イラン・ロシア間の重要な輸送ルートとなっているカスピ海の衛星画像/Planet Observer/Universal Images Group/Getty Images

CNN)イランと敵対国の間で拡大する争いに、またひとつ新たな場所として、世界最大の湖、カスピ海が引きずり込まれた。イランとロシアが結びつきを強めるなかで、カスピ海が欠かせない輸送ルートとなっていることが、最大の理由だ。

ウクライナは先週末、カスピ海で軍事物資を運んでいた船2隻にドローン攻撃を実施したと発表。船はどちらもイランからロシアの港へ向かっていたと主張した。

ウクライナのゼレンスキー大統領は24日、X(旧ツイッター)への投稿で、攻撃の標的には「イランからの軍事物資を輸送していた複数の船と軍艦1隻」が含まれていたと述べた。ウクライナ保安庁がその後、軍艦はロシアのミサイル艇だったと断定した。

これに対してイランは、鉄を運んでいた商船のうち1隻が攻撃され、乗組員1人が死亡、3人が負傷したと発表した。

船の名称には言及しないまま、ロシア南部アストラハンの港からイラン北部のアンザリへ向かっていたと述べた。

29日にはイラン外務省の報道官が「ウクライナの危険な冒険主義を見逃すことは断じてない」と語ったことで、緊張はさらに高まった。同省はこの件をめぐり、イランの首都テヘラン駐在のウクライナ代理公使を召喚した。

カスピ海はどこに位置するか

この応酬には、カスピ海の重要性が高まっている状況が反映されている。ペルシャ湾とオマーン湾でイランの港が封鎖された今、カスピ海は貿易ルートとして新たな意味を帯びるようになった。

ウィーンを拠点とするコンサルティング企業、ユーラシア・ネクサス・パートナーズの統括パートナー、ビージャン・ハジェプール氏によれば、カスピ海はイランが通商戦略の多様化を図る助けになり得る。「特にイランが鉄道を使ってロシアやコーカサス地方、中央アジア、中国、あるいは間接的に東欧とも貿易を推進するならなおさらのことだ」と、同氏は指摘する。

同氏はまた、カスピ海は「イランにとって、南方を通る既存の航路の代替ルートというより、戦略的な補完ルート」だと語った。

カスピ海を渡る貨物には、ロシア産の穀物や鉄鋼が含まれる。カザフスタンからの原油やガスも、カスピ海から黒海の中心拠点へと運ばれる。

ロシアにとっても、カスピ海は中央アジアとイランにつながる重要な水路だ。また、イランとの間で強化しつつある戦略的な協力関係に不可欠な重要ルートでもある。この関係には軍事的要素のほか、イランの民生用原子力計画や石油探査への協力も含まれている。

ハジェプール氏は「米国が最近、(イランの港湾を)封鎖したことで、カスピ海ルートの戦略的な価値が浮き彫りになった」と指摘する。カスピ海はまた、国際制裁の影響も受けにくい。陸地に囲まれ、ほぼイラン、ロシアや近隣国の管理下にあって、欧米の海上監視が及ばないからだ。

イランとロシアにとって、カスピ海はなぜそれほど重要なのか

カスピ海は、ロシアとイランが深める軍事的なつながりの通り道となっている。

ロシアはウクライナ侵攻の初期段階から、カスピ海経由でイラン製の攻撃ドローン「シャヘド」の調達を開始した。それ以来、国内でも新型のシャヘドを生産している。

イラン北部の港とロシアのアストラハンを結ぶカスピ海のルートは、過去にもウクライナの攻撃を受けていた。昨年8月には、シャヘドの部品とイラン製軍需品を積んでいたとされるロシアの貨物船「ポート・オルヤ4」号が破壊された。

CNNは24年、カスピ海沿岸にあるロシアの港でイラン製弾道ミサイルを輸送中とみられる貨物船が確認されたと伝えた。米財務省は、ロシア国防省が「『ポート・オルヤ3』号を使って、イランからロシアへ近距離弾道ミサイル(CRBM)を輸送した」との見解を示した。

ブリンケン米国務長官(当時)は、ロシア軍がイラン製の弾道ミサイル「ファス360」を調達したとみられ、「数週間のうちにウクライナで、ウクライナ人に対して使用する可能性が高い」と述べた。

これと同時に、米国家安全保障会議(NSC)はイランとロシアが軍事協力を強めていると警告。NSC報道官はCNNとのインタビューで、ロシアにイラン製弾道ミサイルが供与されたなら、それはイランがウクライナ侵攻への支援を劇的に強化したことを意味すると語った。

イランは当時、ロシアへの軍事支援を否定した。

ウクライナは攻撃で何を達成したいのか

ウクライナが先週末、カスピ海で実施した船舶やエネルギー施設へのドローン攻撃は、同国が長距離攻撃能力を強めていること、ロシアの軍事活動を支える産業に損害を与えようとしていることを示す。

イランが北朝鮮と同様、ロシアへの武器供与に大きな役割を果たしているという認識の表れでもある。

そして何より、攻撃はゼレンスキー氏による今週の訪米と、トランプ大統領との会談を控えた絶妙のタイミングだった。ゼレンスキー氏は以前から、ウクライナ情報当局の話として、ロシアがイランに対し、中東の米関連施設を攻撃するための衛星データを提供していると主張している。

そこから発信されるのは、「われわれは味方同士」というメッセージだ。