EBiDANはなぜ人々の心を掴んだのか? Webメディア「QuizKnock」の元編集者山森彩加氏と考える全力な人を応援したくなる心理
2025年末の『NHK紅白歌合戦』初出場から2026年の現在に至るまで、凄まじい勢いでファンを拡大し続けているEBiDANのメンバーたち。彼らが放つ、つい応援したくなるエネルギーの正体とは一体どこにあるのだろうか?
参考:超特急、結成時の夢“東京ドーム公演”を叶える強い想い デビュー14周年に振り返るこれまでの軌跡
QuizKnockの運営会社としても知られる株式会社batonでイベント企画などを担当する山森彩加氏は、自他共に認める熱心な“8号車”(超特急ファン)としてSNSに応援の様子を綴っている。なぜ、人々はEBiDANにハマるのかーー夢を掲げるアーティストを応援する楽しさを独自の目線で語ってもらった。(編集部)
EBiDANとの出会いは彼らの俳優業から――まずは山森さんが今batonにてどんなお仕事をしているのか教えてください。
山森彩加(以下、山森):元々はウェブメディアQuizKnockの編集部で編集者とライターを兼任していましたが、異動を経て今はシステム開発の部署にいます。クイズ大会の開催システムを開発する部署で、例えば先日の横浜スタジアムでの始球式にて行ったクイズ大会に使う、お客さんがQRコードを読み込んで4択クイズに挑戦できる「Quiz Pitcher(クイズピッチャー)」というシステムを作ったり、東京ドームシティで行った『トーキョーディスカバリーシティ!』のボイスラリーに使うシステムを作ったりする部署にいます。
私は実際にアプリやシステムを作るのではなく、どんな仕様、システムを作ればいいのかという要件を作ったり、会社で開発しているスタンプラリーシステムを使ったイベントの企画制作なども行なっています。
――ありがとうございます。山森さんはEBiDANをはじめ、さまざまなエンタメがお好きとのことですが、時系列で言うと最初にハマったアイドル、アーティストはどなたですか?
山森:ドハマりしていっぱいライブに行くという意味では、水樹奈々さんが最初でした。高校2年生から大学3年生までハマっていて。私は仙台出身なんですけど、ライブで初めて東京に来たのが高2のときの水樹奈々さんの東京ドームでしたね。大学3年生の頃からは欅坂46が好きになって、だんだん欅坂にのめり込んでいきました。
――EBiDANとの出会いはどのタイミングだったのでしょうか?
山森:超特急との出会いは結構最近なんですけど、EBiDANとの出会いからは結構長くて。もともとは特撮、特に“ニチアサ”が好きだったので、特撮に出ていらっしゃる方やその方と仲のいい俳優さんを事務所単位で推すことが多くて。『特命戦隊ゴーバスターズ』(テレビ朝日系)という作品があったんですけど、そこに森下トオルというキャラクターがいて、その役がすごく好きだったんです。その森下さんを演じていた高橋直人さんが、EBiDAN所属だったので、それをきっかけにEBiDANと出会いました。その頃のEBiDANは超特急やDISH//が結成した当時で、ブログとかでしか情報を得られなくて、のめり込むことはなく、さまざまなドラマを観る生活を送っていました。その中でEBiDANのメンバーが出演しているドラマを目にすることも多かったので、存在は認識していましたが。
――当時は、今のEBiDANは現在よりも“俳優集団”というようなイメージが強かった頃でしたね。
山森:元々は若手俳優を集めて舞台公演を打つみたいな組織だったんですよね。2012年頃はお芝居もやりつつ音楽もやるみたいな両立が始まった頃だったんじゃないかなと思います。
超特急から感じる「夢を一緒に応援する面白さ」――そこからアーティストとしてEBiDANに再会することになります。
山森:アーティストとしてEBiDANにハマったのが2021年で、北村匠海さんのファンの友達に、DISH//のライブに一緒に行かないかと誘われて、1曲も知らなかったんですけど行くことにしたんです。そこからDISH//の予習を始めたら1週間でハマって、1週間後にファンクラブに入っちゃって(笑)。その2021年って、ちょうどDISH//と超特急が結成10周年で、10周年記念ライブを超特急とDISH//のツーマンでやることになっていたんです。DISH//が好きだったから行くことにしたんですけど、そこで超特急の予習をしようと聴きまくったら超特急にもすぐハマっちゃって。すぐファンクラブに入って、そこからずっと超特急にハマってる状態ですね。
――どういったところが刺さったのだと思いますか?
山森:DISH//はもともとメンバーにバンド経験があったわけではなく、楽器を持って踊ってるっていうダンスロックバンドだったんですよね。でも本人たちがすごく勉強して練習して、今ではもう生演奏できるようになって。それこそ超特急も、ダンスの経験がほとんどない状態で超特急になったメンバーもいて、そこから続けるために練習して習得した人もいるんですよね。結成当初からできたわけではないけど、与えられたチャンスを逃さないために努力するっていうスタンスがEBiDANには結構あるのかなと思いますね。
――そのスタンスも含めて好きになったんでしょうか?
山森:私は夢がある人がすごく好きで。超特急とか特に、熱い気持ちがすごく伝わってくるんですよね。その熱さが自分のエネルギーになることがすごく多くて。一緒に夢を追いかけようという気持ちになるんです。
――EBiDANや超特急の特徴的だと感じた部分や、面白いと思ったことはありましたか?
山森:超特急って、同じ事務所のももいろクローバーZ(以下、ももクロ)の流れを受けているグループだと思うんですよ。超特急がデビューしたての頃、お客さんがまだ集まらない頃に路上ライブやイベントにももクロのファンが来てくれてたらしいですし、ファンのベースもももクロのファンが作ってくれたところがあるように感じていました。
ももクロは、当時から独自の存在感があったじゃないですか。全力で盛り上げてファンも全力で盛り上がるみたいな、体育会系っぽいというか。それに近い形で超特急のライブもめちゃめちゃ体育会系で、ファンもすっごい踊るんです。もう超特急と同じくらい踊ると言ってもいいほど(笑)。アイドルを見て応援するというよりかは、一緒にライブを作っていくのが特徴なのかなと思います。メンバーも、「8号車(超特急のファンの総称)もメンバーです」と言ってくださるし。自分たちも超特急の一員だから、このライブを楽しむために自分たちも最高のパフォーマンスをして最高の空間を作ろうみたいな、そういう雰囲気は他のグループにはあまりないのかなと思います。
――EBiDAN全体としてグループを超えて同じような空気を感じている人も多そうです。
山森:夢を大きい声で言うのはどのグループも一緒なのかなと思います。その中でも超特急とかM!LKは特に、ずっとここに立ちたいと言ってきたことを着実に叶えているフェーズで。後輩も同じようにパシフィコ横浜とか日本武道館、そのあとはアリーナに立ちたいっていうのをどんどん言って実現して、スケールアップしてまた言って、それを実現してみたいな感じで。夢を声に出すことでファンも一体となって、次はこれに向かって頑張ろうみたいになっていると思うんです。どこに向かって応援するべきなのかが分かるから、ファンとメンバーで足並みが揃ってるんですよね。グループ主体で発信してくれるからこそ、自分たちが目指すべき場所はどこなのかという共通認識が取れて足並みが揃っていくというのはEBiDANのどのグループにも言えることかなと思います。
前から続けていた“準備”が結実し現在へ――他にEBiDANのグループやファンについて、こういう面白さがあるなと分析していることはありますか?
EBiDAN「前略、道の上より」MV山森:ここ3年くらいで、グループ単体じゃなくてEBiDANが好きな人がすごく増えたなと思っていて。EBiDANは合同ライブである『EBiDAN THE LIVE』を毎年やっているんですけど、2023年からそれがガラッと変わったんです。23年に「ソイヤプロジェクト」という、一世風靡セピアのカバーをEBiDAN全体でやっていて。そのプロジェクトの一環で、ファン投票でユニットを作るみたいな企画があったんですよね。高身長ユニットとか目がいい人たちとか、兄弟ユニットとか西日本ユニットとか、韓国好きユニットとか。それまでの『EBiDAN THE LIVE』はそれぞれのグループのパフォーマンスの時間があって、その合間に例えばM!LKの楽曲をM!LK以外のグループのメンバーでパフォーマンスするみたいな時間が少しあったくらいだったんですけど、2023年以降はグループの垣根を越えたユニットを作ってパフォーマンスをする時間がかなり増えたんですよね。「EBiDANに所属しているグループの合同フェス」から、「EBiDANのライブ」みたいな印象に変わったんです。2024年にはEBiDANとしての冠番組が始まったりしたので、一つのグループを好きになった人が他のグループにアクセスするきっかけがすごく増えてたと思っていて。EBiDAN全体のファンになる流れみたいなのができたような感じがあります。
――世の中的にはここ1、2年のブームのような気がしますけど、実はその前くらいからEBiDAN全体として下地ができていたような気もします。
山森:そうなんですよね。ソイヤプロジェクトで音楽番組とかバラエティに出たり、レコード大賞の企画賞を取ったりして、EBiDANという肩書きでテレビに出ることが増えたんです。雑誌でもEBiDAN特集があったりして、EBiDANとしての露出がすごく増えていったことが今に繋がっていると思います。他にも、超特急のタクヤさん主演のドラマ主題歌がICExだったり、M!LKの山中さん主演のドラマ主題歌がSakurashimejiだったり、推しとは別のグループの楽曲でも、自然に耳に入ってくるような環境ができているんですよね。今M!LKとか超特急にアクセスした人が、簡単にEBiDANに行きやすい下地はもう出来上がってたことが、ちょうど今のM!LKの波と相性がすごく良くて。準備バッチリだったなと思います。
EBiDAN、夢に向かって全力な姿勢が人々を惹きつける?――EBiDANが持つ“全力さ”も人々を惹きつけているように感じます。なぜそこまで熱中できるのだと考えていますか?
山森:これは自分がそうというだけなんですけど、自分のためだけに頑張るのって結構難しいと思っていて。例えば一人暮らしの家の片付けをするのって、自分にしか関係ないからいくらでもサボれちゃうじゃないですか。自分の部屋が綺麗になって嬉しいのって自分だけだし。でも会社とか学校とかを綺麗にするのって、自分のためでもあるけどみんなのためでもある。みんなが嬉しくなることの方が、総合的な幸福度が高いなって私は思っちゃうんです。だから私、家めちゃめちゃ汚いんですよ(笑)。自分のためだけに頑張れないんですよ、私は。なんかいいなって思うアイテムがあったら、あの人に似合いそうだなとか、あの人にプレゼントしたらいいなとか思うんですけど、自分のために買うにはちょっと高いなとか思ったりする。そういう心理があると思っていて。
自分がライブに行ったりCDを買ったりするのにお金や時間を使うのって、自分一人のためだけじゃないんですよ。もちろん自分もすごく楽しいけど、そこに行くことによって推しが喜ぶっていう前提があるから、自分の満足のためだけにやってるんじゃないっていうことが行動のしやすさにつながるのかなと。
だからCDを買ったりするときも、「これは私のためのように思えて超特急のためのお金だし、私がコツコツ働いて稼いだお金が超特急の財産になる」とか思えるんですよね。自分のためだけにやるより、誰かのために行動する方が、人って動きやすいんじゃないかなって思うんですよね。もちろんそういう人が全てではないんですけど、割と大多数の人ってそうなんじゃないかなって思っていて。そういうところが夢を掲げている人を応援したくなる一つの理由かなとは思います。
――そういったファンとしての経験が仕事に活きることやモチベーションになることはありますか?
山森:自分は生産者の顔が見えるものが好きなんです。この人はこういう思いでこのイベントを作ってるんだなとか、盛り上げようと頑張ってるなとか、そういう作り手の熱い思いが伝わってくるものがすごく好きで。書店に丁寧に書かれたポップがあるとか。そういうのって、EBiDANが夢を大きい声で言うとか、MCでアツい思いをぶつけてくれるところに通ずるものがあるなと思うんです。私は自分がものを作る根底として、自分が作ったものに触れた人の視野が広がって、外を歩いているだけでも楽しく思えるような知識を身につけたりできればいいなと思っているんです。電柱一本見ても楽しいと思えるような人にみんながなれば、幸福度がめちゃくちゃ上がるんじゃないかなと。そういう思いを作り手がまっすぐ伝えてくれるものに人は惹かれやすいと思っているので、そういうものを自分が作ろうという意思はすごくあります。
――では、EBiDANの何が人々を引きつけていると思いますか?
山森:先ほども言ったように、全力なところが一つの理由だと思っていて。EBiDANメンバーって誰も「一人で売れよう」としていなくて、「自分が売れることでグループに還元しよう」とか「グループが売れることでEBiDANに還元しよう」「アイドル界、音楽界を盛り上げよう」「世界中を元気にしよう」みたいなスケールの大きい気持ちを持っているように感じていて。その思いがちょうどいま見つかり始めているんじゃないかなと思いますね。最近だと、私がEBiDAN好きっていうのを方々で言っているので、「最近M!LK興味あるんだよね」みたいなことを本当にいろんなところから言っていただくんです。何がきっかけなのかを聞くと、彼らが色々な番組に出ていたからという人ももちろんいるんですけど、年末『第76回NHK紅白歌合戦』(NHK総合)のあとに渋谷から赤坂まで走って『CDTV』(TBS系)に向かうとか、さらにその後『ニノなのに』(TBS系)で自転車で横浜まで初日の出を見に行くとか、そういうのを見て気になった人が多いみたいで。その全力さは各グループにあるなと思います。つい応援したくなっちゃうエネルギーを感じますね。
【祝】「NHK紅白歌合戦」M!LK初出場決定の瞬間! あとは夢を掲げているというのも大きいと思います。自分の力で推しの夢を叶えたいとか、推しにもっといい景色を見せてあげたいみたいな気持ちがある人って多いと思うんです。そこで、どこを目指せばいいのか、何を目標にして応援すればいいのかが分かるというのは応援する第一歩になりやすいんじゃないかなと思っていて。YouTubeで話題になっていた動画で、M!LKに『紅白』出場の発表をする瞬間の動画があるんですけど、そういう動画を見て「この人たちって本当に紅白出たかったんだ」とか、「こんなに頑張ってきて今やっと夢を叶えたんだ」というのがダイレクトに伝わると感動しちゃうし。そんな純粋な子たちを次はドームツアーに連れてってあげようみたいな気持ちになれるんじゃないかなと思っていますね。そういうのがどのグループにもあるんじゃないかと思います。(文=佐々木翠)

