記事のポイント
ブランドは不透明な市場環境に対応するため、まずマーケティング費を削減している。
インフルエンサーやAIなどROIが見込める分野への投資を強化している。
卸売やプラットフォーム依存が進むなか、ブランドは需要創出を外部に委ね始めている。


ファッションや美容業界のブランドは支出を削減する方法を探している。だが何を削るかを選択する際に、人件費や運営費、在庫経費が対象となる可能性は低い。6月初旬、米Glossyは、ファッションおよび美容ブランドの従業員22人(ほとんどがディレクターレベル以上)を対象に、各社の支出配分についての調査を行った。その結果によると、ブランドが支出を減らしている項目の第1位はマーケティングだった。

「あなたの会社は過去6カ月でどのコストを削減したか?」という質問には、回答者の68%が「マーケティング」と答え、選択肢のなかでもっとも多い回答となった。次に多かったのは「給与」で32%、その次が「在庫」、その後に「テクノロジー」と「実店舗」が同率で続き、最後に「イノベーション」となっている。特筆すべきは、回答者の23%が、過去6カ月間にコストを削減していないと答えたことだ。

体験型マーケティングエージェンシーのCNCエージェンシー(CNC Agency)の創業者でCEOのライアン・グリック氏は、ブランドが支出を削減する最大の要因は、不透明感が広がっていることだと述べた。CNCエージェンシーは、プラダ(Prada)やエルメス(Hermés)などの大手ファッションブランドと提携しており、派手な対面イベントを専門としている。

「インフレや政治情勢、消費者行動の変化、予測不可能な小売環境の狭間で、ブランドはマージンを守るために予算を引き締めている」とグリック氏は言う。「そのうえ、多くの企業はCovid後の過剰雇用や過剰生産からいまだ回復しておらず、現在、よりスリムな経営を迫られている」。

グリック氏によると、マーケティング支出のリターンは、たとえば売上に直接関係する店舗や在庫への投資などにくらべて測定しにくい場合が多く、これもマーケティング削減の理由のひとつだという。

「個人的には必ずしも同意しないが、マーケティングは、特にブランドがその支出に関して強力なパフォーマンスモデルやアトリビューションモデルを構築していない場合、最初に削減されることが多い」と、グリック氏は述べた。

ブランドがインフルエンサーとAIに注力する理由



製品データフィード企業のプロダクツアップ(Productsup)のマネージドサービス担当グローバルディレクターであるケイティ・モロ氏によると、卸売パートナーにマーケティングを依頼するブランドが増えているという。プロダクツアップは、セフォラ(Sephora)、プーマ(Puma)、ロレアル(L’Oréal)といった大手ブランドや小売業者と提携している。

「マーケットプレイスへの依存により、多くのファッションブランドは卸売やマーケットプレイス戦略に傾いており、そこではプラットフォームが需要創出の多くを処理している」とモロ氏は述べた。「これによってブランドは、トップオブファネルマーケティングに直接投資する必要がなくなる」。

では、ブランドは何に対する投資を増やしているのだろうか。Glossyの調査によると、ブランドは一般的な広告費を削減すると同時に、インフルエンサーマーケティングやアフィリエイトプログラムに投資していることがわかった。回答者の64%が過去6カ月でインフルエンサーへの投資を増やしたと答え、32%がアフィリエイトマーケティングへの支出を増やしたと回答している。55%がAI機能に投資したと答えているが、これにはマーケティングやそのほかのAIイニシアチブが含まれる可能性がある。

インフルエンサーマーケティングソフトウェア企業グリン(Grin)のインフルエンサー専門家、コートニー・フィッシャー氏は、インフルエンサーへの投資は、ブランドが適切な方法で行うのであれば賢明な行動になり得るだろうと述べた。

「インフルエンサーを起用すれば、コストのかかる制作の必要性を減らせる」とフィッシャー氏は言う。「ブランドは、クリエイターをアフィリエイトプログラムと組み合わせたり、そのコンテンツを有料広告やeコマース、そのほかの主要チャネルで再利用することで、CPMが下がり、収益が増加するのを目の当たりにしている。だがそれは一過性のものではなく、真の戦略として扱う必要がある。クリエイターに適切な説明を行い、メディアのように測定すれば、ROIは明確になる」。

[原文:Glossy Research: Brands are cutting back on ad spending and putting money into influencers and affiliates]

DANNY PARISI(翻訳:Maya Kishida、編集:坂本凪沙)