株式市場に100年に1度の大波。超金融緩和で日経平均は2万円へ
5月23日、いきなりハシゴを外されたかのように、一気に落下していった日本株。その後も値動きの荒い展開が続いたが、世界的にファンダメンタルズ面にはさほど不安がなく、株価は長期上昇を遂げると武者さん。そして、100年に1度の大波を見逃すなと進言する。


5月の暴落はもっぱら需給要因。不安は中国経済のみ

昨年11月から急騰を続けてきた日本株が5月23日に歴史的な暴落を記録し、以後もしばらく波乱含みの展開となったが、これはもっぱら需給要因によるものだ。そして、ファンダメンタルズ要因としては、?中国経済の失速、?米国経済の失速――という2つの懸念材料が挙げられる。

このうち、まず?についてはその傾向がいっそう顕著になってきているといえよう。明らかに、過剰投資による経済成長が完全に行き詰まっている。かといって、内需主導による経済成長に方向転換するのも困難だ。労働分配率が低く、稼ぎ出した付加価値の6割を支配層が搾取しているので、なかなか個人消費には回っていかないのだ。

一方の?は、つまるところ量的金融緩和に対する懐疑論の蒸し返しだ。米国FRB(連邦準備制度理事会)のバーナンキ議長の発言をきっかけに、量的金融緩和の出口戦略がいよいよ具体化し始めたとの観測が飛び交うようになった。そして、FRBが出口戦略に踏み切れば、潤沢なマネー供給が途絶えて金利の急騰を招き、株価と景気を冷やしてしまうとの懸念が一気に広がっていったのだ。

新興国に代わって先進国の内需拡大が世界経済を牽引する!

もっとも、米国株の下落がごく限定的であったように、量的緩和に対する懐疑論は日本株調整の後付け講釈にすぎなかったといえるだろう。冒頭でも述べたように、日本株の調整は主に需給要因によるもので、ある意味、これらのファンダメンタルズ要因は口実だ。したがって、株価下落によって需給の調整が進めば、相場が回復することになる。

ただし、手放しの楽観は禁物だ。今は口実であっても、先々で再び懸念要因として浮上する可能性もある。特に中国経済はさらなる失速もありうるので、十分に注意を払うべきだろう。その傾向が顕著になれば、株式市場にも相応のショックが発生しうる。

中国が凋落すれば、それに伴って世界経済も減速しかねない。あるいは新たな牽引役が台頭するシナリオも考えられるが、他の新興国の経済成長は中国の穴を埋められるほどの域には達していない。だが、中国の失速分は先進国の内需が補うことになるだろう。

これまで先進国が進めてきた金融緩和とは、国内で職にあぶれていた人を活用し、内需を活性化させることを狙ったものだ。それが奏功すれば、これまで年に1度だった旅行が数回に増えたり、健康診断を受けたり、子供に高度な教育を行なったりといった具合に、人々の生活の質が向上する。

こうした先進国の内需拡大が、世界経済の牽引役となってくるわけである。つまり、中国をはじめとする新興国の「物量」による成長から、先進国における生活の「質」の向上が主導する成長へと、世界経済の軸足が移りつつあるのだ。現に、株式市場の焦点もシフトしてきている。

年初来からの各国の株価を比較すると、中国、ブラジル、ロシアの株式が軒並み不振である一方で、日本を筆頭に、スイスや米国、英国、ドイツといった中核先進国の株価が好調である。しかも、先進国では市況関連やハイテクなどの景気敏感株ではなく、消費関連、ヘルスケア、サービスのようなディフェンシブ関連の健闘が目立つ。「先進国の時代は終わり、BRICsが主役に」といわれてきたが、もはやそれは過去の話なのだ。

金融緩和が終わればマネーゲームも終わって株価上昇も止まるとの見方も根強いが、私はそういった意見に真っ向から反対する。金融緩和が先進国の内需を拡大させれば、おのずと株価の上昇も長期化するはずだ。ここまでの日本株の上昇は、あくまで出遅れてきた分の修整にすぎない。リーマン・ショック以降、世界の株価は2倍になったが、日本株はずっと取り残されてきた。