シュツットガルトMF遠藤航【写真:Getty Images】

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【ドイツ発コラム】シュツットガルトで奮闘するMF遠藤とDF伊藤へ注目

 ドイツ南西部のフランクフルトから北東部のベルリンまではドイツ鉄道(ドイチェ・バーン。

 以下DB)のICEで約4時間半の道のり。新型コロナウイルス感染症による制限措置で車内はマスク着用が義務付けられているなかで、緩和ムードが広がるドイツ国内では徐々に乗車率が上がっていて、この日の車内も7割程度の座席が埋まっていた。

 ベルリン中央駅に着いてプラットホームに降り立つと、青と黄色で配色されたウクライナ国旗が記された目印が様々な場所に貼られている。ウクライナとドイツは間にポーランドがあるだけの隣国であり、ロシアからの侵攻を受けて避難を続けているウクライナ国民に向けて、ドイツ政府、およびDBがウクライナとポーランドの国境沿いから直通列車を運行して避難者の方々を受け入れている。

 プラットホームから駅舎のコンコースへ移動すると、多くの避難者の方々が一団となっている姿が見えた。ドイツ警察、そしてドイツ人のボランティアの方々が整然と避難者の方々を誘導していて、緊急事態にもかかわらず整然とした雰囲気が漂っている。かつて凄惨な戦火に見舞われたベルリンは今、連帯の心に包まれ、様々な方々が出来得る限りの行為で被害に遭われた方々のサポートを行っている。

 ウニオン・ベルリンの本拠地、「シュタディオン・アン・デア・アルテン・フェルステライ」へ向かう。ウニオンのホームは旧東ベルリンのケーペニックという町にあり、地理的にはベルリン市内南東部に位置している。石畳の脇に並ぶ古めかしい建物はいかにも旧東ドイツの面影を残していて、ベルリン中心部から少し離れたこの町の風情はどこかのどかでもある。「シュタディオン・アン・デア・アルテン・フェルステライ」も静謐(せいひつ)な流れが続く小川の岸辺に建っていて、遠巻きに見る限りは田舎のショッピングセンターのようにこじんまりと佇んでいる。

 しかし、それもブンデスリーガの開催日になると一変する。白と赤のクラブカラーを纏ったサポーターの一団がビール瓶を片手に大声でがなり立てて小川の脇を行進する様は一種異様だが、それでも比較的安全な環境にあるドイツ・ブンデスリーガでは子供や女性の姿も目立っていて、お祭りのような高揚感が漂っている。

 スタジアムの中に入ると、このスタジアムの異質さを実感する。メインスタンド以外の三方、両ゴール裏とバックスタンドのすべてが立ち見席というこのスタジアムのサポーターは、試合開始30分以上前から自らの立ち位置を定めるためにスタンドに集結してチャントやコールを奏でている。

 お馴染みのスタジアムDJが選手のファーストネームをコールすると、大概の他クラブサポーターがラストネームを唱和するのに対し、ウニオンのサポーターだけはすべての選手に「フッスバル・ゴッド(サッカーの神様)」という呼称を冠し、その信頼の深さを示す。このクラブに所属するMF原口元気、そしてMF遠藤渓太も例外ではない。2人は心強いサポーターたちの寵愛を受けながら、常に勝利に邁進する環境を与えられている。

 ただ、残念ながらシュツットガルト戦(第26節/1-1)では遠藤が膝の怪我、そして原口は新型コロナウイルスのPCR検査で陽性反応を示して欠場が決まっていた。したがって自身がフォーカスしたのはホームチームではなく、MF遠藤航とDF伊藤洋輝が所属するアウェーのシュツットガルトになった。

守備タスクだけでなくゴールに関わる仕事も求められている遠藤

 伊藤は着実にチーム内での立場を確立しつつある。この日はDFヴァルデマール・アントンと組んで4バックのセンターバックに入り、攻撃の起点、そして守備では最終防御者としての任を託されてフル出場を果たした。

 今試合で伊藤が1回だけ肝を冷やしたのはウニオンのエースFWタイウォ・アウォニイに抜け出されてシュートを許し、ボールがゴールネットに収まったシーンだろう。これはオフサイドの判定で辛うじて難を逃れたが、クイックネスに優れるアウォニイへの対応を今一度再認識する必要性が生じた場面だった。

 それでも大半の時間帯では強烈なフィジカルワークを敢行するウニオン攻撃陣に堂々と立ち向かってPKによる1失点のみに抑えた。特に際立ったのは頻繁に手を叩いて味方を鼓舞していた所作だ。2021年7月にジュビロ磐田からのローンでシュツットガルトに加入した伊藤は今季、ブンデスリーガ22試合出場、DFBポカール2試合出場と純然たる主力DFとして貢献している。

 ローン期間は今年6月末までだが、このままいけば、シュツットガルトは約300万ユーロ(約4億円)の移籍金を磐田に支払って22歳の若武者を正式に手中に収めるだろう。

 一方、チームキャプテンの遠藤はペレグリーノ・マテラッツォ監督から新たな役割を与えられつつある。4-3-2-1システムの「2」にあたるインサイドハーフ、本人曰く「8番のポジション」で攻守両面に渡る貢献を求められているのだ。

 遠藤はJリーグの湘南ベルマーレ、浦和レッズ、そして欧州での最初の地となったベルギーのシント=トロイデンでは主にストッパーやボランチで起用されてきた。そして2019-20シーズンにシュツットガルトに加入してからもボランチ、もしくはアンカーでその名声を高めてきて、昨季のブンデスリーガでリーグナンバーワンのデュエル勝利数を記録した彼は、ドイツでも有数の中盤の制圧者として認知された。

 一方で、今季のシュツットガルトは新型コロナウイルスの陽性反応者や怪我人の続出でベストメンバーを組めない時期が長く続き、その結果、リーグで勝点を積み上げられずに残留争いを強いられる状況が長く続いていた。

 そこでマテラッツォ監督は191センチの体躯を誇るDFアタカン・カラゾールをアンカーに固定して中盤中央のディフェンス力を維持しつつ、遠藤を1つ前方のポジションに据えることで広範囲におよぶ局面強度の維持を目指した。また遠藤には守備タスクだけでなくゴールに関わる仕事も求め、キャプテンは指揮官の意思をしっかり汲み取って重要な職務を全うする覚悟を決めている。

2メートル近い選手を相手にしても物怖じしない凄み

 ブンデスリーガの中では決して大柄ではない遠藤が相手ゴール前での肉弾戦で力を誇示する姿を見るにつけ、日本人選手がフィジカル勝負に弱いという風潮に疑問を抱く。少なくとも遠藤は、2メートル近い選手を相手にしても物怖じしないし、逆にその鋭い眼光と激烈なコンタクト力で相手を慄かせる。凛々しく胸を張り、飄々とした態度で相手を跳ね飛ばす彼の姿を見て、同じく異国の地で暮らす筆者はいつも勇気を与えられている。

 試合は終了間際に身長2メートル、体重90キロのシュツットガルトのエースFWサーシャ・カライジッチが値千金のボレーシュートを決めて同点に追いつき1-1のドローに終わった。普通ならば寸前で勝利を逃したホームサポーターが不満を募らせるようにも思うが、2部や3部での時代を長く過ごしたウニオンのサポーターはどんな時もクラブ、そして選手に寄り添い、その労をねぎらっていた。

 これもまた連帯の心。反戦の姿勢を高潔に打ち出すベルリンで、今日もまた、ヨーロッパの一国、ドイツでは、ブンデスリーガというかけがえのない娯楽が息づいている。(島崎英純/Hidezumi Shimazaki)