石川県輪島市町野町出身で東京在住のシナリオライター、藤本透さんは、現地ならではの情報や行政の情報をまとめ、ご自身の実家も被災しながら、発災から一日も休むことなく、X(旧・Twitter)で発信を続けています。ふるさとの今を見つめる藤本さんによる連載記事、第23回目です。

※記事の内容は、2026年5月下旬から6月下旬のものです(一部4月の情報を含みます)。

伝統行事・町野町のアート田、「今年のテーマは地元への愛」

5/29、町野小学校の恒例行事となっていたアート田の田植えが行われました。

町野小学校で2002年から始まった田植えと稲刈り、アート田は2004年から受け継がれてきた伝統行事は、2026年度から東陽小中学校が引き継いで実施されています。

雨天で1日延期になったとは思えないほどの晴天に恵まれ、町野町川西地区の田んぼでは地元農家の方の指導を受けながら、生徒のみなさんや先生方、集まった地元の方々やボランティアの方々、約30名がが古代米の苗などを丁寧に植えていきました。

参加されたボランティアの方「子どもたちが協力しあい、アートを通して田植えを楽しむ姿が楽しそうで印象的でした! 僕のような初心者にも指導してくださりすごく楽しかったですし、思った以上に気軽に田植えが楽しめたので経験の有無など気にせず今後も参加する人が増えてくれると嬉しいです!」

地元の参加者の方「今日の田んぼアートでは、子供たちとボランティアでこられた方たちと青空の下で協力して田植えをしていました。田んぼに足を踏み入れた瞬間、『キャー』と声が上がり、終始楽しそうに田植えをしていました。ほのぼのとした時間が流れていました」

2024年は「生きる」、2025年は「のと」をテーマに描かれたアート田。

今年は、町野小学校と東陽中学校が統合して「東陽小中学校」になったことから「東陽」の文字と地元への愛を表現したハートマークが描かれました。

秋に鮮やかな田んぼアートが広がる景色もまた、お届け出来ればと思います。

上大沢地区は3年ぶりの田植え

能登半島地震と奥能登豪雨によって甚大な被害を輪島市の上大沢地区でも、3年ぶりとなる田植えに辿り着くことができました。

お写真では伝えきれないのですが、田んぼの中は、能登半島地震・奥能登豪雨の影響で段差や穴があり、まだまだ元通りという状況ではないとのことです。

それでも、上大沢の方からは、「たくさんのみなさまのご支援・応援のおかげで、大きな一歩を踏み出しております。本当にありがとうございます」と、感謝の声が届いています。

復旧復興はまだ続いていますが、この夏には、昨年まではなかった緑広がる田んぼと里山の景色が上大沢に戻ってきます。

能登復興の願い ともしび会

8/1に開催される2026年「能登復興の願いともしび会」に合わせて、能登半島地震前から町野町金蔵地区で活動しております「NPO法人 やすらぎの里金

蔵学校」さんの、クラウドファンディングと寄付の受付が始まりました。

2002年から2016年まで、お盆の時期の地域おこしのイベントとして、金蔵地区に幻想的な空間を演出していた「万燈会(まんとうえ)」は、能登半島地震後の2024年にボランティアのみなさまの力を借りて再開。

翌2025年の8月には、祖霊のともしび会として、たくさんの灯火を再び金蔵に灯しました。

今後は、地域おこしのイベントとしてではなく、能登震災・水害追悼、能登復興・再生の願い、先人への感謝のともしび会としていきたいという想いで、「能登復興の願いともしび会」と名称を改めました。9/21には、「能登水害追悼ともしび」も予定されています。

今後は、7/21〜7/26の期間で、8/1のともしび会で使用するキャンドルにかぶせる「能登復興の願い灯ろうメッセージ」の募集を行う予定です。

鎮魂の灯り、能登を照らす未来へ希望の灯り、復興の願いを込めた灯りをともすお手伝いを頂けましたら、大変有り難く思います。

2026年「能登復興の願いともしび会」は、8/1(土)(16:00着火開始)に、正願寺(

輪島市町野町金蔵ノ-119)にて開催されます。

もとやスーパーが震災後初、広告を使った生活応援還元セール

6/15、町野町の唯一のスーパー、もとやスーパーさんが能登半島地震発災後、初の広告日を迎えました。

「町野町のみなさまへの感謝を込めて」と銘打った生活応援還元セールは、前川律子さんから寄せられた「町野町のみなさんが一番喜ぶ形で使ってほしい」という温かなご支援で実現したものです。

営業開始時間をいつもよりも遅めの10:00に設定し、卵や牛乳、そうめん、バナナ、アイスやお酒など、たくさんの目玉商品を揃えてオープンした当日は、広告の品を求めて訪れた地元の方々で賑わいました。

もとやスーパー本谷一知さん「『安い時だけ来てごめんね〜』と仰る方もいらっしゃいましたが、自分からしてみれば、何を言ってるんですか、という気持ちです。こういうときに遠慮されて町野の人たちの顔を見られない方が、よっぽど寂しいですから。私としましては、まだまだ十分に買い物できる環境がないなかで、少しでも住民のみなさまに貢献したいという思いで、チラシを出しております。最近、ボランティアさまから『何が一番住民さんのためになりますかね?』というご相談を受けます。私たちの商いはスーパーマーケットですので、やはり一番の心配は住民 のみなさまの生活です。ですから、日本一安い価格の必需品でご支援を住民のみなさまに還元すれば、お店にも出向いてこられるでしょうし、普段は移動販売車での買い物に慣れているお客さまにも、たくさんの品物のなかから、自分で選んで手に取るというセルフサービスでのお買い物を楽しんでいただけると感じました。今後も続けていきたいと考えています」

今年、「MOTOYA BASE」として生まれ変わるため、本格的な工事が始まるもとやスーパーさんでは、朝獲れの鮮魚と町野町自慢のさいはての谷内のおとうふさんのお豆腐を能登から直送する全国物販への挑戦もスタートしました。

当面の間は、品質を守るために不定期・数量限定、翌日配送可能エリア限定ですが、能登にお心を寄せてくださるみなさまに地元の自慢の味をご賞味いただければと思っております。

自力再建のための「家建てっぞぉ〜」プロジェクト

2024年1月に能登半島地震、同年9月に奥能登豪雨という二つの災害による甚大な被害を受けた町野町。特に被害の大きかった町野町粟蔵地区では、粟倉医院の大石 賢斉先生を中心に、地元の方々や、継続的に支援に入ってくださっているボランティアの方々が協力しあい、自力再建のためのログハウスづくりを進めています。

町野町では、資材高騰やローンの壁により、自宅再建を諦めざるを得ない方々が多くいらっしゃる状況が続いています。

「ならば自分たちの手で建てよう」、「助けてもらう」から「共に創る」へ進んでいこうという一心で始まったプロジェクトは、「この土地の資源を使い、この土地の住民が、自分たちの力で未来を再建し、ともに力強く歩む絆を取り戻す」ことを目的としています。

2025年9月から本格始動した「家建てっぞぉ〜」プロジェクト。メンバーは、まず実際の作業に必要な各種重機の免許、チェーンソーや玉掛け、足場や小型移動式クレーンなど各種の資格を取得しました。各方面からの協力もあり、町野町で実技講習や試験を受けられる体制も整いました。

2026年3月には、大石先生が代表を務める「一般社団法人萬学舎」が立ち上がり、プロジェクトの事業者となり、4月からは、ログハウス第1号となるコミュニティハウス「ログカフェ」の建設が旧粟倉医院敷地で進められています。

地域循環・住宅コスト削減の実証を自分たちの力でログハウスを建設していくこのプロジェクトは、地域循環型の地元なりわいの再生や住宅再建コスト削減の実証実験の場でもあります。

なりわい再生と住宅再建コストの削減を目指す

大きな特徴が、町野町を囲むたくさんの山々にある木材を利用する「自伐型林業」です。

「自伐型林業」とは、「地域の山林所有者や住民が、小規模かつ持続的な方法で、自ら山の手入れと伐採を行う林業」のことです。

高騰する資材に頼らず、安価で木材を調達できるのみならず、荒れた山を適切に手 入れすることで、災害に強い山づくりに寄与し、高齢者も参加できる継続的な仕事を生み出すことで、 地域のなりわいの再生を促すことに繋がります。

実際に、地震や豪雨被害を受けた山の木を山主の承諾を得て、プロジェクトメンバー自らの手でログハウスの材料となる木材を伐り出しました。

こうして伐り出された木材は、町野町の製材所で一次加工されます。また、基礎工 事も砕石やコンクリートの資材が不足する中、地元の業者さんの「なんとかしよ

う!」という想いとご尽力に支えられて、工事を止めることなく進めることが出来ています。

こうした地元の業者さんへの委託は、地域循環型の経済を取り戻すという大きな働きもあります。

町野の山から伐りだした木で建築を

ログハウスを支える大事な土台となる基礎工事が始まったことで、家らしい輪郭が見えてきました。

6月初めの早朝には、地元の製材所で角材に一次加工された約150本15トンの木材が、ログハウス専用のプレカットが出来る工場がある岐阜県に向けて出発しました。

旧粟倉医院敷地では、住民の方々、町野町出身の方々、そして学生ボランティアの方々などが町野町の山から伐り出した木の皮を剥く姿がよく見られるようになりました。 こういった活動はごく短時間であったとしても「自分事」としてのプロジェクトへの関心を育みます。

同じ敷地内には、これからどんどん形になってくるログハウス第1号に続いて、ログ小屋の建設も進められています。

ログ小屋は、元々は大石先生が2024年の夏にお一人で建てており、完成間近でしたが、9月の奥能登豪雨によって流されてしまったことから、再び建て直そうと、新たにお一人で建設を始められました。こちらのログ小屋は、みなさまが気軽に集えるログBARとして使われる予定とのことです。

町野町に根付き始めた新たな景色

自分たちの力で建てていく自力再建のための「家建てっぞぉ〜」プロジェクト。その日々の建設の様子が、復旧から復興に向かう町野町に根付き始めた新たな景色を見せてくれています。

大石先生に、これまでの活動を振り返っていただきました。

粟倉医院・大石賢斉先生「『家建てっぞぉ〜』プロジェクトは、我々が直面している住家再建という難題に当事者自らが全力で取組む過程で自力を付け、しかも山に深く関わることで自然に良いインパクトを与えつつ、人間も含めた多種多様な存在が共に力強く幸せに生きられるよう、そして本当に必要な医療だけが必要とされるような環境創りに寄与できればとの想いから始まりました。萬学舎には、萬(あらゆる存在)から互いに学び、人が人として生きるために必要な萬(たくさん)の知恵を培うための学び舎としての役割を果たすという意味を込めています。活動の羅針盤である『ワクワク』をたくさんの人と高め合いながら、いつの日か完全燃焼しながら生きる人で溢れた場所に自分は生きたいと思っています」

「家建てっぞぉ〜」プロジェクトでは、2025年末から2026年2月にかけてクラウドファンディングを実施、目標金額1200万円には届かなかったものの、総額約650万円ものたくさんのご支援をお寄せいただきました。

応援・ご支援をくださったみなさまに、この場をお借りして改めて心から御礼を申し上げます。本当にありがとうございました。

たくさんの方々からお寄せいただいたご支援は、伐り出した木を「家」へと変える力になっています。再び笑顔があふれる街の復興のために、今も大切に活用されています。また、クラウドファンディングは終了しましたが、ご支援は随時受け付けておりますので、引き続き応援をいただけましたら、有り難く思います。

自分たちの町の復興を自分たちで出来るだけ

「災害NGO結」さんにご協力いただき、町野復興プロジェクト実行委員会の活動部隊として発足した、「チームまちの」が、2026年4月から町野町を中心として活動を始めています。

「チームまちの」は、輪島市町野町の地元住民が中心となり、元気に楽しく学び合いながら、町野町らしいペースで成長し、地域活性化と町の復興を目指すチームです。

これまでに、側溝の泥出しや駐車場の整地など災害の片付けのみならず、仮設住宅から新居へ移る方のお手伝いや大型家電の運搬のお手伝いなど、活動の幅を広げ、地元との繋がりを強めてきました。

町野町では、能登半島地震と奥能登豪雨という二度の災害のあと、協働することの大切さを感じた人たちが多くいます。元々あった助け合いの精神はより強固に、またボランティアの方々や支援者の方々など、新たに生まれた関係もたくさんあります。

活動メンバーは地元町野の住民のみならず、ご協力くださっている災害NGO結さんの活動を通したボランティアで町野町に来てくださっている方など、様々です。困りごとなどの依頼を受けて活動していますが、依頼主の方にも参加してもらい、一緒に活動を進めていくスタイルを目指しています。

輪島市消防団町野分団の部長としても町野町を支えているリーダーの南壱朗さんは、これからの活動について、次のように語ります。

「町野町では、まだまだ災害の爪痕が残っています。そんな復旧復興のさなかでも、大好きな町野と住民のために少しでも早くより良い復興を、そして何より復興だけにとらわれずに、『楽しい町野』を多くの人に感じてもらえるように、地元愛で地域の人に寄り添い、チーム一丸となって頑張っていきます!」

MRO北陸放送では、被災地の声を集め続ける藤本さんが見つめる被災地の現状をNEWS DIGで、毎月掲載します。

藤本透

シナリオライター。アプリゲーム『ノラネコと恋の錬金術』メインシナリオライタ

ー。『ラブライブ!スクールアイドルフェスティバル』、『ラブライブ!スクールアイドルフェスティバル2』のシナリオ執筆に携わるほか、様々なジャンルでの執筆を手がける。石川県輪島市町野町出身で、石川県を舞台に描かれたアニメ「花咲くいろは」の小説版を執筆。2024年1月1日の能登半島地震発生以降、SNSを通じてふるさとの情報を日々きめ細かく発信している。

【輪島市町野町】輪島市の東側にあり、今回の地震の震源地である珠洲市と隣り合っています。1956年に輪島市に編入されるまで、町野町は、単独の町として存在していました。