コーチ 、Z世代が新規顧客の3分の2に 「手頃さ×体験」で100億ドルブランドを狙う

記事のポイント
コーチはZ世代との関係強化を軸に、手頃な価格帯や体験型施策で若年層を獲得している。
人気バッグやコラボ施策により、Z世代顧客の維持率が向上し、将来の高額消費層を育成している。
店舗体験やスポーツ提携を拡大しつつ、新興プラットフォーム活用でブランドの持続的成長を図っている。
コーチはZ世代との関係強化を軸に、手頃な価格帯や体験型施策で若年層を獲得している。
人気バッグやコラボ施策により、Z世代顧客の維持率が向上し、将来の高額消費層を育成している。
店舗体験やスポーツ提携を拡大しつつ、新興プラットフォーム活用でブランドの持続的成長を図っている。
コーチ(Coach)は、「100億ドル(約1兆5000億円)のブランド」への成長をめざしており、その実現の鍵をZ世代との関係に見いだしている。
Z世代を中心に成長加速
5月、コーチは、北米における新規顧客の3分の2がZ世代とミレニアル世代であることを明らかにした。さらに9月、CEOのトッド・カーン氏は、過去1年間で北米におけるZ世代顧客維持率がほかの世代よりも150ベーシスポイント以上高かったと述べた。とはいえ、北米での市場浸透率はわずか4%であり、成長の余地は大きい。
Modern Retailの取材に対し、コーチの幹部たちは、Z世代の関心や購買習慣の変化に合わせてブランドを進化させ続けることが重要だと語った。たとえば、大学入学や初就職といった新たなライフステージに寄り添う製品づくり、実店舗への投資、カスタマイズ体験の強化、さらには新たなマーケティングプラットフォームの活用などである。
「毎年400万人の18歳が市場に参入している。Z世代のポテンシャルは計り知れない」と、コーチ北米のマーケティング担当副社長キンバリー・ウォーレングレン氏は語る。「我々はブランドの目的やストーリーテリングを人々に届け、スタイルや自信を後押しし、彼らがバッグを購入する時に我々を思い出してもらえるようにしている」。
コーチがZ世代のあいだで存在感を維持している理由のひとつは、製品ラインナップにある。たとえば、「テリ(Teri)」「タビー(Tabby)」「ブルックリン(Brooklyn)」といったバッグ(価格はそれぞれ90ドル[約1万3500円]、195ドル[約2万9250円]、225ドル[約3万3750円]から)は若い購買層に人気で、SNS上で頻繁に取り上げられている。さらに、Z世代がまだ資産形成の途上にある点を踏まえ、手頃な価格設定も好評を得ている。「150〜300ドル(約2万2500〜4万5000円)の価格帯がZ世代にとってもっとも響くスイートスポットだと我々はわかっている」とマンハイム氏は述べる。
グローバルデータ・リテールのマネージングディレクターであるニール・ソーンダース氏も、コーチが「非常にバランスの取れた価格構造」を維持することが重要だと指摘する。たとえばバッグチャームは55ドル(約8250円)から販売されており、この「入り口となる価格帯」が将来の高額消費層を取り込む上で重要だという。「Z世代は将来、もっとも消費力の高い層になる。彼らの関心を今のうちに獲得するのは賢明だ」とソーンダース氏は語った。
体験型店舗と戦略的コラボでZ世代を囲い込む
コーチはまた、Z世代を惹きつけるために店舗体験への投資も進めている。昨年初めには初のコーヒーショップをオープンし、今後さらに数十店舗を展開予定だ。また、2023年に導入した「Coach Play」コンセプトでは、DJセットやアイスクリームコーナーなどの体験を通じて若年層の来店を促している。「Z世代はオンラインでしか買い物をしないという仮説があったが、それは事実ではない。彼らは実際に店舗に足を運んでいる」とマンハイム氏は話す。
マーケティング面でも、コーチは戦略的なパートナーシップを積極的に展開している。たとえばAmazonプライムビデオのドラマ『The Summer I Turned Pretty(私たちの青い夏)』との提携だ。コーチの製品は同番組のシーズン3に取り入れられ、Amazon上で購入できる仕組みを導入した。主演女優のローラ・タンは、コーチのサステナブルファッションプロジェクト「コーチトピア(Coachtopia)」のメインモデルでもある。
また、4月には、コーチがWNBAの初の公式ハンドバッグパートナーとなり、5人の新人選手との契約や「WNBAプライド」支援を行った。この複数年契約はすでにブランド認知の向上につながっており、「2026年シーズンにはさらに強化して臨む予定だ」とウォーレングレン氏は述べた。
さらに今後、コーチはスポーツ分野で大学アスリートとのNIL契約(名前・イメージ・肖像権契約)を開始する計画もあるという。SNS戦略においても、TikTokやメタ(Meta)以外のプラットフォーム開拓を検討している。「ピンタレスト(Pinterest)はZ世代ユーザーが多いプラットフォームで、ぜひ取り組んでみたい」とウォーレングレン氏は語る。また、サブスタック(Substack)についても「大きな可能性がある」とし、「まだ最適な入り口を見つけていないが、見つけ次第、すぐに参入すると思う」と付け加えた。
もっとも、ラグジュアリーマーケット全体は現在、関税や消費者心理の変化など、マクロ経済的な逆風に直面しており、コーチが好調を維持するのは厳しい時期だ。ベイン・アンド・カンパニーは6月の報告で、「ラグジュアリー市場が過去15年間で最大の停滞期に直面している」と指摘した。さらに、昨年タペストリーは約85億ドル(約1兆2750億円)規模とされるカプリ・ホールディングス(Capri Holdings)との合併計画を撤回している。
ザ・コンシューマー・コレクティブ(The Consumer Collective)の共同創業者でマネージングディレクターのジェシカ・ラミレス氏は、コーチがこの難局を乗り越えられると見ている。「コーチの製品は素晴らしく、消費者理解にも長けている」と彼女は語る。「ただし、ブランドを将来にわたって強固に保つ努力を続けなければならない。停滞した瞬間に、ビジネスは下降し始めるからだ」。
[原文:Brands Briefing: How Coach plans to keep its hold on Gen Z]
Julia Waldow(翻訳・編集:坂本凪沙)
