(左から)ケナ・ハリス共同監督、アンドリュー・スタントン監督、リンジー・コリンズプロデューサー

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 ボニーのもとで暮らすバズやジェシーたちの前に、最新型の電子タブレット「リリーパッド」がやってくる。多機能なデバイスに夢中になるボニーの姿を見たおもちゃたちは自分たちの存在意義に疑問を抱き始める。おもちゃと子どもの絆を描いてきたディズニー&ピクサーの人気シリーズの最新作『トイ・ストーリー5』が7月3日から全国公開される。ケナ・ハリス共同監督とリンジー・コリンズプロデューサーに話を聞いた。

−『トイ・ストーリー3』のリー・アンクリッチ監督も『トイ・ストーリー4』のジョシュ・クーリー監督も「これで終わり。続きはありません」と言っていましたが、今回新たに『5』を作ろうと思ったきっかけは。また、どんな部分に作る必要があると感じたのでしょうか。

ハリス アンドリュー・スタントンが、ずっとシリーズを手掛けてきたことは皆さんもご存知だと思います。その彼が『4』の後の話があり得るのかと考え始めていた頃、ピクサーは、まだ製作にコミットしていませんでした。でも、そこで彼は「今までの『トイ・ストーリー』では触れていない部分がある。それは、ここ10年あまりの間に子どもたちの生活に入り込んできたデバイスの存在だ。そこにはまだ触れていないから、僕たちは遅れているんじゃないか。おもちゃたちがデバイスのことをどう思うのかという視点はとても面白いと思う。そこに豊かな可能性がある」と言ったんです。また、これまでのようにウッディとバズを主人公にするのではなく、ジェシーが引っ張っていくようなストーリーにすることに新しさと可能性を感じたことも大きかったです。

−ジェシーを主人公にした経緯を伺います。

ハリス 製作前に、アンドリューが「ジェシーが保安官になるシーンを入れてほしい」と言っていました。それは、まだ秘密でしたが、彼は、もしシリーズが続くのであれば、そこには話を広げられる要素があると思って種をまいたのです。その理由の1つは、『トイ・ストーリー』を愛する人たちの中にも、ジェシーの活躍を待っている人たちがいたと思うんです。ちょっとクレイジーだけど勇敢で大胆。でも同時に自信がないところもある。すごくつらい経験をして心の痛みを抱えていて、シリーズを振り返ると、ほかのどのキャラクターよりもバックストーリーがよく描かれていて、実は私たちがよく知っているキャラクターだったのです。なので、彼女の物語には豊かさがあるし、それをしっかりと掘り下げてみたいという気持ちをみんなが待っていたので、今回は最初からジェシーを主人公にすることが決まっていました。また、みんなの中に彼女を癒やしいという気持ちがありました。それで、彼女に見合うべきゴールを作りたいと思いました。

−大人の観客も見ることをどの程度意識して作っているのでしょうか。

コリンズ ピクサーでは映画の製作中に内覧試写を何度も行います。今回は8回でした。その時はもちろん監督やスタッフも参加しますが、当然彼らはみんな大人です。それで“大人である彼ら”からフィードバックをもらいながら作品を作っていくのですが、それは大人の観客に満足してほしいからというわけではありません。単純に、観客として見た時にどう感じるかということなのです。ずっとそうして作ってきたので、子どもの観客のことも特に意識はしていません。面白いのは、子どもの方が大人よりもいろいろなことに気付いてくれるのです。大人には説明しなければならないところを、子どもはすぐに分かることが多いのです。だから、われわれとしてはどの世代の観客をターゲットにするかを考えるよりも、誰も排除しないという映画作りをしてきたつもりです。今回の製作にかけた3年半も、ピクサーの仲間たちにガイドされながら、その価値観に沿って作りました。

−今回は、子どもたちにとって、友達という存在は何なのか、相手はデバイスでもいいのか、それともやっぱり人間がいいのかなど、いろいろと考えさせられるところがありました。

コリンズ 今回は、友情の形みたいなものが物語を開発していく上での鍵になりました。特にポニーについて言えば、シリーズの中で子どもの中でどんなことが起きているのかが分かるのは今回が初めてなんです。今までは、おもちゃたちの気持ちを描いていたので、子どもたちがどんなことを考えているのかは分かりませんでしたが、今回は分かります。彼らは、人とつながりたいとか、友達を作りたいと考えて葛藤しているのです。そこから、遊べる相手はオンラインでいいのか、実際に触れられる対面がいいのかということを考えて、何度も脚本を書き直していく中で、極まっていったテーマでした。

ハリス 最初から、デバイスの画面ばかり見ている今の子どもたちを裁くつもりは一切ありませんでした。それこそ、つながり方はたくさんあるわけで、今までのシリーズでも、こういうつながり方もあるんだよということを見せてきたと思っています。だから、相手は動物やデバイスの画面でもいいのかもしれないし、人間の友人でもいいかもしれないけれど、今の子どもたちが置かれている状況をリアルに描くことを心掛けました。そして、ボニーがちょっと変わった子どもで、ジェシーは誰よりもそのことを知っているからこそ、ボニーとうまく付き合える友達をどうしても見付けたいと考えている。遊びを通して友情を深めてもらいたいと思って頑張るというストーリーになっていきました。

−ウッディがメタボになって、ちょっとハゲもできたりして、おもちゃも年を取るところが面白いと思いましたが、このシリーズは、おもちゃの持ち主が男の子から女の子になったり、今回のデバイスの登場など、おもちゃを取り巻く環境の変化が一貫して描かれていますが、そうした変化を描くことについては、どう意識しているのでしょうか。

ハリス それは本当に話したいことであり、いつも大事にしてきたことでもあります。日本の状況は分かりませんが、アメリカではシリーズが5本も続くのは珍しいんです。ということは、このシリーズとともにたくさんの方が一緒に育ってくれたと思います。変化ということについては、当初から一貫して描いてきたテーマです。人生においてわれわれがどのように変化していくのか、大人の階段を上る時にはどんなふうに変化するのか。そして、遊びだけでよかった子どもから、自分が親になって面倒を見なければならない子どもができた時にはどう変わるのかと。だから、子どもだった人が、自分の子どもを連れて見に来てくれると、人生のポジションも感じ方も前とは違うわけですから、彼らの成長もこのシリーズを通して見えるようになってくれたらいいといつも考えています。それを常に頭の隅に置いて作っているからこそ、『トイ・ストーリー』は色あせない作品になっているのだと思います。面白いのは、おもちゃも自分が子どもたちの面倒を見ているんだと思っていて、ある意味小さな親みたいなところがあります。その中でおもちゃたちも当然変化していきます。それは見た目だけではなくて、心の成長という変化でもあるわけです。

(取材・文/田中雄二)