『ザ・ファブル 殺さない殺し屋』
岡田准一×平手友梨奈インタビュー

平手友梨奈

2019年6月に公開され大ヒットを記録した映画『ザ・ファブル』の新シリーズにあたる『ザ・ファブル 殺さない殺し屋』が、6月18日(金)より全国公開される。どんな相手も6秒以内で仕留める“伝説の殺し屋”でありながら、ボスの命令で“佐藤アキラ”の偽名で一年間誰も殺さずに生きる“ファブル”を演じた岡田准一と、過去のある事件をきっかけに心を閉ざした訳アリな車椅子のヒロイン・ヒナコを演じた平手友梨奈に、固い信頼関係が窺える共演エピソードやお互いの仕事を間近で見て感じたことなどを語ってもらった(取材・文:渡邊玲子/撮影:金山寛毅)

──度肝を抜く超絶アクションとユル〜いギャグのギャップが本シリーズの魅力の一つですが、どのような現場だったのでしょうか?

(C)2021「ザ・ファブル 殺さない殺し屋」製作委員会

岡田:『ザ・ファブル』は、今回で言えば「クレイジーなアクションの現場」と、堤真一さん扮する宇津帆と平手さん演じるヒナコが主軸となる「ストーリーラインの現場」、前作から続投のレギュラーメンバーがみんなで笑いを取りに行く「オクトパスを中心とした現場」の3つに分かれているような感じの作品で、現場によって全くテイストが違うんですよね。「宇津帆編」はファブルの変化を描くという意味でもすごく大事なエピソードで、ヒナコもファブルと絡む重要な役どころでもあるから「クライマックスのシーンを万全な体制で迎えるにはどうすればいいんだろう?」って、みんなで考えました。でも実際のところ僕らは現場で少し会ったくらいで、ずっと一緒だったわけでもなかったよね?

平手:公園と山の中での撮影が一番長かったような気がします。

岡田:そうだね。あと、冒頭のカーアクションのシーンの撮影で3日間ぐらい一緒だったんですが、そこで平手さんが僕に“弟子入り”をしてきたんですよ。

──“弟子入り”とは……!?

平手友梨奈

岡田:“弟子”兼“友だち”。

平手:はい(笑)。

岡田:平手さんは全然ご飯を食べないから「ご飯食べなさい!」ってナッツをあげたり……。

平手:アハハハ(笑)。

岡田:僕のことは、“岡っち”って呼んでて。

平手:そうです。“岡っち”!

──平手さんは車椅子に乗る役柄を演じる上で、どのような準備をされたのでしょうか?

(C)2021「ザ・ファブル 殺さない殺し屋」製作委員会

平手:クランクインするちょっと前に、車椅子の指導をしてくださる方がいらっしゃって、教えていただきました。公園でリハビリをするシーンがあるんですけど、「リアルさを出すためにはもっとこうした方がいいよ」ってアドバイスしてもらったり……。

──“岡っち”さんとの特に印象的なエピソードを挙げるとすると?

(C)2021「ザ・ファブル 殺さない殺し屋」製作委員会

平手:え〜!?なんだろうなぁ。あ……(と、岡田さんの方を見ながら)花粉症がひどいじゃないですか?

(一同笑い)

平手:岡っちがクランクアップした次の日に衣装部屋に行ったら……。

岡田:あ、そういえばあれどうなったの?

平手:ちゃんと渡したじゃないですか!

岡田:もらったっけ?

平手:いやいやいや(笑)。

──何の話ですか(笑)?

平手友梨奈

平手:いや。普段、岡っちが使ってる……。

岡田:鼻炎薬があるんですよ!

平手:衣裳部屋にその鼻炎薬が置いてあって、「あれ、もしかしてこれって……?」って思って連絡したら「預かっといて」って言われたから「あ、了解しました」って私が預かって。でも「俺が死ぬ前に渡して欲しい」って言われたので、後日ちゃんとお渡ししました。

岡田:あれがないと息できなくなっちゃうからね!

──“師匠”からの重要任務だったわけですね。

平手友梨奈

平手:そうなんです。(岡田さんを見ながら)そんなこともありました、よね?

岡田:そう(笑)。弟子だから!

──撮影を通じてお2人がとても良い関係を築かれたことが今のやりとりからも伝わってきました(笑)。お互いの仕事に対する向き合い方で刺激を受けたことがあれば教えて下さい。

(C)2021「ザ・ファブル 殺さない殺し屋」製作委員会

岡田:僕もアイドルから始まっているので、いま平手さんがどんなことを考えて、どんなことを思っているのかがなんとなくわかるというか……。もちろんすべて一緒だとは思わないですけど、僕自身も経験してきた部分があるので「なんだか似てるなぁ」と思うこともたくさんあるんですよね。でも僕よりずっとネガティブなので、なんとかしてそれを失くしたいと思って「謙虚とネガティブは全然違うからね!」って、ずっと言い続けているんです。平手さんはクオリティーを求めるクリエイターだと思うので、「人気者になりたい」とか「チヤホヤされたい」というよりも、良いものを作ることが彼女の救いになっていると思います。むしろそこしか求めていないというか、良いものにするためだったら何でもするようなタイプの人だと思うので、僕も応援もしたいですし「苦しいだろうなぁ……」とも思いますし。いろいろ抱えてて、爆発しないように抑えてる子なんですよ。

平手:いや、これ絶対馬鹿にしてますよね(笑)?

岡田:きっと1人でいろんなことを一生懸命抑えているんだと思うんですよ。僕としては彼女がちょっとでも笑ってくれたら、それでいいんですけどね。

(岡田さんの話を聞いて、顔を隠しながら恥ずかしそうに笑う平手さん)

──いま平手さんすごく笑ってますよ!

岡田:それならよかった!でもいつもこうやってすぐ顔を隠すんですよ。自信がないから。ほら、顔を上げて!

──岡田さんは何がきっかけで自信を持つことが出来たんですか?

岡田: 10代20代の頃は自信なんてなかったです。良いものが作りたいのであれば、苦しむしかないと思います。

──岡田さんご自身も、もがいたその先に何かを見つけられたということですか?

平手友梨奈

岡田:いかに視野を広げて周りの方の意図を理解できるかどうかが一番大事になってくると思いますね。求められていることに応えるのか、それともそれを理解したうえで、あえてそれを拒否するのかは別として、周りに対して常に敏感でいられるようにしないと、その立場から変わっていけないと思います。でも今の子たちの方が昔よりも選択肢が多い分、僕らの頃よりもっと大変なんだろうなとも思います。でも、平手さんが「才能がある」と言われている理由は、今回共演してみて分かった気がします。

平手:いやいや……。そんな思ってもいないようなことを言わなくても!

岡田:思ってるよ、大丈夫。ほら、すぐそうやってネガティブになる。疑わなくても大丈夫!

──弟子想いの素敵な師匠ですね!ちなみに今回岡田さんは俳優として主演するだけでなく、ファイトコレオグラファーとして全体のアクション作りにも参加されたそうですね。

(C)2021「ザ・ファブル 殺さない殺し屋」製作委員会

岡田:本来であれば『ザ・ファブル』という作品は無駄を極力なくしたプロの殺し屋の話なので、それにふさわしいアクションを作るべきだと思うんですよね。でも映画化に際して「エンタメ性の高いアクションにしたい」という監督やプロデューサーの方々の想いがあったので、それなら自分なりの構成とやり方で臨みたかったんです。本作の中には団地の外装工事の足場が倒れる中でアクションをする場面があるんですが、どれくらいの重量で傾けられるのか、果たしてその重量に耐えられるのか……。そもそもアクションは事前の準備をしっかりしてこそ構成が成り立つので、初期段階からアクションチームを含め綿密に打ち合わせを行いました。エンタメに振るのであれば、それこそクレイジーなくらいまでやりきらないと観る人を納得させられないと思いますし、僕自身、映画化する以上は原作者の方や原作ファンの方々にも喜んでいただきたいと思っているので、「カッコいい!」とか「すごい!」と思っていただけるように、全力でチャレンジしたつもりです。アクションチームがすごく優秀な方々なので、怪我なく無事に終えることが出来ました。

──平手さんは、岡田さんのスーパーアクションを目の当たりにしていかがでしたか?

(C)2021「ザ・ファブル 殺さない殺し屋」製作委員会

平手:ずっと刺激を受けていましたし、やっぱり真ん中に立つ人ならではの動きというか、いろんな意味ですごく勉強させていただきました。岡っちが入ると現場の空気が一気に引き締まる感じがして、すごく頼もしかったですね。私はカーアクションの部分を見せていただいたんですが、どちらかと言えば「わースゴイ!」とか「カッコイイ!」っていうよりも、「この状況をどうやって乗り越えるんだろう?」とか「他のアクション映画とファブルの動きは、どう違うんだろう?」って、一歩引いて冷静に見ていた自分がいたような気がしました。

──“師匠”の仕事ぶりが間近で見られて、とても貴重な経験をされましたね。

平手友梨奈

平手:クリエイターの皆さんと「もっとこうしようよ、ああしようよ」ってディスカッションするのが好きなので、ものづくりの現場を間近で見られたのはすごく嬉しかったです。

岡田:現場では常に時間との戦いというか、「この量を本当にこの日数で撮りきれるのか?」みたいな状況だったんですよね。場所を借りる都合上、予定通り撮り切らないとどんどん妥協していかざるを得なくなってしまうので万全の準備の上「よし!テストなしで本番行くぞーっ!」っていう感じで撮影することもありました。普通なら数カットしか撮れないところを、事前にちゃんと準備をしてすべてを把握したうえで、ぶっつけ本番で数十カット撮れるのが僕らの強みでもあると思うので、カメラマンの方にも少し無理を言って、一発で撮っていただいたりもしました。それでも急に雨が降ってきたり、日々現場でいろんな困難が起きるんです。そういう状況を平手さんは近くで見ていたから「どうやってこれを成立させて撮り切るんだろう?」って、興味が湧いたんじゃないかな。

──とても集中力が求められる現場だったんですね。

(C)2021「ザ・ファブル 殺さない殺し屋」製作委員会

岡田:このままのペースで行ったら予定通り撮りきれないから、「もっと巻いていこう!」と主演が言うのは普通の現場ならないと思いますし、端から見たら横暴に見えると思うんですよ。でも、その方が結果的には良かったりするわけで……。『ザ・ファブル』の場合はそれが言えるような環境作りが出来た現場ではあるんだろうなと思います。

──素敵なお話をありがとうございました!

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映画『ザ・ファブル 殺さない殺し屋』は6月18日(金)より全国公開

(C)2021「ザ・ファブル 殺さない殺し屋」製作委員会

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