三笘薫のキャリアに「魅力を感じた」 J3デビュー済み有望ルーキーの異例の決断「貪欲にやらないと」
筑波大1年・中野遥翔「大学のトップレベルで自分を鍛え、もっと価値を高めたい」
4月に開幕した大学サッカーリーグ戦。
プロ内定選手、これからプロを目指す選手、そして大学という新たなステージに移行した選手たちが全国各地で激闘を繰り広げる。ここでは大学サッカーのステージで躍動する選手たちをピックアップしていく。今回は筑波大のルーキーMF中野遥翔。アスルクラロ沼津U18からやってきた179センチのサイドアタッカーは縦突破、ドライブして中央のハーフスペースへ飛び込んでの仕掛けなど、多彩なアプローチでサイドを活性化させている。
静岡県御殿場市出身。中野遥翔にとってアスルクラロ沼津は、まさに地元のクラブだ。
「小学生の時にアスルクラロ御殿場U12に入って、そこからずっとサッカーを学んできました。ジュニアユースでもやりたいと思っていたので、セレクション免除で昇格できる枠に入れなくても、自分からセレクションを受けて合格を勝ち取りました。ユースに昇格する時も、他の選択肢は一切ありませんでした」
179センチのサイズとしなやかなドリブルを武器とする中野にとって、大きな刺激となったのが小学6年生の時の出来事だった。練習場で元日本代表MF伊東輝悦のプレーを目の当たりにし、「トップチームにはこんなすごい選手がいるんだ」と衝撃を受けた。一緒にプレーする機会もあり、そのレベルの高さを体感。そこからトップチームの試合へ足を運ぶようになり、「自分も伊東選手のようになりたい」という憧れとクラブへの愛着が芽生えた。
この経験を土台に沼津のアカデミーで成長を遂げると、トップ下やサイドハーフを主戦場としてアスルクラロ沼津U15の主力へ。高円宮杯JFA U-15サッカーリーグ静岡制覇に貢献し、チームを東海第4代表としてクラブ10年ぶりの高円宮杯JFA全日本U-15サッカー選手権大会出場へ導いた。
高校進学時、チームの中心になっていた中野。希望すれば別の進路を選ぶこともできたが、彼の心は最初から沼津U18一本だった。チームメートが浜松開誠館高や静岡学園高などの強豪校へ進学する中、自身は早い段階でU18昇格を決断した。
「U18に残る人は少なかったですけど、高体連は僕の中では選択肢にありませんでした。部員が大勢いる部活よりも、このクラブのスタッフを信頼していましたし、小さい頃から育ててもらったクラブで、憧れていたトップチームとも近い環境にいられる。そのまま昇格することしか考えていませんでした。みんなにも残ってほしい気持ちはありました」
自らの信念を貫いた3年間で、アタッキングMFとしてさらに磨きをかけた。高校2年でトップチームの2種登録選手となり、2025年のJ3開幕・ガイナーレ鳥取戦では後半途中からサイドハーフとしてプロデビューを果たした。
「プロの世界でも戦える手応えは感じました」
高校3年ではU-18日本代表としてJ-VILLAGE CUPとUEFA Friendship Cupに参加。ポルトガル、セネガル、ウルグアイといった強豪国との対戦を経験した。さらにJ3では先発こそなかったものの13試合に途中出場。左右のサイドハーフとして持ち味の突破力を発揮し、攻撃に勢いをもたらした。
その一方で、自らの将来について考える時間も増えていった。
「高2の途中あたりから、プロサッカー選手として活躍するためには、どの道がベストなのかを考えるようになりました。その中でプレー面では三笘薫選手を参考にしていましたし、トップ昇格ではなく筑波大学へ進学して大きく成長したキャリアにも魅力を感じたんです。もちろん沼津でプロになる道も素晴らしいと思っていました。でもサッカーだけではなく、いろいろなことを学べる環境がある筑波大で4年間かけてもっと成長したいという思いが日に日に強くなっていきました」
「大学のほうがいい」という漠然とした考えではなく、「筑波大へ行く」という明確な目標を定めたのも中野らしい。他大学には目もくれず、夏に筑波大の練習へ参加。スポーツ学群の推薦入試で合格を勝ち取った。
筑波大では関東大学リーグ開幕戦の早稲田大戦で左サイドハーフとしてスタメンデビュー。その後は途中出場が続いたが、第9節東海大戦で先発復帰すると2アシストを記録。続く第10節明治大戦では1ゴール1アシストで2-0の勝利に貢献し、前期最終戦の国士舘大戦も先発。ルーキーながら前期全11試合に出場し、欠かせない戦力へと成長を遂げた。
「大学サッカーのトップレベルで自分を鍛え、もっと価値を高めたい。スピードや1対1は通用する手応えがありますが、まだサッカーIQが足りないと思っています。中盤からゲームを組み立てることや、その流れの中で前へ仕掛けることなど、プレーエリアもプレーの幅も広げたい。大学サッカーは試合に出て結果を残さないと意味がない。1年生だからという考えはなく、もっと貪欲にやっていかないと道は開けないと思っています」
自らの価値を証明する舞台は、常にピッチの上だ。すでにプロの世界を知る男は、ぶれることのない信念を胸に、自らが信じた道を真っすぐ歩み続けている。(安藤隆人 / Takahito Ando)

