日立の鉄道事業、「世界基準」探しで日本からイタリアへ重心
日立の鉄道部門は日本、英国、そして買収したイタリア企業によって一気にオペレーションがグローバル化した。そして今、日本に偏っていた機能を改め、「世界基準」探しが始まっている。
ピストイア工場は買収した旧アンサルドブレダの主力拠点。イタリア国鉄向けの超高速車両や地下鉄、さらには2018年から運行を始める英国IEPの別路線の車両も輸出する。もともとイタリアは、職人の技能に対する誇りと尊敬を抱く「クラフトマンシップ」が根付いている。正井COOも工場の潜在力を高く評価し「効率的なモノづくりをしており、欧州向け車両のプラットフォームを開発していく。ピストイアは成長戦略の柱だ」と話す。
日立は鉄道での欧州進出にあたり、初期からアルミ車両にこだわった。アルミで威力を発揮したのが独自の摩擦撹拌接合技術「FSW」。軽量化と溶接面の外観が美しくなるのが特徴だ。2年後をめどにピストイアでもFSWをスタートさせる計画。現在、日本の笠戸事業所(山口県下松市)で使っている設備と同じものを導入する準備を進めている。
ただ、これは日本基準を世界に広げていくという意図ではない。日本はJRグループを中心に鉄道事業者の影響力が強く、むしろ“異質な市場”。海外のライバルに比べて収益性が低いのは、日立に長くはびこる工場プロフィットセンター(収益責任を持つ組織)に起因したサプライチェーンの弱さだ。正井COOは「余分なコストを省いていくため、日本、英国、イタリアで共通の生産データシステムの構築を目指している」という。
そして鉄道部門では生産にとどまらず、さらに大胆な改革を模索している。現在、工場や地域別に動いている組織を、調達、生産、品質、企画・営業など「機能別」に再編するプランだ。「その時の基準は日本ではなく、むしろイタリアに寄せていくことになる」(日立レールヨーロッパ幹部)。独シーメンスと仏アルストムが事業統合に動き出したことで、「10年後に日立が生き残るためには避けて通れない道」(同)だろう。
成功を収めるには、よりシンプルな組織が求められる。ローカルチームへ権限委譲し、いかに最高の人材を雇い入れることができるかは、日立共通の課題。東原敏昭社長は16年、ピストイア工場を訪問し、従業員と膝詰めの対話集会を開いた。グローバルビジネスの現実は、日々の現場で繰り広げられている。
