俳優デビューから46年となる内藤剛志氏(写真/国府田利光)

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 1980年のデビュー以来、ドラマ、映画を中心に活躍を続けるベテラン人気俳優の内藤剛志氏が、『週刊ポスト』にて日々の思いを綴る人気連載「多面体道理論」。主演映画『劇場版 旅人検視官 道場修作』が公開中の内藤氏が日頃心掛けていることとは。

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 僕は晴れ男なんです。

 野外ロケの際、天候が悪くても僕の出演シーンが近づくと、なぜか徐々に重たい雲の隙間から陽が差し込み、気持ちのよい澄んだ青空が広がることが多い。『旅人検視官 道場修作』は野外ロケが中心なので、この晴れ男のジンクスは貴重です(笑)。

 野外でのロケの場合、役者も大変ですが、スタッフはさらに大変。例えば、山の中腹での撮影ともなれば、重たい機材を抱え、山を登らなければいけません。その撮影が終わり、キャストとスタッフが全員、無事に山から下りられたときは「ご苦労さまでした、晴れてよかった」と胸の奥で安堵しています。

 逆に収録スタジオでの撮影は、天候を気にすることもないのですが、セットを替えるときなどに待ち時間ができてしまいます。制作の進行状況やカメラリハーサル、他にもシーンの特殊性で異なりますが、長いときで半日くらいの待ち時間になることも。

 その間、何をしているかというと、別に何もしていません。というか、控え室で用意されたお弁当を食べているときでさえ、常に次の出演シーンのこと、作品全体のことを頭の隅で意識しています。気づいたことがあれば、すぐにメモを取ったりだとか──。

 つまり、僕はスタジオに入る前から"ON"の状態のままなんです。その"ON"も肩に力が入っているような緊張を意味するのではなくて、集中力を切らさない、持続させているということ。そのため、いかなるときもスタッフに呼ばれたら、万全な精神状態で撮影に臨みます。

 こういう話があります。マット・デイモンが2009年に公開されたクリント・イーストウッド監督の『インビクタス/負けざる者たち』に出演したとき、早撮りで有名だった監督に「なぜ、必要以上にテイクを重ねないのですか」と訊ねたところ、監督は笑顔を浮かべ、穏やかな口調で、こう言ったそうです。

「基本的にプロの俳優なら、最初からよいものを演じるべき。それで作品に勢いをつけさせる。ましてや最初のテイクから全力で演じてくれないと、スタッフに失礼だよ」

 彼の演出により、デイモンはこの作品でアカデミー賞助演男優賞にノミネートされます。僕がどうして常にONの状態のままなのか、ご理解いただけたと思います。

【プロフィール】
内藤剛志(ないとう・たかし)/1955年、大阪府出身。1980年に『ヒポクラテスたち』で映画デビュー。以後、ドラマ、映画を中心に活動、1995年から2001年にかけて27クール連続ドラマ出演の日本記録を樹立。『劇場版 旅人検視官 道場修作』が劇場公開中

※週刊ポスト2026年7月17日号