「神の存在」を思い出すと健康的な食品よりジャンクフードを選びやすくなるという研究結果

宗教への信仰やスピリチュアルな考えは日常のさまざまな行動に影響を与えており、一時的に宗教的なシンボルに触れるだけでも神の存在を思い出し、行動が変わることがあります。新たな研究では、「神の存在」を意識的であろうと無意識的であろうと想起すると、人は健康的な食品よりもジャンクフードを選びやすくなるという結果が示されました。
God's Presence in the Aisle: How God Salience Encourages Preference for Ultra‐Processed Foods - Gohary - Psychology & Marketing - Wiley Online Library
Simple reminders of God make us crave junk food, according to new psychology research
https://www.psypost.org/how-simple-reminders-of-god-make-us-crave-junk-food/
人々は宗教的建造物などを目にした際、個人の信仰心とは無関係に神と関連する思考が引き出されることがあり、この現象は「God salience(神の顕著性)」として知られています。オーストラリアのラ・トローブ大学の研究者であるアリ・ゴハリー氏らの研究チームは、神の顕著性が食の選択、特に添加物が大量に含まれており工業的に加工された超加工食品の好みに及ぼす影響を調べました。
超加工食品には焼き菓子やスナック菓子、甘い炭酸飲料、ハンバーガーといったジャンクフードなどが含まれ、世界中で日常的に親しまれています。しかし、超加工食品には脂肪分や塩分、糖分などが非常に多く含まれていることから、超加工食品の過剰摂取は肥満や心血管疾患につながると医療専門家らは警告しています。
多くの消費者も超加工食品が健康に悪いことを知っているため、超加工食品を食べるかどうかを判断する際には精神的な葛藤が生じます。ゴハリー氏らは、人々が神の存在を意識して「神のような大きな力が自分の健康を守ってくれる」と感じれば、超加工食品への抵抗感が薄くなるのではないかと考え、この仮説を検証するための6つの実験を行いました。
1つ目の実験では、大学生の被験者らを「聖書の一節を読むグループ」と「中立的な文章を読むグループ」に分け、文章を読んだ後に「プレーンな蒸しジャガイモ」と「高度に加工されたハッシュドポテト」の画像を見せました。それぞれの食品への欲求について測定したところ、被験者らの加工済みのハッシュドポテトを食べたいという欲求が、宗教的な文書を読むことで高まることが判明。一方、中立的な文章を読んだグループでは欲求の高まりが見られませんでした。
2つ目のオンライン実験では、被験者に宗教的なクリスマスソングである「きよしこの夜」と、世俗的なクリスマスソングの「ひいらぎかざろう」のいずれかの短いクリップを聴かせました。音楽を聴いた後に架空の食料品の買い物タスクを実行させたところ、「きよしこの夜」を聴いた被験者はイチゴ風味の水や加糖シリアルといった加工食品をより多く選び、「ひいらぎかざろう」を聴いた被験者は天然水やプレーンなオートミールを好むことが示されました。

3つ目の実験は、神の顕著性が現実世界での食品選択に与える影響を調べるため、イランの大規模な行政庁舎内で一般の人々を対象に行われました。研究者らは「天然のデーツ(ナツメヤシの果実)」と「加工されたデーツのスイーツ(デーツトリュフ)」を用意し、一部の人々には「イスラム教の礼拝の呼びかけが行われた直後」に声をかけ、別の人々には「礼拝の呼びかけから2時間後」に声をかけて、どちらの食品を選ぶかを選択させました。その結果、礼拝の呼びかけを聞いた直後の被験者では、加工されたデーツトリュフを選ぶ傾向がはるかに高かったと報告されています。
4つ目の実験は、これらの選択を促す心理的メカニズムを理解するために行われました。実験ではオンラインの被験者に対し、「神について」または「日々のルーティンについて」説明するように指示しました。その後、被験者らは架空の食料品の買い物タスクを実行し、自身の感情や信仰に関する質問に答えました。
この実験では、人々は神について説明してスピリチュアルな思考に触れることで、「健康被害を受けても神が治してくれる」とより強く感じるようになったとのこと。こうして神の顕著性が高められた被験者は、やはり超加工食品をより多く選択するようになりました。なお、神の顕著性ではない「希望」「楽観主義」といった要因は、食品選択に有意な影響を及ぼしませんでした。
5つ目の実験は、「宗教者の動画」と「油絵画家の動画」のいずれかを視聴した被験者に対し、「クッキーやチョコレートチップ入りのピーナッツバター(より不健康な選択肢)」と「プロテインと海塩入りのピーナッツバター(より健康的な選択肢)」のどちらを選択するのかを尋ねました。今回の実験では、前提となるピーナッツバターがそもそも加工食品ですが、やはり宗教者の動画を見た被験者はより不健康なピーナッツバターを魅力に感じていたとのこと。

6つ目の実験では、「神の介入の予測可能性」が食品選択に及ぼす影響について調べられました。被験者は「人間の健康に対する神の影響は一貫しており予測可能だと主張する架空の論文」「世界における神の働きは完全に神秘的で不可解だと主張する架空の論文」「完全に世俗的な健康結果について記された架空の論文」のいずれかを読んだ後、架空の買い物タスクを完了しました。
その結果、「神の影響は予測可能」という論文を読んだ被験者では超加工食品をより多く選ぶ傾向がありましたが、「神の影響は予測不可能」という論文を読んだ被験者は健康的な食品を選択する傾向がみられました。これは、神を健康のセーフティーネットとして捉えるには、神の恩恵は一貫したルールに従っていると信じる必要があることを示唆しています。
今回の研究結果は、公衆衛生に関する情報発信や食品マーケティングに影響を与える可能性があります。たとえば、宗教に基づいて健康増進活動を行う場合、被験者が神の存在を意識することで「超加工食品の悪影響から神が守ってくれる」と感じないよう、慎重になるべきかもしれません。また、健康的な食品をアピールしたい食品メーカーにとって、広告に宗教的なテーマを用いることは逆効果になり得ます。
心理学系メディアのPsyPostは、今回の研究は主に一神教の信仰体系に焦点を当てたものであり、文化ごとに神の概念は異なると指摘。「慈悲深く癒やしを与える存在ではなく、罰を与える神を強調する宗教もあります。怒りに満ちた精神的な枠組みは、寛容よりもむしろ自制を促すかもしれません。研究者たちは、多神教や非神論的な伝統が、消費者の自制心にどのように影響を与えるかを調査する必要があります」と述べました。
