副島原発事故をCNNで解説するMITのジム・ウォルシュ氏(上)とアンカーのアンダーソン・クーパー(下)

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「フクシマ・ダイイーチ」とアメリカのニュースアンカーが怪しい発音で、日本の原発事故のニュースを一斉に伝えて始めてから、まもなく2週間。「東北関東大震災を米ニュースメディアはどう見たか?」その2では、原発大国、アメリカのメディアが固唾を呑んで行方を見守る、福島第一原子力発電所の事故についてまとめた。

日本を襲った未曾有の「トリプル災害」の3つ目、福島第一原子力発電所の事故の状況について、米メディアでは日本国内メディアよりも遥かにヒステリックな悲壮感と危機感をもって報道している。米主要各紙は1号機爆発事故が起きて間もない頃から「メルトダウン回避に懸命」などという見出しを躍らせ、「パニックを起こさせない」ことを前提にした日本政府のトーンとは大きく異なった。2、3号機の問題発生に加え、4号機にまで火災が発生した15日には、普段は沈着冷静なCNNアンカー、ウルフ・ブリッツアーが「とてもdisturbing(不穏)なニュースだ。」と伝えた。

そのCNNでほぼ毎日解説していたのが、マサチューセッツ工科大学(MIT)の原子力安全専門家、ジム・ウォルシュ博士(写真上)。彼こそが、日を追うごとに生放送で「メルトダウン」を起こしていき、視聴者に衝撃を与えた。15日には福島の状況を「スリーマイル島事故より悪く、もはやチェルノブイリに限りなく近い。」と説明。翌日には「原発近くの放射能の量が人体に影響を及ぼすレベルに達した。」という公式発表を受け「私は日本に友人も沢山いるが、日本国民の皆さんにお悔やみを申し上げる。これは深刻な状況。」と悲壮感を全開に。「一国で対処せず国際支援を今すぐ求めよ。原発作業員の安全を考え、怒りを禁じ得ない。」と感情的になった。

同じころ日本政府の20km待避ゾーン発表に対し、米政府が日本滞在の米国人に原発から80km待避を勧告、この危機感の違いを受け、CNNアンカーのアンダーソン・クーパーが「日本政府は信用性がまるでない発表をしているのでは?」と東京からの生中継で苛立ちを見せた(写真下)。そこで「直接当局に誠意あるお答えを願おう」という意図のもと、四方敬之・内閣副広報官に直接電話インタビューしたが、語学の問題ではなく「禅問答」のようなやりとりに終わり、クーパーはいらいらを隠そうともしなくなった。そして「日本政府は福島の現状を把握していないか、国民を安心させようと思って裏表のある発表をしているかどちらかで、どの程度今危険なのかは全く伝わらない。アメリカ政治では許されないこと。」と怒りをあらわにした。

一方で、危険な原発の現場で電源復旧などを手がける作業員達を「フクシマ50」と称し、英雄視する動きが生まれた。ニューヨーク・タイムズ紙では15日、「勇気ある、顔の見えない無名の作業員達が、核カタストロフィーの拡大を防ぐ最後のとりでだ。」と書いた。ABCニュースもリポートで「志願して現場にとどまったヒーロー達」と題し、作業員の一人の「これは運命。死刑宣告のようなものだ。」という決死の覚悟を紹介した。

またFOXニュースでは、米西海岸の各州と北東部のミシガン州などを中心に、日本からの放射能の飛散を恐れた米国民が、安定ヨウ素剤のピルを買い求めに殺到し始めた、というリポートを紹介。アンカーのシェパード・スミスが東京から生中継で「私は今、原発から100マイル離れた東京にいるが、そんなピルは服用してない。ミシガン州でピルを買うだって? 馬鹿を言うんじゃない。」と一蹴した。

こんなにも米メディアがフクシマの行方を注視するのは、米国が合計104基を稼働させている世界一の原発大国で、近年、温暖化防止への有効策として現オバマ政権を中心に、原発を推進してきたからだ。しかし今回の福島の事故を受けて、米国内の新規建設計画を見直す機運がすでに高まってきており、感情的とも言えるこのようなメディアの報道が、米国民の反原発感情をも、後押しつつある。

画像=Screenshot from http://www.cnn.com/video/

(TechinsightJapan編集部 ブローン菜美)

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