消費減税1%案 社会保障の安定に禍根残すな
政府と与野党が一体で取り組む「社会保障国民会議」と銘打ったにしては、看板倒れの展開だと言わざるを得ない。
短期的な物価高対策として消費税の減税を断行すれば、社会保障制度の安定を揺るがすだけだ。
国民会議は先週から、食料品を対象にした2年間限定の消費減税について、本格的な議論を進めている。政府側は、税率を0%とするとレジシステムの改修に1年程度かかるが、1%ならば半年以内に対応できる、と説明した。
2027年4月から減税を実施することを想定して、政府内では1%案が有力になっている。高市首相が月内にも最終判断する。
だが、経済の活力と社会の安心感を確保するために、社会保障と税を一体で改革する、という出発点を忘れてはいないか。
年金、医療、介護などの社会保障給付費は26年度予算で、144兆円に上り、国内総生産(GDP)の2割を占めるまでに膨らんでいる。その6割は現役世代が負担する社会保険料で、残りを税や国債などの公費で賄っている。
国と地方で約34兆円に上る消費税収は、社会保障を支える基幹財源だ。増大する給付費は消費増税で賄うのが筋だが、増税への抵抗感に配慮して主に社会保険料の引き上げで対応してきた。
このため負担が現役世代に集中して閉塞(へいそく)感が強まり、少子化も深刻化するという問題意識は、広く国民に共有されている。
だからこそ政府は、中低所得者を支援する給付付き税額控除の検討を打ち出したはずである。出来るだけ早期に導入すべきだ。
消費税は高齢者も含め幅広く国民全体が支払うため、現役世代の負担を軽減できる。社会保障を支え合う精神を育む上で適切だ。
食料品の税率をゼロにすれば年5兆円、1%でも4・3兆円の税収減になる。2年間限定と言うが、税率を戻す際は国民にとって大増税に映る。恒久化すれば社会保障制度の安定に禍根を残す。
その上、事業者にはシステム改修のコストがかかる。
国の財政運営は難しさが増している。厳しい安全保障環境を踏まえて、防衛費の増加は避けられない。高市政権の肝いりである成長分野への投資も欠かせまい。
減税の財源に国債を実質的に充てることになれば、金融市場が不安を抱き、金利の上昇や円安と物価高の連鎖が止まらない。安心感を与えるべき社会保障制度の改革が不安を招くなら本末転倒だ。
