視線提示できる目を付与した自動運転車の実験車両。(画像:東京大学報道発表資料より)

写真拡大

 東京大学は20日、自動運転車に視覚的に確認できる「目」をつけて視線を示すことで、交通事故のリスクを減らせる可能性があることを確認したと発表した。歩行者などの道路利用者が、自動運転車の目が示す視線を確認することで、道路利用者による危険を避けた適切な判断が容易になるという。

【こちらも】自動運転/ADAS、24年にレベル2が主流に レベル3は高級車中心に市場形成

■なぜ自動運転車に「目」が必要なのか?

 2020年4月から改正道路交通法が施行され、レベル3の自動運転車が公道を走れるようになった。レベル3の自動運転車では、決められた条件下でシステムが全ての運転操作をおこなうが、システムから要請があった場合には、ドライバーはいつでも自ら運転しなければならない。そのためレベル3の自動運転車は条件付自動運転車と呼ばれる。

 今後、自動運転車はますます普及していくと考えられるが、解決しなければならない課題も多い。

 自動運転車では、AIなどシステムが運転する。そのため歩行者などの道路利用者が、運転者とのアイコンタクトなどによって、運転者の意図を察知し、危険を避けた適切な判断をすることが難しいとされる。

 このような課題を解決するため、これまでにも自動車メーカーや研究者から自動運転車に「目」をつけるというアイデアは示されてはきたが、これに対して、実際歩行者がどのような反応を示すかについては、明らかになっていなかった。

■自動運転車の目に対する歩行者の反応を測定

 研究グループは、目をつけた車両と通常の車両について、歩行者が道路を横断しようとしているときに、その目の前において、停止または通過しようとする映像を歩行者の目線で撮影。これをランダムに選んだ実験参加者(18歳〜49歳の男女、各9名、合計18名)にバーチャルリアリティ環境下で視聴してもらい、道路を渡るかどうかを判断してもらった。

 その結果、視線の提示によって、危険な道路の横断を低減できる可能性があること、また、歩行者の安全感、危険感を高められることが確認された。

 おもしろいのは、その結果に男女差がみられたことだ。男性では、危険な道路の横断が低減される可能性(49%->19%)が示され、女性では、安全な状況での無駄な停止が低減される可能性(72%->34%)が示された。

 なおこの実験では、目をつけた車両も通常の車両も手動で運転され、視線の提示も手動で制御された。

 研究グループでは、今回の研究成果について、自動運転車と道路利用者との間の円滑なコミュニケーションについて1つの可能性を示し、ますます自動運転車が普及していくと考えられる状況下で、事故のない安全な車社会の実現に貢献するものであるとしている。

 なおこの研究成果は、9月17日から20日まで韓国ソウルで開催された国際会議「ACM AutomotiveUI 2022」で発表された。