フランス政府がECサイト最大手のAmazonとの競争に苦戦している独立系書店を支援するべく、35ユーロ(約4900円)未満のオンライン上での書籍注文に対して、最低3ユーロ(約420円)の配送料を課すことを計画しています。

France sets delivery fee for online book sales to help stores compete with Amazon | Reuters

https://www.reuters.com/markets/europe/france-impose-minimum-delivery-fee-three-euros-online-book-orders-2022-09-23/

France sets €3 book-delivery fees in jab at Amazon - POLITICO

https://www.politico.eu/article/france-sets-e3-book-delivery-fees-in-jab-at-amazon/

France announces minimum €3 book delivery fee to help booksellers compete with Amazon - The Verge

https://www.theverge.com/2022/9/23/23368219/france-minimum-book-delivery-fee-booksellers-amazon-competition

French Law to Help Small Bookshops Rival Amazon

https://www.pymnts.com/news/retail/2022/french-law-give-small-bookshops-edge-against-amazon/

2014年に施行された法律により、フランスではすでに書籍の無料配送が禁止されています。しかし、Amazonやフナックといった大手ECサイトは、配送ごとに1セント(約1.4円)という無料に近い配送料を課すことで、無料配送を禁止する法律を回避しています。しかし、街の書店などではこのような実質無料の配送料を設定することはできず、最大7ユーロ(約970円)ほどの配送料を請求しているそうです。

オンライン書店の送料無料を禁止して街の本屋を守る通称「反Amazon法」ついに可決 - GIGAZINE



2021年12月にはこの最低配送料を1セントとする大手ECサイトに対処するための法律として、最低配送料を指定する法律が可決されました。しかし、最低配送料をいくらにするかが決まっていないため、法律は発効されていないままです。フランスの文化省および財務省はこの法律について、「注文の規模に関係なく書籍を実質無料で配送する大規模な電子商取引プラットフォームと、配送料を無料に近い価格に設定できない書店との間の均衡を回復させることが可能となり、これにより書籍業界をデジタル時代に適応させることが可能となります」と共同声明で述べています。

「本の最低配送料」を定めて実店舗の書店がAmazonと競争するのを助ける法律が可決される - GIGAZINE



フランス文化省および財務省によると、政府がオンライン書籍注文における最低配送料を指定する法律の詳細な計画を欧州委員会に通知したのち、EUが法律を承認。その後、6カ月が経過した時点で最低配送料に関する法律が有効になるそうです。

なお、フランス文化省は最低配送料を税込3ユーロに指定するとしており、この最低配送料は「顧客が利用可能なロイヤリティプログラムや、書籍と他の商品を合わせて購入することでも回避できない」とのこと。加えて、35ユーロ以上の注文に関しては、引き続き1セントの配送料を提案できるようになります。文化省は最低配送料について、「3ユーロの配送料は、本の購入者を思いとどまらせるものではありません。そして35ユーロの敷居は、環境面に優しいまとめ買いを加速させるでしょう」と述べています。

フランスでは新刊の値下げを禁止する法律が1981年に施行されており、この法律のおかげでAmazonなどのECサイトの台頭後も、街の書店は生き延びることができたとBloombergは指摘。しかし、Amazonは書籍の販売価格だけでなく配送料を引き下げることで、依然として書籍市場をゆがめてきたと指摘されています。

フランスの書店協会であるSLFは、2022年9月23日(金)に声明を出し、「3ユーロの配送料では不十分である」と言及。さらにSLFはフランス政府に対し、「書店が本を配送する際にフランスの郵便局から請求される手数料の引き下げ」を求めています。

なお、フランスでは2019年に4億3500万冊の書籍が販売され、そのうち20%以上がオンライン経由で販売されたものです。フランスには3300件もの独立系書店が存在しますが、市場シェアはAmazonやフナックといったオンライン小売業者との競争で徐々に低下しています。