SpaceX

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米国の宇宙企業スペースXの12日の米ナスダック市場での株式上場は、資金調達額が史上最高の750億ドル(約12兆円)だったことなどで大いに注目された。中国では、宇宙分野のスタートアップ企業が資金調達のために競って上場することを後押しするとの見方が出た。ただし、現状では中国の商業宇宙企業の売上高と技術にはスペースXと比較してまだ溝が存在する。また、中国特有の「産業構造」も関係してくるとみられる。ドイツメディアのドイチェ・ベレが伝えた。

ベンチャーキャピタル投資などを手掛ける上海領中資本の共同創業者である黄岩氏は、自らが行った、民間航空宇宙会社である藍箭航天(ランドスペース)への10年前の投資によりすでに100倍のリターンを獲得したと述べた。藍箭航天は現在、上場を準備しているという。黄氏は2016年の藍箭航天への投資について、宇宙関連工業での長期的な「技術競争力の強みと戦略的価値に賭けた」と説明した。

中国では現在、少なくとも7社のロケットおよび衛星企業がIPO関連計画を推進しており、その中には藍箭航天および中科宇航が含まれる。ただし詳細はまだはっきりしない。東呉証券は、中国の商業宇宙市場は2030年までに1兆元(約24兆円)を超えるとの予測を示した。

米国のワシントンに本部を置く、世界トップクラスのテクノロジー専門シンクタンクの情報技術イノベーション財団の政策アナリストであるエリス・シェラー氏は、スペースXの一挙手一投足はすべて、中国の宇宙工業にとって「風向計」の意義を持つと指摘した。

スペースXは回収可能なロケット、スターリンクのブロードバンドネットワークを所有しており、その他の野心的な計画としてデバイス直結リンク(衛星とスマートフォンなど地上のデバイスとの直接通信)や軌道上の人工知能(AI)インフラがある。ブースターの回収は衛星打ち上げコストの削減において非常に重要だが、中国の同業者はまだ回収可能ロケットの打ち上げに成功していない。

藍箭航天は中国の民間会社でスペースXに最も近い存在と見なされている。同社は25年12月、初めて朱雀3号ロケットを試験打ち上げしたが、ブースターは制御された着陸に失敗した。

売上高の面でも、中国の商業宇宙分野にはまだ、スペースXとの間に大きな距離がある。藍箭航天の25年上半期の売上高は3640万元(約8億6000万円)だったが、スペースXの売上高は同年通年で約190億ドル(約3兆円)で、しかも成長率は約30%だった。

宇宙衛星産業および航空分野に特化したコンサルティング会社として世界最大級のノバスペースのガブリエル・デビル氏は、中国の宇宙企業がブースター回収において突破口を開けば、スターリンクに似た中国の二大プロジェクト、すなわち国網星座(衛星互聯系列衛星)と千帆星座が直面する苦境が緩和するかもしれないと指摘した。

国網星座と千帆星座は計画推進母体や規模、主たる目的は異なるが、大量の衛星を軌道に乗せることで、地上での「いつ、いかなる時でも通信可能」を実現する点では同様だ。そして、利用に適した軌道の獲得は「早い者勝ち」の状況であるのに、どちらの計画も今のところ、使い捨てで高価なロケットを使って散発的に衛星を軌道に乗せることしかできていない。また、電波の周波数についても、衛星を先に軌道に乗せて実績を作った国や企業が優先的に使えることになっている。つまり、事業推進が遅延したので、将来に大きな障害が発生する可能性が高い。

氏名の公表を望まないある中国の宇宙企業の幹部は、最も楽観的な見積もりでは、中国は33年ごろにスターリンクの現在の規模に達するだろうと述べた。ただしこの幹部は、もしスペースXが次世代の大型ロケットであるスターシップの配備に成功すれば、中国の競争相手との間に開いた格差は「指数関数的」に拡大するだろうと指摘した。スターシップの一度の打ち上げで軌道に乗せられる衛星の数は、現在のファルコン9号の3倍に達することで、打ち上げ効率が飛躍的に向上するからだ。

また、米国と中国の宇宙産業の在り方も、関連分野における両国の今後を大きく左右するはずだ。スペースXの場合には、市場の状況などに応じてスターリンクを構築していくことができ、その際にはロケットによる打ち上げ能力との兼ね合いも加味して事業全体の進め方を「最適化」することができる。

中国の場合、ロケット開発を行う企業は政策主導の衛星網構築を自らコントロールできない。政府系の買い手から下りてくる注文を待つ受動的な立場にあり、打ち上げのタイミングを自らの意志で「最適化」する主体が民間宇宙分野には存在しない状況だ。

ノバスペースのデビル氏は、スペースXにとって、収益創出の源泉を打ち上げサービスから衛星ブロードバンドサービスへと転換させたことは、極めて重要な措置だったと指摘した。スペースXの25年の売上高の約6割は、スターリンクによりもたらされたものだ。事業形態が「垂直型」だったからこそ可能な措置だった。

中国では、宇宙産業の国内需要は非常に大きいが、国有企業が主導的な地位を握っていることが、民間の宇宙企業の発展を制限する可能性がある。

中国では改革開放の開始以来、さまざまな事業分野について、民間企業、さらには外資企業への門戸開放を続けてきた。しかし現在でも、民間企業の参入が事実上不可能な分野も多く残る。中国の宇宙産業の動向分析に特化した、米国の独立系コンサルティング会社のオービタル・ゲートウェイの創業者であるブレイン・カーシオ氏は中国の状況を「もしあなたが中国で電気通信業務に従事したいなら、中国には民間の電気通信会社がないことを知らなければならない」と説明した。(翻訳・編集/如月隼人)