「お前は何も心配しなくていい」…働き者だった夫、74歳で急逝。死ぬまで隠し通した“秘密”に、遺族年金月6.6万円の妻が流した「複雑な涙」
「お金のことは俺にまかせろ」――そう胸を張っていた夫が74歳で突然死。40年以上専業主婦として家庭を守ってきた明子さん(69歳)に残されたのは、思いのほか少ない預金と月6.6万円の遺族厚生年金でした。優しさの裏にあった夫の「男のプライド」と、何も知らされなかった妻の戸惑い。配偶者の死の後に訪れた現実を見ていきましょう。
「お金のことは俺にまかせろ」頼れる夫の突然の悲劇
「お金の管理は全部俺がやってるんだから、お前は余計な心配をしなくていい」
生前、夫はよくそう言って笑っていました。 明子さん(仮名・69歳)は短大を卒業後、地元企業の一般事務として勤務していましたが、24歳で結婚して退職。以来40年以上にわたり、専業主婦として家事や育児に専念してきました。
5歳年上の夫は根っからの働き者で、世帯の財布はすべて夫が一手に握っていました。明子さんに渡されるのは毎月決まった生活費のみ。日々の食費や日用品をやりくりするだけで精一杯で、夫の本当の収入や貯蓄額について詳しく尋ねる機会はありませんでした。
「『男が家計を引っ張るものだ』という考えの強い人でしたし、几帳面な性格だったので、すべてうまくやってくれていると疑いもしませんでした」
定年退職後も、夫は「まだ働けるし、家にいても退屈だ」と言い、警備会社のアルバイトへ週に3〜4日通っていました。
そんな穏やかな日常が打ち切られたのは、ある冬の日のことです。 「夕方には帰るよ」と言って出かけたものの、出先で心筋梗塞を起こして急倒。病院へ搬送されたものの、そのまま帰らぬ人となってしまったのです。享年74歳でした。
あまりにも突然の別れに呆然とする明子さん。親族を中心とした葬儀を執り行いましたが、それでも費用は100万円近くかかりました。その支払いを前にして、明子さんは恐ろしい現実に直面することになります。
判明した残高と遺族年金…明かされた「お金がなかった理由」
明子さん名義の貯金は、独身時代の蓄えなどを合わせても100万円ほど。取り急ぎ、そのお金を葬儀に充てました。結婚後の資金はすべて夫名義だったため、夫の通帳を探して残高を確認したのです。
しかし、そこに印字されていた預金残高は、わずか250万円ほどでした。
「長年勤めて退職金も入っていたはずなのに、なぜこれだけしか……?」
愕然とする明子さんでしたが、後日、その“からくり”が判明します。夫は定年時に退職金の大半を投じて住宅ローンを完済し、さらに数年前、数百万円かかる自宅の外壁と屋根の大規模修繕費を全額キャッシュで支払っていました。退職後もバイトに出ていたのは、減ってしまった生活資金を補填するためだったのです。
「家さえ残しておけば、自分に万が一のことがあっても妻が路頭に迷うことはない」――そう考えた夫なりの責任感だったのでしょう。その結果、手元の現金はほとんど消えていました。
しかし、夫が急逝した今となっては、皮肉にもその判断が裏目に出てしまったと言えます。住宅ローンには「団体信用生命保険(団信)」がついているため、返済中に夫が亡くなれば残債はすべてゼロになります。つまり、ローンを残したまま現金を手元に取っておいてくれた方が、残された妻にとってははるかに安心だったのです。
さらに追い打ちをかけたのが、今後の生活の柱となる遺族年金の額でした。年金事務所で手続きを行ったところ、明子さん自身が受け取る老齢基礎年金が月約6万円、そして夫の死に伴い支給される遺族厚生年金が月約6万6,000円。合わせて月12万6,000円ほどにしかなりません。
ローン完済済みの家はあるものの、固定資産税や維持費、光熱費や食費を考えれば、月12万余りの年金と250万円の蓄えだけでこの先を生きていくのは、厳しい状況でした。
「私に心配させたくない、一家の主として格好悪いところを見せたくないという『男のプライド』だったのかもしれません。家を残してくれたのはありがたいけれど、本当は『実は手元のお金が厳しいんだ』と一言相談してほしかった。『それなら一緒に節約しよう』と話し合いたかったのに……」
守られていた安心感が一転して裏切られたような、切なくも複雑な感情が明子さんの胸を締め付け、涙が溢れました。
遺された妻が直面する「厳しい現実」
家計の全権を夫が握り、不都合な現実を隠し通されていた今回のケース。明子さんは「夫を信じ切り、家計の現実に目を向けようとしなかった私自身にも甘えがあった」と後悔を口にします。
厚生労働省の「令和6年簡易生命表」によれば、女性の平均寿命は87.13歳。これを考慮すれば、69歳の明子さんには20年近くの歳月が残されています。月12万円強の収入と少ない蓄えで生き抜くためには、これまでの生活水準を根本から見直さなければなりません。
まずは携帯電話のプラン変更や不要な保険の解約など、固定費の削減から。また、明子さん自身、月数万円でも自力で稼ぐ手段を模索し始めていますが、専業主婦歴の長さから、仕事を選べる状況ではありません。
もし生活が立ち行かなくなった場合は、持ち家を活用した資金確保(リバース・モーゲージ等)や、自治体・国の社会福祉制度の活用も選択肢に入ってきます。
「すべてを一人で抱えて逝ってしまった夫の気持ちも分かります。でも、残された私は、その“プライドの代償”と一人で向き合っていかなきゃいけない。でも、子どもには迷惑かけられませんから、どうにかやっていくしかありませんね」
夫が遺した家と複雑な愛を受け止めながら、明子さんはこれからの人生を自立して歩むための第一歩を踏み出し始めています。

