Webの全商品をライブで売る。新興コマースアプリが描くネット通販の未来

記事のポイント
ワットノットは企業価値110億ドル(約1兆6500億円)超に成長し、ライブショッピング市場で存在感を高めている。
ファッションが最大カテゴリーとなり、高級バッグなどのライブ販売が成長をけん引している。
ブランド出店の拡大とShopify連携を進め、ライブコマースの裾野を広げている。
ライブショッピングアプリのワットノット(Whatnot)が、目覚ましい成長期の真っただ中にある。2025年後半に2億2500万ドル(約337億5000万円)の資金調達ラウンドを実施したあと、同社の企業価値はいまや110億ドル(約1兆6500億円)超と評価されており、この1年間で2000万人の購入者がプラットフォームに加わった。
2026年4月、ワットノットはAppleのApp Storeでダウンロード数2位のショッピングアプリとなり、Amazonやイーベイ(ebay)を上回った。そして成長とともに、ワットノットはファッションの消費者、出品者、ブランドにとってますます魅力的な存在になりつつある。
ファッションが最大カテゴリーに台頭
ワットノットはコレクター向けアイテムやスポーツ選手のトレーディングカードを中心にスタートしたが、この1年でファッションがプラットフォーム上の最大カテゴリーとして台頭した。
ワットノットの最高プロダクト責任者(CPO)であるトム・ヴェリリ氏によれば、ファッションの売上はいまやプラットフォーム上のスポーツの売上より一桁大きいという。現在、プラットフォーム上では月間1200万件を超えるファッションの注文が成立していると同氏は語った。
ヴェリリ氏はGlossyに対し、ファッションはワットノットのビジネスモデルと自然にかみ合うと話した。同氏が例に挙げたのが、ファッショニカ(Fashionica)のような出品者だ。これはハンドバッグを扱うアカウントで、過去2年間にプラットフォーム上で1万点を超える高級バッグを販売してきた。
「限定版の在庫が数多くある」とヴェリリ氏は述べた。
「フランスや日本から高級バッグのようなものを買うなら、その商品を本当に熟知していて、現代のシャネルとヴィンテージのシャネルの違いを見せてくれる人に対応してほしいと思うはずだ」。
ブランドの直接販売が加速
ワットノットのプラットフォームにおけるもうひとつの注目すべき進化が、直接販売するブランドの流入だ。
ファッションの売上の大半はいまだに独立系出品者によるヴィンテージや再販だが、ファッションブランドのドールズキル(Dolls Kill)、時計ブランドのインヴィクタ(Invicta)、ゴルフライフスタイルブランドのキャロウェイ(Callaway)はいずれもプラットフォーム上で活発に活動するようになり、それぞれ数万人のフォロワーを集めている。
6月16日の午後、ドールズキルのライブ配信は数百人の視聴者を呼び込み、同ブランドのハロウィーンショップのコスチュームを数十点販売した。視聴者は司会のエルとチャットを交わし、丈の短いF1のジャケットに見とれ、互いに購入を後押しし合い、もっと多様なサイズ展開を求めた。
ワットノットは、プラットフォームに参加するブランドに向けて、いくつもの取り組みで対応してきた。たとえば、Shopifyと公式に連携し、ブランドが商品APIをつなぐだけで販売をはじめられるようにしたことだ。また、出品者がメタデータを登録することで商品情報をすばやく埋められるツールも開発した。
独立系の出品者は、色やブランドといった具体的な商品データ用の項目を空欄のまま、あるいはデフォルト値のままにしておくことが多い。どのみちライブ配信で商品の詳細を説明するからだ。
しかしブランドや新規顧客にとっては、そのデータが欠かせない。ワットノットで販売される商品の90%は一般的な商品情報しか持たないが、ワットノットでの顧客の初回購入の90%は、詳細な商品情報を備えた商品なのだ。
「ワットノットでうまくいっているブランドは、創業者自身がライブ配信に出て自分のブランドをアピールする、創業者主導型のブランドである傾向がある」とヴェリリ氏は語った。
「当社の最大級の老舗出品者のなかには、数億ドル(約数百億円)規模の売上を上げているところもある。だからこそ、当社はShopifyのような(パートナーと)連携をはじめたのだ」。
ライブショッピング市場の広がり
鑑定プラットフォームのエントルピー(Entrupy)で最高収益責任者(CRO)を務めるジェイク・スチュワート氏は、購入者とブランドや出品者との直接的な関係こそが、ワットノットをこれほど魅力的なプラットフォームにしているのだと述べた。
エントルピーはワットノットの公式鑑定パートナーであり、ワットノットが高級ハンドバッグのようなカテゴリーへとさらに拡大するにつれ、両社の関係も広がってきた。エントルピーは、TikTok Shopなど、ほかのライブショッピングプラットフォームとも提携している。
「どんなライブショッピングでも、出品者からは顧客のうちどれだけがリピーターかという話を聞く」とスチュワート氏は語り、ライブショッピングの顧客の再訪率(リピート率)は標準的なeコマースの最大10倍に達することもあると付け加えた。
「それこそが、ブランドがこの仕組みに惹かれる理由だ。ロイヤルティが欠かせないなか、ライブショッピングでは非常に高いロイヤルティ率(ブランドへの信頼度)が見られている」。
ライブショッピングへの関心は、ほかのプラットフォームにも広がっている。ワットノットの競合であるティルト(Tilt)は6月、ヴィンテッド・ベンチャーズ(Vinted Ventures)からの出資を受け、2600万ドル(約39億円)の資金調達ラウンドを完了したばかりだ。
ティルトでは、購入者が1日あたり1時間超をアプリ上で費やしていると報じられている。調査会社のイーマーケター(eMarketer)によると、米国のライブショッピングの売上は2026年すでに500億ドル(約7兆5000億円)に達している。
「基本的に、インターネット上で売られているものはすべて、ライブで売ることができるし、売られるべきだと当社は考えている」とヴェリリ氏は述べた。
「当社は、あらゆる出品者のニーズに応えること、APIを開発すること、そしてワットノットでの販売の複雑さを下げることに注力している」。
[原文:Fashion is now the largest category on Whatnot as brands flock to the platform]
Danny Parisi(翻訳、編集:藏西隆介)
