糖尿病ってなに? 治療における「3つの柱」とは? ~専門医が教える最新研究【別冊NHKきょうの健康】
近年、高齢者の糖尿病が増加傾向にあります。また糖尿病の新しい治療薬が続々と登場するなど、自分に合った治療目標や取り組みやすい治療が提案されるようになってきています。
2026年6月17日に発売となった、糖尿病診断の流れから治療の最新情報まで満載の一冊『別冊NHKきょうの健康 糖尿病 あなたに合った治療法 食事・運動・薬の新常識』(監修:鈴木亮 東京医科大学主任教授)から、糖尿病の特徴と種類、糖尿病の原因についての解説を抜粋してご紹介します。
『別冊 NHKきょうの健康 糖尿病 あなたに合った治療法 食事・運動・薬の新常識』
糖尿病の「1型」「2型」って何のこと?
糖尿病は、大きく4つに分類されます 糖尿病は「1型」「2型」「その他の特定の機序、疾患によるもの」「妊娠糖尿病」の4つに分類されています。糖尿病の診断後に詳しい検査が行われ、判定されます。人数が最も多いのは2型です。
1型は、インスリンをつくる膵臓(すいぞう)のβ(ベータ)細胞が破壊され、インスリンをつくれなくなる状態で、その9割は免疫の異常が原因です。本来なら外敵から体を守る免疫の働きが、誤って自分のβ細胞を攻撃してしまうのです。2型は、インスリン分泌不全やインスリン抵抗性が関係して発症します。インスリン分泌不全が主体の患者さんも、インスリン抵抗性が主体となっている患者さんもいます。
1型か2型かの分類は、かつては「いつ、どのように発症したか」で判定していました。現在は血液検査が行われ、自分のβ細胞を攻撃対象と認識する「自己抗体」の有無などで判定しています。そのため、それまで2型と診断されていた人が、血液検査で実は1型だったとわかることがあります。
本書では、糖尿病診断の流れについても詳しく紹介しています
糖尿病になったのはよくない生活習慣のせい?
加齢や遺伝的要因も関係します「糖尿病」は、インスリンの働きが不足して血糖値の高い状態が続く病気です。食事によって血液中のブドウ糖が増えて血糖値が上がり始めると、膵臓から分泌されるホルモン「インスリン」の働きで、ブドウ糖が筋肉や肝臓に取り込まれ、血糖値は正常範囲内に抑えられます。ところが、インスリンの分泌が低下する「インスリン分泌不全」や、筋肉や肝臓での働きが悪くなる「インスリン抵抗性」があると、血糖値の高い状態が続きます。
食べ過ぎ、運動不足、肥満など、生活習慣の悪化が大きく関わっているのがインスリン抵抗性で、従来はこれらが2型糖尿病の原因として強調されてきました。しかし近年、加齢も深く関わっていることがわかってきました。インスリンの分泌能力は年齢とともに衰えるため、高齢になると糖尿病を発症しやすくなるのです。食べ過ぎや運動不足などの生活習慣が糖尿病の原因になることは明らかですが、特に高齢者では、“生活習慣のせい”とは言いきれないことが少なくありません。
糖尿病がある人は「分泌不全」と「抵抗性」のどちらの要素ももっており、割合は人それぞれです。肥満があって運動不足なら抵抗性が主体の可能性があります。やせた高齢者なら分泌不全も影響していると考えます。
血糖値が上がる仕組み
健康な場合、食事でとったブドウ糖が小腸から血液中に入り血糖値が上がると、膵臓からインスリンが分泌される。その働きで血液中のブドウ糖が筋肉や肝臓に取り込まれ、血糖値が低下する。
▼筋肉や肝臓でインスリンが効かない
十分な量のインスリンが分泌されていても、筋肉や肝臓に作用しにくい状態になっていると、ブドウ糖がそれらにうまく取り込まれず、血糖値を十分に下げることができない。
▼膵臓からインスリンが分泌されない
膵臓から分泌されるインスリンの量が不足していると、正常範囲内まで血糖値を下げることができず、血糖値の高い状態が続いてしまう。
インスリンの働きに影響を及ぼす主な要因 遺伝的要因
2型糖尿病のなりやすさを決める遺伝子が多数見つかっている。インスリン分泌低下などが生じやすい体質が遺伝することがある。
加齢
膵臓がインスリンを分泌する能力は加齢に伴って低下するため、高齢になるほど糖尿病の有病率は高くなる。
生活習慣
食べ過ぎ、運動不足、肥満による内臓脂肪の蓄積などにより、インスリン抵抗性が強くなり、糖尿病を発症しやすくなる。
その他の環境要因
膵臓の病気、ウイルスなどによる感染症、ステロイド薬などの薬剤が原因となって、糖尿病を発症することもある。
最近は糖尿病の治療の個別化が進み、治療目標も画一的ではありません。あなたに合った取り組みやすい治療で目標を達成しましょう。
・糖尿病治療の「3つの柱」
食事療法
摂取エネルギー量を制限して血糖値が上がり過ぎるのを防ぐ。厳しい制限などは不要で、自分に合った摂取エネルギー量を1日3食でバランスよくとるのが基本。
運動療法
血糖値だけでなく、高血圧や脂質異常症の改善にも役立つ。強度の高い運動でなくても、日常生活で体を動かせばエネルギーを消費できる。
薬物療法
薬を使って血糖値を下げる。近年、新しい作用をもつさまざまな薬が登場したことで、血糖値を改善しやすくなったほか、低血糖などのリスクも低下している。
本書『別冊 NHKきょうの健康 糖尿病 あなたに合った治療法 食事・運動・薬の新常識』では、食事療法、運動療法、薬物療法の治療の3つの柱の最新情報を詳しく解説・紹介しています。
【内容】
第1章 糖尿病Q&A 最新の研究から病気を知ろう
第2章 治療の柱1 食事療法 ──「制限する」だけではない
第3章 治療の柱2 運動療法 ──4種の運動を毎日楽しく
第4章 治療の柱3 薬物療法 ──従来の薬から最新の薬まで
第5章 合併症を防ぐために ──早い段階からコツコツと
東京医科大学 糖尿病・代謝・内分泌内科 主任教授
1996年東京大学医学部卒業。ハーバード大学ジョスリン糖尿病センターへの留学等を経て、2020 年に東京医科大学病院糖尿病・代謝・内分泌内科主任教授に就任。2024 年より同大学病院副院長を兼任。
◆『別冊 NHKきょうの健康 糖尿病 あなたに合った治療法 食事・運動・薬の新常識』より
◆監修 鈴木亮
◆イラスト まつむらあきひろ 中村知史
