見ず知らずの「前妻の子」に先祖代々の財産が渡る?婿養子を迎えた跡取り娘の不安…弁護士が教える防衛策は
先祖代々受け継いできた土地や財産が、見ず知らずの「前妻の子」に渡ってしまうのではないか──。
そんな不安を抱える女性から、弁護士ドットコムに相談が寄せられました。
相談者は家督を継ぐ立場にある「跡取り娘」。離婚歴のある男性を婿養子に迎えましたが、夫には前妻との間に子どもがおり、現在は前妻が引き取って育てているといいます。
夫は今も養育費を支払っていますが、相談者が気になっているのは、将来の相続です。
夫が亡くなった後、夫名義に変更した財産について、前妻の子が「法定相続分」を主張してくるのではないかと不安を感じているそうです。
資産家の家庭では「あるある」のお悩みなのかもしれません。相続問題に詳しい和氣良浩弁護士に聞きました。
●前妻の子の相続権はなくならない
──前妻との間の子どもが、女性の実家の財産について権利を主張することはできるのでしょうか。
まず前提として、夫が相談者の両親と養子縁組をしていたとしても、前妻との間の子どもとの親子関係や相続権はなくなりません。
そのため、夫が先に亡くなった場合、夫名義になっている財産については、前妻の子どもも相続人となります。
法律で定められた「法定相続分」や、最低限保障された権利である「遺留分」を完全になくすことはできず、前妻の子どもへの相続を完全に防ぐことは極めて困難だと考えられます。
●夫が先に亡くなった場合は?
──夫名義にしていない財産はどうなるのでしょうか。
ご両親が所有している土地や財産まで、前妻の子どもが「代襲相続」できるわけではありません。その点はご安心ください。
法律上、養子縁組より前に生まれた前妻の子どもは、ご両親(養親)との間に血族関係が生じません。
そのため、夫が先に亡くなったとしても、前妻の子どもが代襲相続人として実家の財産を相続する権利を主張することはできません。
●先に妻が亡くなった場合は?
━━逆に、相談者が先に亡くなった場合はどうなるのでしょうか。
この場合、実家の財産が最終的に前妻の子どもへ渡るリスクは高まります。
夫は「相談者の配偶者」であるだけでなく、「両親の養子」でもあります。そのため、相談者や両親の財産を相続する立場にあります。
その後に夫が亡くなれば、夫が相続した財産については、前妻の子どもが相続人となるため、結果として実家の財産が前妻の子どもへ転がり込む可能性があります。
●遺言書で防ぐことはできる?
──遺言書で「前妻の子には財産を渡さない」と決めておけば、防ぐことはできるのでしょうか。
現在の法律では、かつての家督相続のように特定の血筋だけで財産の承継先を固定することは困難であると考えられます。
遺言書で「前妻の子どもには財産を渡さない」と定めたとしても、前妻の子どもには最低限の取り分を請求できる「遺留分侵害額請求権」があります。
そのため、財産の流出を完全に防ぐことは難しいと考えられます。
また、生前に「相続しない」「遺留分を放棄する」といった合意を交わしていたとしても、法的に有効と認められない可能性が高いでしょう。
ただし、前妻の子ども本人に協力してもらえる関係性があれば、家庭裁判所の許可を受けて、前妻の子どもが遺留分を生前放棄することも可能です。
しかし、これは前妻の子ども本人が自ら家裁に申し立てる必要があり、今回のケースで活用できる場面は限られると考えられます。
●とりうる対策は?
──前妻の子どもへの財産流出リスクを抑える方法はあるのでしょうか。
実務上は、「完全に防ぐ」よりも「リスクや割合を抑える」という対策が現実的です。
たとえば、財産を承継させたい相手との間で養子縁組をおこない、法定相続人を増やすことで、前妻の子どもが持つ遺留分の割合を相対的に引き下げられる可能性があります。
また、安易に夫名義へ財産を変更せず、生前贈与などを計画的に活用しながら、財産の帰属をコントロールすることも有効な選択肢といえるでしょう。
前妻との間に子どもがいる相手との相続は、一般的なケースよりも複雑なリスクをはらんでいます。
先祖代々の資産を守りたいと考えるのであれば、できるだけ早い段階で弁護士などの専門家に相談し、具体的な相続対策を検討することをおすすめします。
【取材協力弁護士】
和氣 良浩(わけ・よしひろ)弁護士
平成18年大阪弁護士会登録 事務所代表弁護士 上場含む130社の顧問を務め、一貫して企業法務に注力。「全てはクライアントの利益のために」迅速な利益獲得を追求する。交通事故・労災事故等の賠償請求も多数扱う。
事務所名:弁護士法人ブライト
事務所URL:https://law-bright.com/
