「私はとても悲しく感じました…」コミュ力の高い人が言いにくいことを伝えるときに使う鉄板フレーズ
※本稿は、大嶋祥誉『マッキンゼーで学んだ最高に効率のいい働き方』(青春出版社)の一部を再編集したものです。

■コミュニケーションの基本は「相手を受け入れること」
上手に感情をコントロールすることができる人は、上手に他者とコミュニケーションができる人です。他者とのコミュニケーションがうまくいかなければ、ストレスになり、感情が乱れがちになります。
一方、コミュニケーション力が高く、多くの人と良好な関係を築ける人は、当然ストレスが少なく、感情も安定しやすくなります。
まず、コミュニケーションの基本は、相手を受け入れるということです。その際に勘違いしがちなのが、正しい結論を導くのがコミュニケーションだと思ってしまうこと。
【Aさん】「嫌な上司がいてね。昨日も細かいことをグダグダ注意するのよ」
【B君】「注意してくれる上司こそ自分のためになるはずだよ。細かいことが大切かもしれないし」
【Aさん】「それはそうかもしれないけど……」
【B君】「自分から改めなければ、いい関係は築けないよ」
B君が言っていることは正論ですが、正論を語り、解決策を探ることがコミュニケーションとは限りません。AさんはたんにB君に自分の気持ちに、共感してほしいと思っているだけかもしれません。
早急に結論を出す目的の会議などは別にして、日常会話であってもビジネス会話であっても、解決策を求めているより、まずは話を聞いてほしいという場合が、圧倒的に多いと思います。「それは大変だね」とか、「気持ちはよく分かるよ」と、まず相手に共感を示し、受け入れる。
人間は誰しも承認欲求があります。コミュニケーションの基本は、相手の承認欲求を満たすこと。正論や解決策を主張するのではなく、相手に共感することです。
ただし、これがなかなか難しい。真面目な人ほど、つい正論を語ってしまいがちです。また、何とか解決策を提示しなければ、と思い込んでしまう。悪気はないのですが、つい先走ってしまうのです。
もう1つ、相手より自分が上であることを示したい、という意識の強い人がやりがちなのが「マウンティング」です。相手を支配下に置きたいという潜在的な意識がある人は、相手を否定することで自分が優位に立とうとするのです。
自分が否定されることを望む人などいないでしょう。相手がマウントしてくるのを、「はい、そうですか」と受け入れる人もいないはずです。
たいていの場合は「そんなこと言われても」「そういうあなたこそ……」と反発されます。良いコミュニケーションも人間関係もつくることが難しくなります。
■傾聴のコツは「相手をジャッジメントしない」
相手に共感し、承認欲求を満たすために重要なのが「傾聴」です。相手の言葉をしっかり聞くこと。「なるほど、それで?」「で、どうなったの?」と、相手がどんどん話すように、促すことが大切です。
頭ごなしに否定するのはもちろんNGですが、あたかも評論家のように、相手をジャッジするのもNGです。話し始めた途端に「それは間違っている」とか、「それはこうすべき」などとジャッジされたら、相手はそれ以上話す気がしなくなります。

「相手をジャッジメントしない」というのが傾聴のための必須条件です。判断しない、ニュートラルな状態で相手の話を聞く。「この人はジャッジしない」と分かると、人は安心して話をすることができます。そして聞いてくれる人を信頼し、好感を持つでしょう。
相手の気持ちや行動は、つねに自分の気持ちや、行動の反映だと思って間違いありません。しっかり相手の気持ちを聞けば、今度は相手が自分を受け入れてくれるものです。そして、こちらの話を、相手が傾聴してくれるでしょう。
それだけではありません。傾聴で相手の話を聞いているうちに、相手の価値観や思考パターンが見えてきます。バイアスやビリーフシステムなども、分かるようになる。どういう言葉を相手が嫌がるか、逆にどういう言葉がけをすると喜ぶかも、分かるようになります。
傾聴によって相手は信頼感を持ち、心を開いてくれる。それによって相手もこちらの話を聞いてくれる。さらに価値観や思考パターンを知ることで、相手の嫌がる言動を避け、喜ぶ言動を取ることができるようになる――。
傾聴とは一見地味で受け身な行為に思えますが、それによって得られるものはとても大きいのです。
■「受容」することで相手の自己肯定感は高まる
傾聴し、共感することで、相手の承認欲求を満たす。同時に、相手の価値観を知り、それを「受容」することで、関係はさらに深く、強くなります。相手の価値観を認め、受け入れる。
「傾聴」と「共感」が相手の「自己承認欲求」を満たすなら、「受容」は相手の「自己肯定感」を高めます。
相手にとって、その人自身の価値観を認め、受け入れてくれるということは、その人の存在そのものを受け入れてくれている、という絶対的な安心感と信頼感につながっていきます。
同時に、それは相手の自己受容感、自己肯定感を高める作用もあるのです。
じつは相手を受け入れ、相手の自己肯定感を高めることができる人は、自らも自己肯定感が高い人だということが分かっています。ありのままの自分を受け入れることができるからこそ、他者も受け入れることができる。
逆に自己肯定感が低く、自分を受け入れることができていない人は、他者を受け入れることも難しい。
自分の中で許せない部分があると、それを他者に投影して攻撃したり、相手より優位に立とうという心理からマウンティングしようとしたり……。相手を否定しようとする力が働いてしまうのです。
結局、コミュニケーションや対人関係の根本にも、この自己肯定感の有無が関わっているのです。
■人間関係の質が感情の安定につながる
では、自己肯定感が低い人は、良い関係を築くことができないのでしょうか? そんなことはありません。とにかく相手の話を傾聴し、相手の気持ちに共感してみましょう。
まず相手を知り、理解しようとすること。相手はあなたに好感を持ってくれるはずです。その上で、相手に対して肯定メッセージを投げかけるようにしましょう。
「それはいいね」「よく分かりますよ」「面白いですね」「楽しそうですね」「きっと成功するよ」……。
その際、ちょっとしたコツがあります。マイナスの言葉を避けるために、「ダ行言葉」を使わないようにするのです。
「だって……」「だけど……」「だから……」「でも……」「どうせ……」といったダ行で始まる接続詞は否定的な言葉が後に続きます。
ダ行ではありませんが、「しかし」「それはそうだけど」「そうは言うけど」といった否定的な接続フレーズも同じです。これらの言葉を意識して使わないようにすれば、必然的に否定的な言葉が出なくなります。
「ありがとう」という感謝の言葉を使うのも効果的です。関西では「ありがとう」を比較的たくさん使います。関東では「すみません」が多いように感じます。意識して「ありがとう」「ありがとうございます」を使うように心がける。
相手に対して感謝する。感謝の気持ちを表すということは、コミュニケーションを円滑にするために大変有効です。
コミュニケーションが良くなれば当然、人間関係の質を高めることができます。
関係の質が高まればお互い信頼し合い、安心できる関係を築くことができる。必然的に、感情も安定した状態を保つことができるのです。
■「YOUメッセージ」から「Iメッセージ」へ
会話の中では、時に相手に対してネガティブなことも、伝えなければならない場合があります。このとき不用意な言葉を使うと、関係は一気に険悪になってしまいます。逆に、言い回し1つで、上手に自分の気持ちを伝えることができます。
そこで役に立つのが「Iメッセージ」です。コミュニケーションが上手な人は「Iメッセージ」を多用します。逆に下手な人は「Youメッセージ」を使うことが多いのです。
たとえば、相手からキツい言葉を投げかけられたとき、「なんでそんなひどいことを言うのですか!」と相手を責めるのが「Youメッセージ」です。
責められたほうは「それはキミが約束を守らないからだ!」と、同じく「Youメッセージ」で返してくるでしょう。相手を主語にして相手のことを責めたり非難するのです。こうなるともはやケンカ腰で決定的な対立関係になってしまいます。
これを「Iメッセージ」に変えてみるとこうなります。
「そういうことを言われて、私はとても悲しく感じました」「私はとても傷つきました」……。主語を自分に変えて、自分がどう感じたか、どんな状況になったかを伝えるのです。

相手を直接非難したり責めるのではなく、自分の気持ちを伝えることで相手に理解してもらうように促すのです。
「ちょっと私はショックを受けました」
「かなり落ち込みました」
「とても寂しい気持ちになりました」
……etc.
などと「Iメッセージ」で言われれば、相手も「そうか、自分の言動でこんなふうに感じさせてしまったのか……」と冷静に反省することができます。
「Youメッセージ」は無意識に、悪いのはあなたであり、あなたが変わるべきだと伝えているのです。
ただし、そう言われて素直に自分を変える人は少ないでしょう。むしろ反発し、頑なに拒絶反応を起こすのが関の山です。
それに対して「Iメッセージ」は、相手を変えようという意図は伝わりません。抵抗感なく、こちらの言葉を受け取ってもらうことができます。相手は素直に自分の行動を反省し、変わる可能性があるのです。
■「先取り言葉」は相手を冷静にさせる効果
「Iメッセージ」以外にも、上手に自分の意思を伝える便利な言い回しがいくつかあります。私がよく使うのは「○○さんはそんなつもりではないと思いますが……」という言い回しです。

私もマウンティングしてくる上司に対しても使った記憶があります。
「○○さんはそんなつもりは全然ないと思いますが、さっきの言葉はなんだか責められているようで、正直ちょっと怖かったです」
相手が自分を責めてきたと感じたときに、この言い回しを使うのです。すると相手は「いや、そんなつもりではないんだけどね……」と少し冷静に自分を振り返るようになります。
ちょっと冗談ぽく言えるようになると、むしろ上司も「それは悪かった」と笑いながら返してきて、場が和んだりしました。
同じような便利な言い回しがいくつかあります。
「こちらの勘違いだったらごめんなさい。私はこう受け取ったのですが……」
「こう言うとまた怒られるかもしれないのですが……」
「おかしな人間だと思われるかもしれませんが……」
このような表現は、相手の気持ちを先回りして言うことで、相手を冷静にさせる効果があります。いきなり自分の考えを言う前に、相手の気持ちを先取りする。「先取り言葉」はかなり効果的です。
気をつけなければいけないのは、あまり作為的になりすぎないこと。たとえば「ここだけの話だけれど……」「あなたを信用しているから話すのだけど……」というようなフレーズがあります。
本当に率直な気持ちから出た言葉であればよいのですが、相手を操作しようという意図が前面に出てしまう人がいます。そういう人は逆に「あやしいな」「何かありそうだな」と警戒心を抱かれてしまうので逆効果です。
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大嶋 祥誉(おおしま・さちよ)
センジュヒューマンデザインワークス代表取締役、エグゼクティブコーチ、人材戦略コンサルタント
米国デューク大学Fuqua School of Business MBA取得。シカゴ大学大学院修了(MA)。マッキンゼー・アンド・カンパニー、ワトソンワイアットなどの外資系コンサルティング会社や日系シンクタンクなどで経営、人材戦略へのコンサルティングに携わる。2002年に独立し、現在までに2000チーム以上のチームビルディング、組織変革コンサルティング、経営者や役員へのエグゼクティブコーチングを行う。
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(センジュヒューマンデザインワークス代表取締役、エグゼクティブコーチ、人材戦略コンサルタント 大嶋 祥誉)
