カンボジアの民主主義はどこへ(写真:Photo by Satoshi Takahashi/LightRocket via Getty Images)

さまざまな社会問題と向き合うNPOやNGOなど、公益事業者の現場に焦点を当てた専門メディア「GARDEN」と「東洋経済オンライン」がコラボ。日々のニュースに埋もれてしまいがちな国内外の多様な問題を掘り起こし、草の根的に支援策を実行し続ける公益事業者たちの活動から、社会を前進させるアイデアを探っていく。


本記事はGARDEN Journalism(運営会社:株式会社GARDEN)の提供記事です

最大野党が解党させられたり、政府に批判的な報道を行ってきた主要新聞やラジオ局が閉鎖に追い込まれたりと、民主主義や基本的人権が危機にさらされているカンボジア。今年、総選挙が行われ、野党不在の中、フン・セン政権はより強固な政権基盤を築くことに成功しました。果たしてこの状況を民主主義ということができるのか。

GARDENでは現地で15年以上にわたって取材を続けてきたフォトジャーナリストの高橋智史さんのへのインタビューを続けてきました。GARDEN代表で、市民メディア8bitNewsを主宰する堀潤がdTVチャンネルで毎週月曜夜に放送している「NewsX」に高橋さんをゲストに迎え、あらためてカンボジアの最新情報を伝えてもらいました。

今月26日(金)夜には都内で高橋さんや、現地で人道支援を続ける国際NGO・日本国際ボランティアセンターの大村真理子職員と共に報告会も開く予定です。

報告会を前に高橋さんは「NewsX」で何を語ったのか、インタビューの模様を再録。動画もあるのでぜひご覧いただきたい。

野党なき総選挙で議席すべてが政権側へ

カンボジアが今、大変心配な状況になっています。独裁化です。30年前まで、カンボジアには独裁的なポル・ポト政権があり、虐殺もありました。しかし、民主化を進めていこうということで、日本をはじめ民主主義各国が「選挙手伝うよ、お金が必要だよね。一緒になって民主主義について育てていこうじゃないか」という歩みを30年続けてきました。日本からは文民警察官の方が派遣されて犠牲になるなど、辛い過去を持ちながらも向き合ってきました。ところが最近、30年政権の座に君臨しているフン・センさんが、「我々はもう欧米の支援はいらない。中国の支援があれば十分だ」と高らかに宣言して、敵対する野党を解党したり、民主化の狼煙を上げ発信を続けてきたメディアを解体したり、市民を逮捕したり、ジャーナリストさえ逮捕しています。政権の関与が疑われるような暗殺という事案も発生しました。そうした中、今夜は、このカンボジアの変貌を10年以上現場で追い続けているフォトジャーナリスト・高橋智史さんをゲストにお迎えしました。よろしくお願いします。

高橋:よろしくお願いします。

カンボジアでは、つい先日選挙が行われましたよね。その選挙は、野党なき選挙だったということですが、今カンボジアでは何が起きているんですか?

高橋:7月29日に5年ぶりの選挙が行われました。最大の野党であった変革の願いを掲げていた「カンボジア救国党」という存在がいましたが、その救国党は解党に追い込まれ、党首が投獄され、さらに異を唱えるメディアも閉鎖に追い込まれ、立ち上がる人々の意思は恐怖の弾圧下で駆逐され、断交された民意は政党に反映されていないような状況でした。その結果、125議席のすべてを、フン・セン首相率いる「カンボジア人民党」が掌握してしまったという形です。

:高橋さんが取材を続けてきた写真を今日はシェアしていただけるということで、見ながら話を進めていきましょう。まず1枚目は、つい先日の総選挙のものですね。この人差し指を高く掲げている男性は?


(Photo by Satoshi Takahashi/LightRocket via Getty Images)

高橋:これが、33年間の権威主義的な体勢を維持する、カンボジアのトップに君臨するフン・セン首相です。

:野党が勢力を強めている最中の総選挙だったんですよね。

高橋:はい。2013年の総選挙でも大きな躍進を果たし、まさに「変革なるか?」という願いを抱えた中、昨年地方選挙がありました。その地方選挙で「カンボジア救国党」が躍進を果たしたことが、フン・セン首相に脅威を与えたのではないかと考えます。

:フン・セン首相は、なぜ人差し指を掲げているのでしょうか?

高橋:10日間ぐらいは消えないと言われている、投票したことを示すインクを指につけています。「私は投票を済ませました」ということを表明している瞬間になります。

:逆に言うと、投票を棄権しようものなら、「指に赤いインクがついていないということは、選挙を棄権しただろう」という印になって、それも弾圧の対象になるということですか?

高橋:投票しないということは、たとえば、解党に追い込まれてしまった「カンボジア救国党」を支持するということに繋がる可能性もありますので、人々にとってはとても大きなプレッシャーを感じる選挙だったのではないかなと思います。投票に行かないというのは、職を失ったり、村から追い出されたり、嫌がらせを受けたり、弾圧を受けたり、さまざまな負の要因へと繋がっていく可能性があります。

涙を流しながら投票を待つ男性

:次の写真を見ていきましょう。この男性は泣いていらっしゃいますか?


(Photo by Satoshi Takahashi/LightRocket via Getty Images)

高橋:はい。この方は足に障害を負って車椅子で投票所に来たのですが、涙を流しながら投票を待っていました。やはりこの世代は、ポル・ポト政権の内戦も経験し、その悲劇を経験していますから、彼らの願いはきっと「平和」、そして「真の民主主義」だと思います。彼の泣いている姿を見て、静かにシャッターを切りました。

:次の写真にいきましょう。


(Photo by Satoshi Takahashi/LightRocket via Getty Images)

高橋:これは無効票です。まさに、この不当な総選挙への民意を象徴している写真です。バッテンを付けていますが、これは「私は支持する政党は無い」という強い意志を表明しているものです。今回の総選挙では約60万票の無効票が投じられたと言われています。「カンボジア人民党」が125議席を獲得したわけですが、第2位の政党の票でさえ、37万票でした。それを上回るほどの数を、人々が勇気を持って自分の意思を示したのではないかと思います。

:こういう風に「私はバッテンです」って意思を表明するのは、なかなか命がけなのではないですか?

高橋:大きな決断だと思います。なぜなら、投票所には投票を済ませた後に、自分たちの顔写真が貼られた「投票しました」というのをチェックする一覧表が用意されているので、誰が投票したかはすぐにわかってしまう。

:「そんなの民主主義の選挙じゃない」と思ってしまいますね。

強まる中国政府とフン・セン政権の結びつき

:日本政府はこの選挙活動については、実は税金を使って支援をしているんですよね。

高橋:選挙の投票箱の手配など、約8億円相当の支援を行いました。

:実を言うと、「フン・セン政権が独裁化していく。これはもう民主国家としては形をなしてない」という理由で、アメリカなどは早々と支援から手を引きました。「日本はどうするんだ」ということで、国会議員が外務大臣に対して、8億円の積算の根拠や、日本が支援をすることで独裁化を助長してしまうことへの懸念などについて、国会で質問したこともありました。河野大臣は、「傍観をしているわけではない。時期をみて意思決定が必要。状況を見ながらカンボジア政府の対応を見極めていく」と回答しました。外務省の見解は、「中国がバックについているので、ここで日本が引いてしまえば完全に中国サイドに付かれてしまう可能性がある。日本としては、いい塩梅で関わり続け、ある程度手を握っておく状況も必要だ」という説明もしていました。これもわからないでもないと思いましたが、それだけ中国政府とフン・セン政権の結びつきというのは強いのでしょうか?

高橋:はい。この強権体制を支えているのは、やはり中国の存在です。

:国際ニュースの中で、「一帯一路構想」という中国の政策を聞いたことがあるかと思います。日本貿易振興機構(ジェトロ)の資料をご覧ください。中国は経済的な活動領域を、「一帯一路構想」という名の下で広げています。中国は「世界経済のエンジン」だという自負がありますし、実際に私たち日本も中国経済とは切っても切り離せないので、彼らの発展は世界中にとっての関心事になっています。ただ、その覇権の広げ方が、「現代のシルクロード」とも言われるように、アジアの大陸を横断し、そして中東、さらにはヨーロッパへと広がっています。そして、海路も使い、東南アジア、中近東、そして最終的にはアフリカへという構想を持っています。「回廊」という言葉が付いていますが、鉄道や道路も建設していく中で、人と物の交流を円滑に進めていく巨大な中国の経済圏を広げていこうということです。もはや中国が軍事的に各国を支配していく必要はまったくなくて、経済的な結びつきを強めていくことで中国の覇権を広げようということですね。これに対してアメリカは米中貿易摩擦、経済戦争をしています。東南アジアでは、「一帯一路構想」の重要な拠点として、このカンボジアが今頭角を現しているということです。具体的に、中国系の企業はカンボジアでどのような動きをしているのでしょうか?


「一帯一路構想」©︎日本貿易振興機構(ジェトロ)

高橋:2010年以降、カンボジアへの経済的支援は、どの国と比較しても中国がダントツにトップに躍り出てしまっています。首都プノンペンの街を見ても、さまざまな中国系の開発企業が入っており、「ここは中国の街なのではないか」という程のビル群が建てられています。その近くにはもちろん、中国の人々のためのレストラン街もできています。カンボジア南部の1つの州は、第2のマカオになってしまうのではないかと表現されるくらい中国の資本が入り込み、カジノがたくさんできています。中国の人々の流入がカンボジアに続いているという、目に見えてはっきりわかる状況になっています。

10年以上の現地取材で見た、独裁化への確かな変容

:高橋さんはもう10年以上現場での取材活動を続けています。最初にカンボジア取材をしたのは15年ほど前だそうですね。

高橋:2003年のことです。

:10年前からは現地に住んでいるんですよね。独裁化、強権化というのは突然だったんですか? それともじわじわと進んでいったんですか?

高橋:この33年間フン・セン首相率いる「カンボジア人民党」が、カンボジア全土で構成員を増やすため、さまざまな政策を採ってきました。自らの地位を確固たるものとするための段階を、1つひとつ踏んでいったと思われます。実はその中でたくさんの弾圧があったわけで、突然弾圧が進行したわけではない。その隠された事実の中で、弾圧は今までも幾度も行われてきたと考えています。

:僕がカンボジアの異変を強く感じるようになったのは去年のことです。ちょうどその頃の写真があります。フン・セン政権による弾圧が熾烈さを増した2017年9月のものだそうですね。これはどういう写真ですか?


(Photo by Satoshi Takahashi/LightRocket via Getty Images)

高橋:最大野党「カンボジア救国党」の政党看板が次々と破壊されていきました。壊されているところには、「カンボジア救国党」の党首と副党首の顔写真があったのですが、それが丸ごと切り取られてしまっている。国道を走っても、黒い炭のようなもので塗りつぶされている場所がいっぱいありました。このような形で弾圧が目に見えて進行していったのが、去年9月付近でした。

:誰が剥がしているんですか?

高橋:はっきりとはわからないですが、間違いなく、「カンボジア人民党」支持者、または構成員、またはそれを指示され断れない人々がこのようなことを行っていると考えられます。

:次の写真がこちらです。野党の党首の方ですよね。


(Photo by Satoshi Takahashi/LightRocket via Getty Images)

高橋:はい。約1年間投獄下に置かれていた「カンボジア救国党」党首のケム・ソカーさんが、去年6月の地方選挙で投票するシーンです。彼は1年間投獄下に置かれ、つい先日に釈放されました。今は自宅軟禁状態にあり、一切の面会も許されず、もちろん政治活動もできない状況に置かれていると言われています。

:野党の党首が逮捕されたり、最高裁にかけられて解体させられたりというのは、どういう名目で行われたのでしょうか?

高橋:ケム・ソカーさんの場合は、国家転覆罪でした。「変革の願いを、欧米諸国とともに成し遂げよう」という意思を表明したという理由だけで、国家転覆罪だと言われています。

:武器を持って蜂起しようとかそういうことではなくて?

高橋:全然違います。「カンボジア救国党」の台頭を、やはり「カンボジア人民党」は恐れたんだと思います。この地方選挙でも大きな躍進を果たしましたから、解党されていなければ、今年の総選挙で「カンボジア救国党」は 33年間の「カンボジア人民党」の歴史に終止符を打つことができる存在だったのではないかと考えられていました。その強い影響力を排除したいと願う政権による弾圧の、大きな象徴と言えるような出来事でした。

:次の写真です。女性活動家のテップ・バニーさんが写っています。どういう状況ですか?


(Photo by Satoshi Takahashi/LightRocket via Getty Images)

高橋:テップ・バニーさんは、カンボジアのフン・セン政権の弾圧に対する平和運動の、まさに象徴です。彼女は近代カンボジアの最大の社会問題の1つである土地強制強奪の問題に自ら巻き込まれながらも、その横暴に対して立ち上がり、その勇気が世界から賞賛を受けてきました。でも、やはり地方選挙総前に彼女の強い影響力を排除したいと願う政権によって、2016年8月15日、投獄下に置かれていた5人の人権活動家の釈放を求めるデモ中に、私が取材する目の前で、彼女は当局者に連れ去られました。そのまま2年6カ月の投獄の判決を受け、約2年間投獄下に置かれていたのですが、彼女も総選挙が終わった3週間後に釈放されました。彼女が投獄される理由というのも、ただ、投獄されている活動家の釈放を求めるデモを行ったということだけでした。

:デモをしただけで逮捕されるというのは、言論弾圧ですよね。

恐怖の弾圧でコントロールされたジャーナリストたち

:実を言うと、僕もカンボジアのそうした状況は高橋さんに出会うまではほとんど知らなかったんです。東南アジア各地は、日本のメディアも取材対象範囲として持っていたはずですが、なかなかそうした変容はきちんと伝えられてこなかった。なぜこうしたことが起きてしまっていたと考えますか?

高橋カンボジアには、アンコール遺跡群など、世界中の観光客の方が訪れる魅力的な場所がたくさんあります。そのような場所をただ訪問して、たとえば1週間や10日間、その地だけを見て帰って行けば、この国で起きている社会問題の真相を知ることなく、表層的な部分だけを見て帰っていくことができる国がカンボジアだと思います。その表面的な魅力の背景に深刻な社会問題が隠されている。そういう時代が長く続いた結果、この弾圧の事実がなかなか世界の人々の目に届いてなかったんだと、暮らしながら考えることが多かったですね。

:弾圧などの状況がなかなか高橋さんの取材以外からは伝わってこない。他のジャーナリスト、現地メディアはどうしているのでしょうか?

高橋:やはり、カンボジアにあるメディアは、どうしても政権の直接的な弾圧を受けやすい。批判的な記事を書けない、政権寄りの情報しか流すことができないという、まさに恐怖の弾圧で完全にコントロールされてしまっている状況です。異議を申し立てることが非常に難しい状況に追いやられてしまっています。

:現地のメディア「The CAMBODIA DAILY」という歴史のある英字新聞も廃刊に追い込まれたんですよね。


(Photo by Satoshi Takahashi/LightRocket via Getty Images)

高橋:「The CAMBODIA DAILY」は、1993年からの24年間、すべてが破壊されてしまった大地でカンボジアの事実を伝えるために立ち上がった、初の英字紙でした。私自身も約3年間、「The CAMBODIA DAILY」に取材写真を掲載していただきました。「The CAMBODIA DAILY」は勇気を持って弾圧と対峙し続けてきたため、つねに政権から脅されたり、批判を受け続けたりしてきました。その結果、去年の9月4日に廃刊に追い込まれました。

:突然6億円を超える税金の請求を突きつけられたんですよね。しかも、その6億円が妥当なものなのかどうかは、はっきりとわからない。税金を払えないということで廃刊になり、新聞社に関わってきた経営者はカンボジアに戻ってくることさえできないような状況にあるということです。メディアを潰すというのは、独裁の象徴的な出来事でしたよね。

高橋:主要新聞の1つを亡き者にしたわけです。

:高橋さんをはじめとするジャーナリストたちの活動も制約を受けていて、Facebookの内容も含めて政府から監視され、逮捕される仲間たちもいましたよね。

高橋:まず1人は、オーストラリア人のビデオジャーナリストです。彼はもう60代後半なのですが、昨年の地方選挙期間中に最大野党「カンボジア救国党」の集会を取材している時に上空でドローンを飛ばしていたのですが、なぜかスパイ容疑にあたるということで投獄されました。先日6年の投獄が宣告されてしまい、今でも彼はかなり劣悪な環境下で自由を奪われている形になります。

取材中の緊張感

:高橋さんご自身は、素材を取り上げられたり、逮捕されそうになったりということはなかったのでしょうか? 取材中の緊張感というのはどうですか?

高橋:日々緊張感があります。ある日の取材中は、活動家たちによる政権に対する抗議デモを取材している時、ある武装警察が私の所へ来て、私の腕を押さえつけ、「今すぐデータを消さないとお前を逮捕する」と脅されました。そのまま連れて行かれそうになったのですが、その現場で戦う活動家が、私と当局者との間に入って守ってくれたんです。「今すぐこの現場から逃げて、この事実を伝えてくれ」と。願いを託されたその瞬間が、ずっと忘れられず、今も心の中に刻まれています。

:民主主義を育んでいきたいけれど、圧倒的な経済格差や貧困もある。そういうところに巨大な資本を持った国が「援助します」と入ってくる。そうなった時に、この国の将来に何をもたらすのかなということは、すごく心配にもなります。今後カンボジアと、どういう関わり、支援をしていくべきだと思いますか?

高橋:支援というのは、民主的な形で使われることこそが国際協力だと思います。その意味をもっと人々が理解をして、国際協力の本質をもう一度見つめ直して、カンボジアを捉えてほしいなと思います。

子どもたちの未来のために、私たちが今できることとは

:高橋さんが取材で向き合っている地域の方々はどんなことを話されていますか?

高橋:彼らがいつも私にかける言葉があります。それは、「なぜ私たちがこの巨大な権力に対して戦っているかわかりますか? それは、自分たちの子どもたちの未来のためだ。子どもたちが自らの祖国から弾圧を受ける、そういう未来ではなくて、子どもたちが自分の祖国に夢を描けるような未来のため、私たちは今命をかけて戦っている」と。

:この写真では、子どもたちが当局者と対峙していますね。どういう状況ですか?


Photo by Satoshi Takahashi/LightRocket via Getty Images

高橋:これは、政権によって土地を強制的に収奪されてしまった子どもたちが、「家を、土地を返してほしい」と跪いて懇願する一場面です。なぜ子どもが跪いて、涙を流して、大人に懇願しなくてはならないのかと、いつも現場で切り取っていて悔しい気持ちになります。

:当局と向き合い続ける市民がいて、こういう市民の皆さんを支える活動は、現場でどのように展開されているのでしょうか?

高橋:ある一部の人権NGOはとても頑張っています。彼らと共に一緒に現場に来て、この事実を伝えようと、彼らのことをサポートしようと、常に最前線の現場で共に立ち上がっているNGOもあります。ただ、残念ながら日本の NGO が彼らとともにデモの現場にやってくる姿は、この5年間で1度も見たことがありません。

:発信も限られている。支援も限られている。それは今の政府にとってみれば、都合のいいようにいくらでも成り立ってしまいますね。でも、もう30年君臨しているわけですよね。

高橋:30数年間権力の座を維持すると、やはりいろんな歪みが生まれてきます。その歪みの集約が今年の総選挙だったのではないかなと感じます。

:中国の覇権の争い方については議論をすればいいと思います。しかし、日本国内でも「国防」だ、「安全保障だ」と勇ましい話をする政治家の方が多いですが、「カンボジアの状況を見てよ」と僕は思います。こういうところにこそ関わって解決していくことが、日本とってもすごく大事なのではないかと思います。高橋さんは、今年から来年にかけては、日本での発信活動を活発に行うんですよね。

高橋:来年2月まで、写真展と写真集を通して、この5年間のカンボジアの人々の切望を届けたいなと思っています。

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