金星に“あと一歩”届かず…ジャパンXVがMABに惜敗 新星SO伊藤が未来への光明に

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伊藤の今後の成長は楽しみな要素の一つだ(C)産経新聞社

 今夏の国際マッチシーズンの幕開けとなるジャパンXVとマオリ・オールブラックス(以下MAB)との一戦が6月27日に行われ、ジャパンXVは31-38の僅差で敗れた。MABとの日本代表、ジャパンXVを通じての通算対戦成績は1勝8敗。ジャパンXVは昨年に引き続き2連敗を喫した。

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 惜敗ではあったが、最後の最後で実力差を見せつけられた一戦となった。この試合、ジャパンXVは序盤からMABに対し接点でのコンテストで一歩も後に引かず、アタック時には確実にボールをキープし、ディフェンス時にはターンオーバーまで奪ってみせた。個々のプレーヤーのフィジカルの強さと、奔放で正確なオフロードパスで最初からトライを量産して圧倒しようと目論んでいたMABの出鼻をくじくには十分なファイトだった。

 いい流れのまま、前半8分、ゴール前まで攻め込んだジャパンXVは密集近辺をしつこく突いてMABのディフェンスラインを内側に寄せ、空いた大外にSO伊藤龍之介がキックパスを通して右WTB植田和磨が先制トライ。MABのお株を奪うような理詰めのトライを奪ってみせた。その後同点に追いつかれ、前半30分過ぎまでは試合は膠着するが、この間もジャパンXVの密集戦でのファイトはMABに強力なプレッシャーをかけ続けた。

 31分、33分にはそのプレッシャーに抗し続けられなくなったMABキャプテンのベイリン・サリヴァン、No.8のトリアン・バーンズが相次いでシンビン宣告され、2名分の数的優位を得た。そしてこの日のジャパンXVはこのチャンスをしっかり得点に結びつける強かさを見せた。この時間帯に3トライ1コンバージョンを奪い、24-7にまで点差を広げたのだ。

 こうした粘り、そして相手の隙を見逃さずに確実に得点に結びつける勝負強さは、従来の日本代表ならびにジャパンXVにはなかったことで、地力の底上げが確実になされているという手応えを感じさせた。

 しかし、後半の中盤以降は防戦一方に追い込まれた。試合序盤から奮戦を続けてきた、特にFWのプレーヤーたちの動きが鈍り、接点で押し込まれ、ディフェンスラインの綻びが目立つようになり、そこに的確に走り込まれるシーンが増えた。そして後半23分過ぎからは4トライ2ゴールを奪われ、31-38のスコアで試合終了。点数差的には接戦と言って良い結果だが、最後は現時点での実力差を見せつけられる形となった。

 フィットネスの差が最大の要因ではあるが、一度劣勢に傾いた流れを食い止める、あるいは一気に攻勢に変えられるようなプレーが見られなかったのも気がかりだ。例えば相手を仰向けにひっくり返すようなビッグタックルやスクラムで相手のボールを奪う「タイトヘッド」といったプレーが典型なのだが、MABはそうしたモメンタムを生じさせない展開に持っていく術に長けていた。この辺の勝負勘は、強敵との対戦を続けていく中で身につけていくしかない。

 今回の試合の光明は、代表レベルのチームには初の出場となった明治大学4年のSO伊藤龍之介の躍動だろう。2本のキックパスでトライを演出した他、自らのランで相手のディフェンスラインを切り裂き、チャンスを創出する場面を度々見せた。

 ただし、周りのプレーヤーが彼の奔放なプレーにフィットするにはまだ少し時間が必要なようだ。この試合終盤は、相手ディフェンスが伊藤に的を絞ってプレッシャーをかけてきたが、その狙いをそらしてラインブレイクを果たすようなシーンは残念ながら見られなかった。最後の最後でMABが奪ったトライは、ボールを持った伊藤にドンピシャのタックルを見舞われ、こぼれたボールを拾われて奪われたもの。来年のジャパンの切り札へと化ける可能性のある選手だけに、今後、日本代表での継続した修練を望みたいところだ。

 黒星発進となったサマーシリーズだが、次戦以降も格上国との対戦が続く。一つでも多くの白星を得て、来年のW杯に向けて弾みをつけたい。

[文:江良与一]