by Tony Webster

AmazonのクラウドコンピューティングサービスであるAmazon Web Services(AWS)が、企業や開発者向けにジェネレーティブAIを利用したアプリを開発するためのクラウドサービス「Amazon Bedrock」を発表しました。同時に、Amazon独自の生成AI用基礎モデル(Fundamental Model)である「Amazon Titan FM」の存在も明らかにしました。

Announcing New Tools for Building with Generative AI on AWS | AWS Machine Learning Blog

https://aws.amazon.com/jp/blogs/machine-learning/announcing-new-tools-for-building-with-generative-ai-on-aws/



Foundation Model API Service - Amazon Bedrock - AWS

https://aws.amazon.com/jp/bedrock/



Foundation Model - Amazon Titan - AWS

https://aws.amazon.com/jp/bedrock/titan/



AWS launches Bedrock generative AI service, Titan LLMs

https://www.cnbc.com/2023/04/13/aws-launches-bedrock-generative-ai-service-titan-llms.html

AWSによるとBedrockは、画像生成AI「Stable Diffusion」を開発するStability AIや対話型AI「Claude」を開発するAnthropic、文章生成AI「Wordtune Spices」を開発するAI21 Labs、そしてAmazonが抱える基礎モデルにAPI経由でアクセスできるサービスだとのこと。各企業が提供する最新の基礎モデルにアクセスできるようになることで、テキスト生成AIやチャットボット、検索システム、テキスト要約、画像生成といったAIサービスが開発できるというわけです。



AWSは「Bedrockのサーバーレスエクスペリエンスにより、インフラストラクチャを管理することなくすぐに始めることができます。また、基礎モデルを自分の好きなようにカスタマイズし、異なるモデルをテストするExperimentsや基礎モデルをスケールで管理するPipelinesなどのAmazon SageMakerとの統合など、使い慣れたAWSツールや機能を使ってアプリケーションに簡単に統合してデプロイできます」と述べています。

すでにBedrockは限定プレビューの形で提供されており、AI企業のCodaなど一部の顧客が先行で利用しているとのこと。Codaの共同創設者兼CEOであるShishir Mehrotra氏は「AWSの長年の顧客として、BedrockがCodaのAIに品質、スケーラビリティ、およびパフォーマンスをもたらすことができることに興奮しています。すでに私たちのデータはすべてAWS上にあるため、データを保護するために必要なセキュリティとプライバシーをすべて組み込んだ状態で、Bedrockによって生成型AIを迅速に取り入れることができます。Uberやニューヨークタイムズ、Squareといった大規模チームを含む数万以上のチームがCoda上で稼働しているため、信頼性とスケーラビリティは本当に重要です」とコメントしています。

さらに、このBedrockで利用できる基礎モデルの1つとして、Amazonは「Titan FM」を発表しました。記事作成時点でTitan FMには、要約・テキスト生成・情報抽出などといったタスクに適した生成型大規模言語モデルの「Titan Text」と、テキスト入力を数値表現に変換する埋め込み型大規模言語モデルの「Titan Embeddings」の2つが用意されるそうです。すでにAmazon.comの製品検索機能にこのTitan Embeddingsが利用されていることをAWSは明らかにしました。



Amazonのアンディ・ジャシーCEOは経済メディアのCNBCに対して、「ほとんどの企業は大規模言語モデルを使いたいと考えていますが、本当に優れたモデルはトレーニングに何千億円もの費用と何年もの時間を費やします。そのため、ほとんどの企業は基礎モデルを開発しようとはしません。つまり、企業はすでに構築されている優れた基礎モデルをもとに、各自の目的に合わせてカスタマイズしながらAIの開発を進められるようにしたいと考えているわけです。その望みをかなえるのがBedrockです」と語っています。

また、Amazonは独自開発の第2世代機械学習チップ「AWS Trainium」を搭載したAmazon EC2 Trn1n インスタンス、さらにジェネレーティブAI向けにパフォーマンスの優れたAWS Inferentia2アクセラレーターを搭載したAmazon EC2 Inf2 インスタンスの一般提供を発表。さらに、ジェネレーティブAIをベースにしたコーディング支援サービス「Amazon CodeWhisperer」を無料で一般に提供することも発表されました。Amazon CodeWhispererはPython・Java・JavaScript・TypeScript・C#・Go・Kotlin・Rust・PHP・SQLに対応しており、VS Code・IntelliJ IDEA・AWS Cloud9などのIDE(統合開発環境)からAWSツールキットを介してアクセス可能になるとのこと。

Amazonは「Amazon CodeWhispererのように強力なアプリケーションを構築することは、開発者とすべてのお客様にとって変革的なことです。私たちは皆さまがAWSでジェネレーティブAIを用いて構築するものにワクワクしています。私たちの使命は、あらゆるスキルレベルの開発者やあらゆる規模の企業が、ジェネレーティブAIを使って革新することを可能にすることです。これは機械学習が起こす次の波によって皆さんの可能性を引き出すと私たちが信じるものの始まりに過ぎないのです」とコメントしています。