【鈴木 貴博】「ヤマダ・エディオン」2.5兆円連合の誕生が意味するもの…!誰も行かなくなった家電量販店に迫る「3メガ再編」と淘汰の時代

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家電量販店「3メガ時代」へ?

「最近は家電量販店にあまり行かなくなった」という人が多いのではないでしょうか? テレビや冷蔵庫をホームセンターやドンキで買う人も増えています。スマホのケーブルや電池なら百均かアマゾンで手に入ります。昔のように電気のことなら家電のお店という時代でもなくなってきています。

そのような環境下で、ヤマダ電機とエディオンが経営統合を進めると発表しました。

統合後の業界ランキングはヤマダ・エディオンが売上高2.5兆円で圧倒的なトップ、2位がビックカメラの約9000億円、3位ケーズデンキ、4位ヨドバシが8000億円弱、5位ノジマ、6位上新電機が5000億円前後という顔ぶれに変わります。

統合で巨大グループが誕生する意味は何なのでしょうか?

かつて銀行業界で都市銀行がつぎつぎと経営統合してメガバンクが誕生したように、これから先の家電小売り業界も3メガに統合されていくのでしょうか?

ないしはダイエーやマイカルといった巨大スーパーがつぎつぎと消えていったように、家電量販店にも淘汰の時代が始まるのでしょうか?

どちらの可能性もありますが、どうも未来はそれだけでもないようです。この記事ではこれから家電小売り業界に起きることを予測してみたいと思います。

量販店を追い詰めた「スマホと格安家電」

まず最初に業界について振り返ってみます。家電小売り業界のビジネスモデルはこの数十年で大きく変わりました。1990年代、家電量販店が台頭した当時が家電の黄金時代でした。

ソニー、パナソニック、日立、東芝、シャープ、サンヨーといったメーカーの日本の家電は世界の最先端の製品で、誰もが新しい家電を欲しがったものです。

そういった人気商品を激安で販売するモデルで、家電量販店はつぎつぎと店舗数を増やしていきます。そのころは人口も増加していて、若者が消費の中心でした。

2000年代中盤にこの構図がくずれはじめます。中国、韓国、台湾の家電メーカーが台頭し、日本勢はつぎつぎと競争力を落としていきます。ただ苦しいのはメーカーであって、小売りはまだ成長期が続きました。

そうなった理由は携帯電話です。

この時代、実は収益の柱は家電の販売よりも携帯の契約にシフトし始めます。どの家電量販店も一番メインの売り場は携帯3社ないしは6社のブースが占めていて、顧客もスマホの相談をするために家電量販店を訪れるようになりました。

さて、その後時代はさらに流れ、情勢は大きく変わります。まず第一にスマホが普及したことで黒物家電というカテゴリーがほぼほぼ消滅することになりました。2000年当時のラジカセ、ウォークマン、ステレオ、ビデオといった製品は生活から消えます。若い世代はテレビすら買わずにスマホで動画を視聴します。

日本のメーカーは総崩れになり、大画面テレビや白物家電では中国勢が市場を席捲しています。ブランドだけは残っていても中身は中華系企業に変貌しているのです。

そうなってくると消費者にしてみれば、レグザやシャープのテレビ、東芝の洗濯機や冷蔵庫がいいのか、それともプライベートブランドの家電がいいのかというと、どちらも同じに見えてきます。

ドンキでいい

それで家電量販店での売れ筋がメーカー品からプライベートブランドに移り始めます。それでも売れる商品が変わるだけならいいのですが、家電量販店にとって困った現象が起きます。プライベートブランド家電であれば消費者は家電量販店に行く必要はありません。

ドンキやホームセンターで「自社開発商品」のテレビや冷蔵庫を買う消費者が増え始めたのです。

さて、この背景を前提に今回のヤマダエディオンの統合の話を考えてみます。

次の2つのシナリオのどちらが起きるのでしょうか?

シナリオ1:家電小売り業界の縮小

シナリオ2:経営イノベーションによる新たな発展

まずは、シナリオ1から見ていきましょう。

生き残りをかけた「守りの経営統合」

【シナリオ1:家電小売り業界の縮小】

経営統合という経営手法は単純に業界の成長が鈍化したときに有効です。今回はヤマダ電機、エディオンそれぞれのブランドは残したままの経営統合ですが、バックオフィスの共通コストを大幅に縮小することが可能になります。

たとえば大きなコスト削減が期待できるのが、情報システムの更新です。古いシステムを新しくする際に、それまで別々だったシステムを統合すれば開発コストはお互いが分担して半分になります。他にも資金調達などの財務部門、人材採用や教育などHR部門など本社の機能は統合によっていたるところ経費を共有できるようになります。

コスト以外でも統合のメリットはあります。たとえば仕入れ条件では、これまでよりも有利な値引き条件を勝ち取ることができるようになります。ふたつの会社機能をひとつに統合することでいたるところで財務メリットを出し、利益を増やすことができるのです。

無用な軋轢を避ける

今回の統合の面白いところは両社のブランドには手を付けないことです。実はそうすることでさらにコストを節約できます。これがたとえば合併で新しいブランド名に店舗が生まれ変わるとしたら、看板や店内表示の書き換えから制服のデザイン変更、テレビCMの作り直しといったコストが追加されるでしょう。

合併の場合には社内で権力闘争など無用な軋轢が起きて、業務の停滞が起きたりもします。それなしで純粋に統合のメリットだけを手に入れようというのが、今回の統合案のひとつのポイントです。

そしてこの統合が経営にプラスになるとわかれば、ビックカメラやヨドバシ、ケーズデンキや上新電機もどこかと経営統合を検討し、やがて小売り業界は3メガに収れんしていくかもしれません。

そうやって組織をスリム化して生き残りをはかる、これが家電小売り業界縮小の流れの中で起きる可能性がある一番目のシナリオです。

ただ、今回の経営統合、狙いはそこだけではないと私は思います。

そこで浮上するのが、シナリオ2の「経営イノベーションによる新たな発展」です。

これが見えると、ヤマダ電機とエディオンが経営統合をする本当のメリットが見えてくるかもしれません。

後編記事『沈む家電業界が、ついに生まれ変わる…!ヤマダ・エディオン2.5兆円連合から始まる「ユニクロ型革命」と業界大再編』で考えていきましょう。

【つづきを読む】沈む家電業界が、ついに生まれ変わる…!ヤマダ・エディオン2.5兆円連合から始まる「ユニクロ型革命」と業界大再編