宇都宮市に出没したクマを捕獲した宇都宮動物園の飼育課長・磯哲雄さん(64)(左・AFP=時事)

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 6月9日午後、数日間にわたり栃木県宇都宮市の市街地を徘徊していた「クマ騒動」がついに決着。麻酔銃の引き金を引いた磯哲雄さん(64)は、宇都宮動物園の飼育課長で、同日午後2時頃に出勤要請を受けたという。

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 わずか1.8メートルのフェンス越しに熊と相対した瞬間について、「最悪の事態も頭をよぎりました」と回想する磯さんだが、3発目が見事に命中し、捕獲に成功した。彼が騒動を振り返り、いま熊に抱く感情とは。【前後編の後編。前編から読む】

 命中を確認した磯さんは、銃を車へ片付けに戻った。2〜3分後に戻ると、警察官から「熊は寝ているようだ」と知らされた。しかし、ここで気を抜くわけにはいかない。"大事な作業"が待っているからだ。

「麻酔が効いたかの確認作業は、必ず麻酔銃を担当した本人が行う。これは私の中の絶対のルールです。もし途中で起きてしまったら大惨事になりますから。

 盾を持った警察官に同行してもらい近づくと、熊は撃たれた場所から2メートルほど動いて倒れていました」(磯さん、以下同)

 盾の隙間から棒でつつき、反応がないことを確認した後、さらに熊の体を手でつかんで仰向けにひっくり返し、麻酔銃が命中した腹部と睡眠状態を入念にチェックした。その後はようやく搬出作業だが、ここでも苦労があった。

「すぐに猟友会の方々が駆けつけてくれて、私を含めた4人で持ち上げようとしたんですが、重くて全然持ち上がらないんです。熊の体は柔らかいうえに体毛も短く、手も大きくて非常に持ちづらい。

 結局、カゴの場所まで引きずっていき、最後は猟友会の方が5人がかりで『1、2、3』でようやく持ち上げました」

 普段はゾウやキリンなどを担当し、様々な動物の重量を体感している磯さんは、「体重100キロくらいはあったと思う」と推察した。
 捕獲後の熊の処遇は猟友会に引き継がれたが、市街地を大混乱に陥れたこの騒動を振り返り、磯さんは厳かな口調で、「不謹慎かもしれませんが……」と胸の内を吐露する。

「6日から9日までの間、あれだけの距離を走り回りながらも、ただの1人も人を襲うことがなかったこの熊に対して、私はある種の『尊敬』の念を抱いています。

 また、今回は同行した獣医の麻酔の調合が本当に素晴らしかった。普段なら眠るまでに5〜10分はかかるところを、今回は5分以内で熊が眠りについてくれました。無事に捕獲できたのは、何より獣医のおかげです」

 宇都宮を震撼させた熊騒動は、動物に敬意を持って向き合い続けるプロフェッショナルたちの連携によって最悪の事態を免れ、幕を下ろした。

(了。前編から読む)