AI半導体市場でNVIDIAが圧倒的な強さを誇り続ける理由は、単なる製品性能にとどまらない。実業家のマイキー佐野氏は、その本質がソフトウェア基盤による「囲い込み」の深さにあると指摘する。
 
NVIDIAが長年かけて構築してきた開発プラットフォームは、世界中の研究者にとって事実上の標準となっている。AIの開発コードの大半がこの基盤の上で動作しており、他社チップへの乗り換えには大規模なコード書き換えが必要になる。それが「移行コスト」という見えにくい高い壁として機能し、競合他社の参入を長年にわたって阻んできた。スタンフォード大学の研究者が設計したこの基盤は、AIエコシステムの土台として今も深く根を張っている。
 
一方で、高い利益率を誇るNVIDIAに対し、GoogleやAmazonをはじめとするハイパースケーラーが反旗を翻し始めた。両社は自社開発のカスタムチップを外部販売する戦略へと舵を切り、「NVIDIAへの依存を下げる」という方針を公式に打ち出している。
 
その背景にあるのが、AIの主戦場が「学習」から「推論」へと移行しつつある変化だ。推論フェーズでは処理あたりのコスト効率が問われるため、特定用途に特化したカスタムチップが有利になりやすい。実際に画像生成AIの大手が特定のカスタムチップへ移行後、推論コストを大幅に削減したという事例も市場で報告されており、佐野氏はその動きを一つの重要な転換点として言及する。
 
ただし佐野氏は、「それでもNVIDIAは強い」と断言する。移行コストに加え、カスタムチップのラック設計が各社のデータセンター仕様に合わせて特化しているため、汎用普及には物理的な壁もある。さらに、GoogleやAmazon自体がNVIDIAの最新製品を引き続き大量調達しているという現実がある。自社チップを推進しながら競合製品も買い続ける構図には、いまの業界の複雑さが凝縮されている。
 
佐野氏はAI市場の行方を「効率化」「標準化」「多様化」の3つの潮流で読み解き、関連する周辺企業にも注目を促す。NVIDIAの優位がいつまで続くのか、その答えはまだ誰も持っていない。

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現在はアカデミズム関係者・経営者・投資家・学生が参加するビジネススクールも運営