「1日3食は慢性的な食べすぎ」78歳医師が30年間実践する“空腹健康法”、おすすめの『朝食断食メソッド』も
「健康のために3食しっかり食べる」は本当に正しいのか─。そう疑問を投げかけるのは、医学博士の石原結實先生。現代人の不調の背景には“慢性的な食べすぎ”があると語る。石原先生が長寿の決め手と断言する“空腹の時間”が健康につながる理由とは?
慢性的な食べすぎが、さまざまな病気につながる?
健康のために欠かせない毎日の食事。1日3食しっかり食べるのを当たり前とし、それが健康維持の習慣と心得ている人は多いだろう。
「私の見解は真逆です。1日3食に代表される慢性的な食べすぎが、さまざまな病気につながると考えています」
こう語るのは、医学博士の石原結實先生。飽食の時代とされる現代だが、終戦から昭和30年代ごろまでの昔は多くの人が食糧難にあえぎ、1日3食がままならない生活を送っていた。
「当時と今を比較してみましょう。昭和20年代の糖尿病患者は非常に少数派でしたが、現在は予備軍を合わせて1800万人にも上ります(2024年、厚生労働省調査)。糖尿病だけに限りません。この間、がん、心臓病、脳卒中、うつなどの患者も急増しており、食に恵まれている現代より空腹が珍しくなかった時代のほうが病に悩む人は圧倒的に少なかったのです」(石原先生、以下同)
石原先生は空腹の時間をあえてつくったほうがいいと指摘する。
「満腹時は消化・吸収のために血液が胃腸に集中しますが、空腹の時間を増やすことで、身体に不要な老廃物の排泄や細胞の修復に血液が使われるようになります。食べ物を消化・吸収する作業は、身体にとって重労働です。胃腸はこの重労働をこなすために血液をたくさん必要とします。
1日3食を欠かさず食べていると、消化がやっと終わっても次の食事がやってきて胃腸は休む暇もありません。結果、体内の血液の流れが悪くなり、使い切れなかった栄養が老廃物として血の中に蓄積されていく。そうした血液が汚れた状態を『お血(おけつ)』と言い、さまざまな病気を引き起こします」
東洋医学では「万病一元、血液の汚れから生ず」としている。すなわち、あらゆる病気の根本原因はお血にあると説いているという。
「食生活を見直して血液を浄化すれば、病気の予防・改善は可能となります。真の健康を手に入れる術として私が長年提唱しているのが、食べない時間=空腹の時間をつくるために、1日1食または2食とする、という方法です」
「腹八分目に医者いらず」ということわざがある。食べすぎは病気を招くという戒めだ。
「人間の身体は空腹のときに健康を保つよう、遺伝子が設計されています。空腹のときこそ、心身ともに軽くて気持ちいい状態になります」
空腹のときこそ心身ともに軽くて気持ちいい状態に
空腹には、次に挙げるような、さまざまな効果があるという。
・内臓が元気になる
・排泄を促進する
・免疫力がアップする
・体重が減って若返る
・メンタルが整う
・がんや認知症を予防する
「別名・長寿遺伝子と呼ばれる『サーチュイン遺伝子』が活性化し、長寿をもたらすというマサチューセッツ工科大学教授の研究成果も発表されています」
石原先生は空腹の時間を意識的につくる生活を30年間続けている。
「この間、風邪をひいたり、病気をしたりして寝込んだことは一度もありません。今年で78歳。健康診断の結果はすべて正常値を示し、今も現役医師として毎日バリバリ働いています」
では、空腹健康法を試したい場合、どのような手順を踏めばいいのか。
「朝食を抜く『朝断食』からスタートすることをおすすめします」
これには、「オートファジー」の働きが関係している。
「オートファジーは、人体が持つ細胞のリサイクル機能のこと。体内の細胞が古くなったタンパク質をアミノ酸に分解して再利用するプロセスを指します。オートファジーが機能すれば細胞は若々しい状態を保つのですが、常に作動しているわけではありません。
16時間の空腹時間を必要とし、朝食を抜くのがちょうどいい。仮に20時に夕食を済ませたら、16時間後は翌日の昼12時になるのです」
昼食は断食明けなので胃腸に負担をかけないメニューを選ぶ。とろろそばやワカメそば、ピザやうどんなどを推奨。夕食は腹八分目であれば何を食べてもいいそうだ。
「朝断食+1日2食のスタイルです。単に朝食を抜くだけだと頭がぼーっとするなど、午前中の心身の活動が低下するため、『ニンジンリンゴジュース』を飲んで糖分を補います。
また、午前中に空腹を感じるようであれば、『ショウガ紅茶』を飲んだり、チョコレートや黒糖をつまんだりするといいです。血糖値が上がり、空腹感は収まっていくでしょう」
ニンジンリンゴジュースとショウガ紅茶は、空腹健康法の主役となるもの。石原先生自身も40年以上毎日飲んでいる。
「ニンジンリンゴジュースはスイスの自然療法病院で学びました。多種のミネラルとビタミンを含み、現代人の食事の欠陥を補う万能食といえます。ショウガ紅茶は私が考案しました。ショウガには身体を温め、血流を促進する働きがあります。
漢方では種々の薬の成分として用いられ、現在も漢方薬の約7割に含まれているのです。紅茶にも優れた効能があります。漢方では色が濃いものほど身体を温める作用が強いとされ、お茶の中でも濃い色をしている紅茶はその代表格。抗酸化作用も備えています」
空腹効果はすぐに実感できる
前述のとおり、「夕食は何でもいい」としているが、できれば、中高年以降は和食とするのが好ましい。
「肉中心の洋食はタンパク質、脂肪が多く、高脂血症(脂質異常症)、高血糖(糖尿病)を引き起こす要因になります。魚、野菜を取り入れた和食中心の献立がおすすめです」
年を重ねるとともに、足腰は弱くなっていく。腰が痛い、膝が痛い、足がつるといった状態に見舞われることに。その対策となる食べ物が土の中で育つ野菜。
「漢方では土の中で育つ植物は、下半身の健康維持に役立つ食材と位置づけています。つまりゴボウやニンジンなどの根菜や、レンコン、玉ねぎ、にんにく、山芋などを食べると下半身の筋肉や臓器が元気になり、不調や老化の予防・改善に役立つということなのです」
根菜類は女性の大敵である冷え性の予防・改善にも効果的だという。
「身体の冷えは血液が汚れるお血の原因のひとつでもあります。先のニンジンリンゴジュースやショウガ紅茶、根菜類は身体を温めて冷えを解消し、不調や病気を遠ざけてくれるのです」
こうして1日2食に慣れたら、次に昼食を抜く1日1食へとステップアップする。ただし、無理をしてトライする必要はない。
「空腹の効果はすぐに実感できるでしょう。1日2食にして体調がいいなら、そのまま継続する。痩せないなど改善が見られない場合は、1日1食に挑戦すればいい。自分に合う少食スタイルを見つけることが大切です」
血液を浄化して健康体となるには、食生活を見直すだけでなく、運動の習慣も欠かせないと語る。石原先生は、20代のころからウエイトトレーニングに取り組み、現在も週2回のジム通いと、週4回10キロのスロージョギングを続けている。
「運動にはさまざまな健康効果があります。血流アップと血圧ダウンをはじめ、脳梗塞や心筋梗塞のリスクを下げたり、骨を強くしたり、認知症の予防、若返りホルモンの分泌など、いいことずくめです。そのおかげで先日出席した同窓会では、私が一番元気かつ若々しかった(笑)」
健康効果を高めるには下半身を中心に鍛えること。身体全体の筋肉のうち、多くは下半身に集中しているからだ。
「ですから、下半身7割、上半身3割の配分で鍛えるのが効果的といえます」
下半身の運動の基本はウォーキング。散歩を日課とすればいい。加えて、スクワットなど下半身を鍛えるトレーニングを行う。
「ひざが痛かったり、疲れていたりするときは、椅子に座りながらの“びんぼうゆすり”がおすすめです。ふくらはぎの筋肉を小刻みに動かすことで、下半身の滞った血流を解消。3分で20分の歩行と同等の効果があるとされています」
朝食断食メソッド
上半身の運動は、立った姿勢のまま壁を使って行う“壁腕立て伏せ”が手軽だ。筋力が弱い人でも負担なくできる。
「力がついてきたら両足を壁から離していく。その距離が広がるほど、負荷が重くなります」
百聞は一見にしかず。 朝断食+運動で一生健康、元気長寿を目指したい。
「78歳にして、病気とも薬とも無縁な私の身体がその証明です。自分の体調と相談しながら、無理のない範囲で取り入れてみてください」
石原式朝断食のメソッド
朝
→ニンジンリンゴジュースを1杯、ゆっくりと噛むように飲む。
→身体が冷えると感じる場合は、ショウガ紅茶を1〜2杯飲む。
昼
→とろろそば、ワカメそば、ざるそば、またはピザやパスタ、具だくさんのうどん、少なめの和食など。
→断食明けの最初の固形食なので、胃腸に負担をかけないメニューにする。
→昼食後に眠くならない、だるくならない量にする。
夜
→腹八分目なら何を食べてもOK(できれば和食がおすすめ)。
→アルコールも適量であれば何を飲んでも問題なし。
※体調には個人差があるため、自己判断で極端な少食や断食を行う前に、かかりつけの医師に相談することをおすすめします。
取材・文/百瀬康司
石原結實先生 医学博士、イシハラクリニック院長。1948年生まれ。長崎大学医学部、同大学院博士課程修了後、スイスのベンナー・クリニック、モスクワの断食病院、コーカサス地方の長寿村などにて自然療法や断食療法、長寿食の研究を行う。伊豆高原にて保養所「ヒポクラティック・サナトリウム」も運営。

