80歳の母親に加えニートの娘の面倒まで見ることに。家族と自分を守るには、どうしたらいいのでしょうか(写真:digitalskillet/iStock)

今回、私たちファイナンシャル・プランナーの事務所に「お金の相談」に来たのは、62歳の独身女性C子さんです。長年勤務したアパレル系の会社に再雇用され元気に働いているのですが、50代前半くらいかと思うほど、若々しいとてもすてきな女性です。

そんなC子さんですが、大きな悩みがあるというのです。「24歳になるニートの娘と80歳になる浪費が激しい母親がいて、将来がとても不安です」とのことなので、早速お話を聞いてみることにしました。

夫が友人と浮気!44歳で離婚、シングルマザーに

C子さんは、30歳の時に勤務先の会社の同僚と結婚しました。その後、8年の歳月を経て、長女を出産。順風満帆の結婚生活でしたが、ある時、夫の浮気が発覚! なんとあろうことか、C子さんの友人と浮気をしていたのです。

当時娘さんが6歳だったこともあり、離婚は回避したかったそうですが、友人と浮気していたということがショックすぎて許せなかったそうです。そこで、娘さんを1人で育てることを決意しました。

以来、女手一つで娘さんを育ててきたC子さん。ひとり親というハンディキャップを感じさせないようにと、正社員でバリバリ働き年収は600万円台をキープ。娘さんがやりたいことなどは、ほとんどかなえてきたそうです。

娘さんは高校を卒業後、美容師になるべく専門学校に進学しました。しかし、卒業後は美容師として働いたというところまではよかったのですが、仕事がきつかったこともあり、22歳の時に退職してしまったのです。以来、無気力状態が続き、現在までニート生活を送っているとのことです。

C子さんは、ニートの娘さんの将来を案じ、頭を悩ませている様子でした。しかも冒頭のようにC子さんの悩みは、それだけではなかったのです。

80歳になるC子さんのお母さんは、C子さんによると「超がつくほどの浪費グセ」があるというのです。お母さんは、とても80歳には見えないほど元気で、毎日東京の都心部である銀座や表参道、恵比寿などの「おしゃれエリア」に出没し、ショッピングやランチ、エステざんまい。

当然ながら、お店の店員さんも上得意客には手厚い接客をするようで、お店に行くこと自体がお母さんの楽しみとなっているようでした。高額な商品でも勧められれば貯蓄を取り崩し、即座に購入。なんと、お母さんの貯蓄は「ほぼゼロ」に近い状態とのことでした。

そもそもC子さんのお母さんは、亡くなったC子さんのお父さんの「遺族年金」を受け取っており、その金額は毎月15万円程度。ご自身の年金と合わせると20万円程度はもらっています。毎月20万円の年金がもらえるのであれば、普通に生活していけそうなものですが、お母さんは、なんと毎月1円たりとも残さずにすべて使い、貯蓄を取り崩す生活だそうです。

くわえて、最近判明したのは、どうやら勧められるままにリボ払いを使って買い物をしていたのです。リボ払いは「毎月5万円」など一定額の支払いで済んだとしても、実際の金利は15%前後になるケースがほとんどです。お母さんの支払い残額は約300万円にも及び、支払いも滞っているとのことでした。

ニートの娘、浪費グセのある高齢の母親……。2人の生活の面倒を見ながら自分の老後の生活も考えなくてはならないというのでは、不安で不安で仕方がないのも、当然と言えます。

C子さんの老後資金は2200万円。一見安心そうだが…

ではC子さんはどうすればいいでしょうか。娘さんやお母さんを心配するのもよくわかります。しかし、まずは、C子さんのご自身の生活をきちんと考えることが大切でしょう。特にシングルとなれば、老後の生活費をきちんと確保しておくことが大切です。

幸いにしてC子さんは、若い頃から貯蓄に励み、1500万円の貯蓄がありました。また別途、若い頃に加入した貯蓄型の保険と個人年金保険があり、それぞれの65歳時点での満期金を合計すると700万円程度になります。つまり、合計で2200万円程度の資産はあるわけです。

一方で、C子さんが65歳になったときに支給される年金の金額は15万円程度の見込みです。C子さんはすでにマンションのローンを完済しています。そのため、現在の貯蓄金額から5万円を取り崩して生活費20万円で生活するとしても、C子さんの老後だけを考えるなら、ぜいたくをしなければ十分暮していけそうです。

現在も、C子さんの収入は手取りで20万円程度あります。通常なら65歳定年まであと3年間あるので、少しずつでも貯蓄や投資をしていけば、さらにお金は増やしていけるはず。ところが、前述のお母さんのリボ払いでの借金が判明し、どうやらその返済負担を担うはめになってしまったようです。

C子さんは、これまでにも浪費のことで何度もお母さんとけんかしてきたので疲れてしまい、ここ数年は、見て見ぬふりをしてきたそうです。しかし、それがあだとなり、知らぬ間にお母さんの借金が膨らんでいました。

そもそも80歳の高齢者にリボ払いをすすめる店員もどうかと思いますが、そのしわ寄せは、結局子どもであるC子さんに降りかかってきます。

筆者のところにご相談に見えたのをきっかけに、お母さんと借金について向き合って話してみたところ、300万円ではなく500万円の借金がありました。結局、C子さんは、泣く泣く自分の貯蓄から借金の全額を返済。その代わり、お母さんの年金はすべてC子さんが管理することになりました。65歳を目前に500万円を失ってしまったC子さん。残り3年間で「失った500万円」を貯蓄するには、毎月約14万円貯蓄する必要があります。そこで、お母さんには月に5万円だけお小遣いを渡すことにして、お母さんがよく行くお店に連絡して事情を話し、もし商品を買うということになった際には、C子さんに連絡をしてもらうようにしました。

血縁関係があっても「極力自立させる」ことが大切

これでどうにかお母さんについての心配は減りましたが、もう1つ、問題はニートの娘さんです。娘さんのために、少しでもお金を残してあげたいと娘さん名義で死亡保険金には加入しているそうですが、お葬式代程度の保険金なので不安とのことでした。

C子さん曰(いわ)く、「もう娘も24歳なので、親が面倒みるのも違うのかもしれませんが、娘が小さい頃に離婚してしまい、彼女には迷惑をかけてしまったので、やれることはやってあげたいんです」とのことでした。

そこで、娘さん名義でつみたてNISA口座を開設することをアドバイスし、まずは「月2万円の積み立て」をすることにしました。筆者は娘さんにもお会いしましたが、とても素直な純粋な方でした。娘さんにも自立への一歩を踏み出してもらうべく、筆者のマネーセミナーへの参加を促したところ、前向きに検討してくれ、まずは参加までは行き着きました。現在は娘さん自身で考えて一歩一歩進んでいる最中です。

少しずつですが、C子さんの将来の不安は和らいでいるようです。とはいえ、これからの時代、自分の生活を維持するだけでも大変なのに、そこに母親に加えて、子どもの面倒も見なくてはならないとなると、負担は相当なものでしょう。血がつながっているからこそ難しい面もありますが、この連載でも何度も伝えているように、各自それぞれが経済的、精神的に自立することが大切なのだと改めて思います。

「誰かがやってくれる」ではなく「自分でどうにかする」。昔の日本と異なり、国や企業の力は弱まり、以前ほどは守ってくれなくなりました。昔は国や企業に依存していれば、どうにかなりましたが、現在は「依存」から「自立」の時代です。

一度しかない人生。自分と向き合い、お金と向き合い、自分の足で生きていくことが求められていると思います。