文芸評論家・三宅香帆「ゲラ公開」投稿巡り波紋 版元の見解は?「問題となるような摩擦はない」
新書「なぜ働いていると本が読めなくなるのか」(集英社)などで知られる文芸評論家の三宅香帆さんが2026年6月下旬、出版前のゲラの一部をXに投稿し、SNS上で波紋を広げた。その後29日、三宅さんはXで謝罪したうえで、投稿を削除したと報告した。
三宅さんが投稿したのは、26年秋に世界思想社から刊行予定の新刊のゲラで、担当編集者の指摘が書き込まれた箇所だった。この投稿を巡り、発売前のゲラや編集段階のやり取りを公開したことに対する賛否が広がっていた。
世界思想社の編集部はJ-CASTニュースの取材に対し、「担当編集者本人は、著者との建設的な共同作業の一場面として受け止めております。著者との間に問題となるような摩擦はなく、現在も今秋の刊行に向けて良好な連携のもとで制作を進めております」と説明した。
担当編集者との信頼関係のもとでの投稿だったが
三宅さんは26日、菓子「ねるねるねるね」に言及した箇所のゲラをXに投稿(29日までに削除)。ゲラには、「一般的に知られていますか?」との担当編集者の指摘が書き添えられていた。
この投稿を巡りさまざまな意見がSNS上で広がるなか、三宅さんは27日、編集者や校閲者の指摘への感謝をXに記した。また、担当編集者への不満だと受け取られたことについて、「言葉足らず」だったと謝罪した。
29日には、担当編集者との信頼関係のもとでゲラを投稿したものの、意図が伝わらずに拡散することが「関係者の方に申し訳ない」とし、投稿を削除したと報告した。なお、編集者から削除要請があったわけではなく、自ら申し出て話し合ったとしている。
波紋を広げた投稿には、発売前のゲラや編集段階のやり取りを公開したことに「直接やりとりすればいいのに」「晒している」といった批判や、一方で「双方合意の上なら問題ないと思う」「微笑ましく見えるけどなぁ」などと擁護する声も上がった。
世界思想社編集部の見解は
今回の新刊を手がける世界思想社編集部は30日、J-CASTニュースの取材に、次のように経緯を説明した。
「本投稿は、著者と担当編集者との間における良好な信頼関係のもと、書籍の制作過程の一場面を読者の皆様と共有する趣旨で、著者ご本人のアカウントから投稿されたものです。なお、当該投稿には、第三者の個人情報や秘密情報が含まれるものではありません」
さまざまな意見や感想が寄せられることは「承知しております」としつつ、「原稿の品質に問題があったため多くの修正が入った」とする一部の指摘は事実と異なると否定する。三宅さんの原稿は「当初から高い完成度を備えて」いたと説明したうえで、次のように補足した。
「今回のゲラに見られるやり取りは、校正工程前の段階において、より良い書籍に仕上げるため担当編集者と著者が意見を交わしながら細部を磨き上げていた、通常の制作プロセスの一環です」
SNS上では、担当編集者が「気の毒」などとする投稿もみられた。だが編集部によれば、担当編集者は、三宅さんとの「建設的な共同作業の一場面」だと受け止めているという。三宅さんとのあいだで問題は起きておらず、刊行に向け「良好な連携のもと」で制作を進めているとした。
著者が出版前のゲラをSNS上で公開することに関しては、「書籍によっては、制作過程を読者の皆様と共有する取り組みには一定の意義があると考えております」。今回のゲラ投稿についても、「一定の意義」があると考えていたと明かした。
一方で、編集部は「公開範囲や表現方法によっては、意図とは異なる受け止め方をされる可能性があることを、今回改めて認識いたしました」とも述べた。今後は、より適切な情報発信と情報管理に努めるとしている。

