単で難しい』が面白いんだと」
学生の句① 祖母と過ごした夏の日々
グラフィックデザイン科の金尾さんは、初めて取り組んだ俳句で入賞を果たしました。
金尾日向さんの句
『向日葵や 線香薫る 祖母の服』
金尾日向さん「祖母のことが大好きで、祖母と過ごした夏の日々を思い出して書きました」
学生の句② 平和を願って…
同じ「向日葵」をテーマにしても表現は様々。それぞれの個性があらわれます。
高橋雅さんの句
『向日葵は 今も咲いてる 戦禍の地』
高橋雅さん「向日葵がウクライナの国花で、戦争とか紛争が無くなればいいなと思って書きました」
彼らが感じた、俳句とデザインのつながりとは――
高橋雅さん「アイデアの発想にもつながりますし、良いことしかないですね」
俳句とデザインの共通点
俳句大会には教員も参加します。言葉と向き合うことは、日々の指導にもつながっています。
堀川未樹先生「デザイナーとして、言葉で相手の頭の中に映像を浮かべられるように、というのを意識してやっているので、(俳句との)つながりはすごく感じていて、とても面白いですね」
俳人 西口裕美子さん「ものを見る捉え方とか、そぎ落とすとか、共通する部分は考えてみたらいっぱいあって、この取り組みは素晴らしいと思います」
俳句にかける青春 めざすは”俳句甲子園”
一方、俳句に青春をかける高校生たちもいます。熊本信愛女学院高校の「俳句同好会」です。
彼女たちが目指しているのが「俳句甲子園」です。毎年8月、愛媛県松山市で開催される全国高等学校俳句選手権大会は、5人1組のチーム戦で行われます。
事前に与えられたテーマで作った句を披露し、作品の完成度に加え、お互いの句を批評し合う「ディベート」で、解釈や鑑賞力を競います。
信愛の俳句同好会は、全国優勝経験もあります。
外に出て、風を感じて、五感で紡ぐ17音
大切にしている活動があります。それは、屋外を散策して俳句を創作する「吟行(ぎんこう)」。外に出て感じたことを言葉にしていきます。
生徒「やっぱり外に出てくると、忙しくて見えてこなかった世界が見えるので、それを詠めるのはいいかな」
吟行の成果は?
いい句は思いついた?
生徒『アクエリを 一気に飲んで 雲の峰』
「運動してる人がいて、アクエリアスをゴクって飲んだら、こう上を向くじゃないですか。そしたら、空に雲があるよっていう句です」
熊本信愛女学院高校 俳句同好会顧問 山口孝 教頭「やっぱりこう、風を感じたりとか、ものを見たりとか、頭の中で作っているものを何か見に行ったりして作った句の方が良かったなっていうのは多いので、外に出てることは大事にしています」
本番さながらのディベート
教室に戻り、俳句甲子園と同じ実践形式でディベートが始まります。
質問側「この『一粒ほどの』って、なんで『ほどの』にしたんですか?」
答弁側「自分にはこんなちっぽけな夢しかないけど、それでも私はやりたいんだというのを表現した」
言葉をめぐる、真剣勝負です。
攻守を交代して――
質問側「『小鳥』っていうよりは、なんか『蝶』とかの方が、もっと色とりどりなイメージがあって合ってると思うんですが、どうでしょうか?」
答弁側「『蝶』というのは春の季語なので、やっぱり『夏』を私は詠みたかったので『小鳥』にした」
全員が初心者 まずは楽しむことから
白熱したディベートを繰り広げる生徒たちですが、実は、全員がこの春から俳句を始めたばかりです。
生徒「俳句詠むだけじゃなくて、そのディベートもするっていうのが、俳句の解釈を深めていく感じで面白いなと思います」
生徒「意外と自由な解釈していいんだなって。見る人によって変わってくるのは面白い」
山口孝徳教頭「すごく(俳句を)好きになってくれているみたいで、頼もしいなと思っています。まずは楽しむことかなと思う。俳句を作ると、本当に外の景色だったり、何気なく通学路とかで見てるものとかもよく見るようになるので。どっちかっていうと、今の子たちって画面ばっかり見るようなのが多いと思うので」
感性を言葉にのせて
生徒「見てる景色を詠まなきゃいけないって思ってたんですけど、意外と自分のことも表していいんだって思って」
生徒「ちょっと楽しいことが増えたなっていう気持ちになります」
『梅雨の晴れ間 高校生の 声響く』
それぞれの感性を言葉にのせて、俳句甲子園出場を目指します。
