「男性はみんな子どもがほしいと思っていた」子どもを望まない相手を探したがマッチングアプリでは撃沈…千種ゆり子(38)の思い込みを打ち破った「後に夫になる男性」の“意外な一言”
〈「子どもを産めない自分を受け入れられなかった」29歳で不妊治療を中止したお天気キャスター・千種ゆり子(38)が今も抱える“後悔”とは〉から続く
26歳のときに早発閉経の診断を受け医師から「子どもを産めないかもしれない」と告げられた千種ゆり子さん(38)。
【写真】「卵子がほとんど残っていない」と早発閉経の宣告を受け苦しんだ千種さん
29歳のときに不妊治療を断念する決断をしたが、「子どもを産めない自分は結婚もできるはずがない」と思いつめていたという。後に夫になる男性との意外な出会いや、出産が難しいことを打ち明けたときの反応、そして「今でも子どもを産めない自分を受け入れきれてない」と語る背景について聞いた。(全3回の3回目)

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--千種さんは独身で不妊治療をしていたのですよね。当時パートナーはいらっしゃったのでしょうか。
千種 治療している間にも付き合ってた人はいて、早発閉経のことや子どもを産むのが難しいことも話してました。彼は私を傷つけないように「子どもを産めなくても関係ないよ」と寄り添ってくれたんですけど、当時はそれが受け入れられませんでした。
--どういうことでしょう?
千種 そのときの私は子どもを望む気持ちが強くてまだ妊娠を諦めてなかったので、私が欲しい言葉は「そのままでいいよ」じゃなかったんですよね。本当は一緒に不妊治療に向き合ってほしかったけど、そう伝えることもできずにすれ違っていました。
--難しいですね……。
マッチングアプリの「子どもがほしい」のチェック欄を見るのが怖く…
千種 当時は精神的にも不安定で、不妊治療をやめて子どもを産めない私を本当に受け入れてもらえるのか自信がなかったし、「子どものことは気にしない」というのも情で言ってくれてるんじゃないかと考えてしまっていたんです。ひどいことを言われたとか明確な何かがあったわけではなかったんですけど、どうしても気持ちが整理できなくて、一旦まっさらにしてリセットしたい願望が強くなってしまって。
--別れたあとはどうされたんでしょう。
千種 それでもパートナーは欲しかったので、最初から私が子どもを産めないとわかったうえで出会う人を探すことに切り替えました。マッチングアプリなら「子どもを望まない」という条件で探せると思って30歳ではじめたんですけど、実際には「この人いいな」と思っても「子どもがほしい」のところにチェックが入ってるとその時点で「私はダメじゃん」って落ち込んでしまう。そのうち子どもを望むかどうかの欄を見ること自体が怖くなっちゃって、早々とマッチングアプリはやめました。
--合理的すぎる方法に予想外のつらさがあった。
千種 私自身が子どもを産めない自分を今以上に受け入れられてなかったので、他人が自分を受け入れてくれるイメージが持てなかったんだと思います。それで今度は逆に、もともと私がどういう人間なのかを知ってる人の中で、子どもを産めないことを受け入れてもらえる人を探す方がいいんじゃないかと切り替えました。
--真逆の方法ですね。
千種 そうですね。なので知人の中から、Facebookで気になる人を探して連絡したり、同窓会に参加したりと自分から動いて、その中で今の夫と出会いました。
--夫さんとは元々どういう関係だったのでしょう。
千種 幼稚園が一緒の幼馴染で、小学校からはずっと別々だったんですけど親同士が年賀状のやり取りを続けてたので、どこの大学に行ったかとか、最近どうしてるかをずっと聞いていた人でした。当時は「博士課程を中退して今はフリーター」と聞いていて、順風満帆な人よりも人生が思った通りにならないことを経験した人の方が私の事情もわかってくれるかもしれないと思って連絡しました。
--とはいえ幼稚園ぶりですよね。
千種 約20年ぶりでした。でもお互いに近況を知ってたのと、小さい頃の一緒の写真がアルバムにいっぱい残ってたので心理的な距離は意外と近かったんですよね。メッセンジャーで何度かやりとりしてから「よかったらご飯行かない?」と誘って、再会してからは話が盛り上がってトントン拍子に交際することになりました。
「男性はみんな子どもがほしいものだ」と思ってしまっていた
--いつ早発閉経のことを伝えたのでしょうか。
千種 付き合うことになったら打ち明けようと思ってて、7回目のデートの渋谷の中華料理店で食事後に告白されたので、そのタイミングで伝えました。その時はすごい緊張して、どう思われるか不安だったし、相手にとっては予想もしてないことだろうから動揺されるかなとか、言葉に詰まっちゃうんじゃないかなとか、想像して身構えてました。
--実際の夫さんの反応は。
千種 「子どもは産めないと思う」と伝えたら、「子どもがほしくて付き合いたいわけじゃないから」と落ち着いた様子で即答してくれたんです。動揺を抑えて正しい言葉を言おうとしている感じでもなくて、淡々と受け止めてすっと自分の言葉で返答してくれました。
--ホッとした?
千種 そうですね。それに「こんな人もいるんだ」って驚きました。私自身が子どもが欲しいと思ってずっと生きてきたので、「男性はみんな子どもがほしいものだ」と思ってしまっていました。なので夫の反応で、自分の思い込みにも気づかされました。その後1年ほどの交際期間を経て2020年に結婚しました。
--結婚したことで、千種さんのなかで何か変化はありましたか?
千種 結婚してから早発閉経のことを公表するまでに間があったので、その時に会った人たちに「結婚おめでとう、子どもは?」って聞かれて、「まだいいかな」ってお茶を濁すので精一杯になることはありました。早発閉経を公表してからも、「こうすれば妊娠できるんじゃない?」とアドバイスをくれる人もいて、どちらも悪気がないのはわかってるんですけど、色々やったうえでようやく諦める決断をしたのに、それを掘り返されるのはしんどかったですね。
--長く抱えていた気持ちを切り替えるのは簡単ではないですよね。
千種 私の場合は、自分が気づかないうちに「子どもを産む」という選択肢がなくなっていました。「もっと早く原因をつきつめるように動いていればもしかしたら……」という後悔がずっと残ってるからこそ自分の経験を伝える活動をしてきました。その過程で、映画監督の野本梢さん、映画プロデューサーの稲村久美子さんと、映画『藍反射』を制作させていただきました。この映画は、野本さんに私の経験を話したところからスタートし、ドキュメンタリーではなく、彼女が脚本を1から創作してくださったのですが、こういった物語を届けることで、同じ思いをする人を減らすことができたと思えたら、自分の中にある子どもを望む気持ちからもいつか卒業できるんじゃないかと思って。
やっと認められた「私は本当に子どもがほしかったんだな」という気持ち
--卒業できそうですか。
千種 まだ卒業できる気はしないし、最近は卒業しなくてもいいのかなと思うようになりました。ずっと「どうせ産めないんだから」と子どもがほしい気持ちに蓋をしてきたんですけど、子連れの家族を見ると「いいな」と思ってしまう。見るのが嫌なわけではないんです。ただ、うらやましいなと思う自分がいる。それを止めなきゃと思ってたんですけど、最近やっと「私は本当に子どもがほしかったんだな」ということを認められるようになってきた気がします。
--叶わなかったとしても望んだことまで否定する必要はない、と。
千種 不妊治療をやめた人にもグラデーションがあると思うんです。割り切れたように見える人でも実は葛藤があるかもしれないし、同じ人でも日によって感情に波はある。私自身「子どもを産む以外の道を大切にしよう」という気持ちも「本当は子どもがほしかった」という後悔もどちらも抱えてます。
自分が本当はどうしたいか、これからどういう人生を歩んでいきたいか、もう一度考え直しているところなんです。
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映画『藍反射』上映情報
シアターキノ(北海道札幌市中央区)
8月29日(土) 上映後舞台挨拶あり
8月31日(月)
(雪代 すみれ)
