「免許返納後に」「実技検査が不合格で」高齢者の無免許運転・裁判傍聴・・・氷山の一角?
じつは日本は世界に冠たる超高齢社会だ。高齢者の事件は多い。万引き、モンスター隣人、老老介護の果ての殺人など、いろいろ裁判の法廷へ出てくる。最近、80歳代の「道路交通法違反」(無免許運転)を2件傍聴した。2件とも「おいおい~!」な事件だった。しかし報道はない。私めがレポートしましょう。
■昭和13年生まれ/86歳男性/免許を返納したのに
被告人は作業服っぽいのを着て、スキンヘッドのお年寄りだ。中学を卒業して漁師に。「船舶安全法違反」で非行歴あり。70年ほど昔のことまで検察はしっかり記録しているのだ。
漁師から会社員になり、現在は無職。交通違反・事故の前科はなし。85歳のとき運転免許を自主返納した。そこまではよかった。
ところが間もなく、また運転し始めた。ある朝、普通貨物自動車(軽トラかな)を運転して墓参りへ。右折レーンを直進したのをパトカーに現認され無免許が発覚…。長男が情状証人として出廷した。
検察官「お父さん、運転をやめない、どうしてですか?」
長男 「注意しても聞く人じゃない。いつもケンカになるだけで…」
裁判官「そうすると、ケンカが面倒くさいから放置したと?」
長男 「(ぶっきらぼうに)そうですね」
今後はキーを厳重に管理し、二度と運転させないという。続いて被告人質問が始まった。「二度と運転しない」、「もう運転したくない」と何度も言わせ、弁護人は5分間で、検察官は2分間で終えた。求刑は懲役5月。直ちに判決が言い渡された。 ※この「月」は「げつ」と読む。
裁判官「主文。被告人を懲役5月に処する。この裁判が確定した日から2年間、その刑の執行を猶予する」
懲役5月は、シンプルな無免許運転が公判請求(正式な裁判への起訴)をされた場合の相場の刑だ。猶予中に新たに懲役刑を受けるとかなければ、懲役5月は効力を失う。刑務所へは行かずに済む。猶予期間は1~5年。3年が最も多い。2年は軽い判決といえる。
家族からうるさく言われ、免許を返納。しかし運転を続ける、そういう高齢者がけっこういるのでは、と思えた。
■昭和11年生まれ/88歳女性/免許更新ができず
こっちの被告人は、お洒落で小柄なお婆ちゃんだった。前科なし。運転免許は「更新できず失効」し、無免許になったという。どういうこと?
75歳以上で、信号無視や携帯電話使用など事故につながりやすいとされる一定の違反歴があると、免許更新の前に「運転技能検査」が義務づけられる。100点満点のところ70点(二種免許は80点)で合格だ。不合格だと免許更新ができない。
弁護人「更新…(運転技能検査で)落ちたんですね?」
被告人「2回受け、落ちました。1回目は0点、2回目は40点…」
技能にだいぶ問題があったようだ。検査の制度が機能したといえる。ところが間もなく、週に3回ほど無免許運転をするようになった。
弁護人「運転しないで移動することは、考えなかったんですか?」
被告人「買い物は、家から、歩って5分ぐらいのスーパー…そこを、よく、運転しちゃったんです。荷物が重くて…」
無免許で買い物に行ったスーパーの、その駐車場で大変なことが起こった。
被告人「バックで、駐車しようと、したら、スーパーの壁に、ちょっとぶつかって、前へ、あのう、発進しちゃったんです」
他車にぶつかっても止まらず、先のマンションの外壁に激突した。
