もちろん、さらなる上昇のためには、デフレ脱却と持続的な経済成長を果たす必要がある。アベノミクスの成長戦略においても、輸出のみならず医療や教育、農業などの分野にも力点が置かれており、それらを通じた内需主導型の景気拡大が求められるだろう。

為替については、半年で3割もの円安が進んだだけに、もともと1ドル=100円付近で調整するとみていた。その水準で安定すれば、日本経済の足を引っ張ることはない。日本がデフレから脱却し、米国経済の成長も顕在化すれば、もう一段の円安もありうる。

具体化されたアベノミクスの成長戦略がたとえ期待外れの内容でも、さほど気にする必要はない。圧倒的に重要なのは、日銀が量的緩和を推し進めていることだ。そもそも、それを異次元と表現することに私は疑問を感じる。前人未踏の「新次元」の緩和だ。

この緩和策で長期的に日本株は上昇傾向を示し、目先は日経平均2万円が視野に、いずれは4万円を目指す可能性もある。むろん、その大波の中で最も注目すべきは輸出関連と資産関連株だ。

武者陵司(RYOJI MUSYA)
武者リサーチ代表

大和総研アメリカでチーフアナリスト、ドイツ証券では副会長兼チーフ・インベストメント・アドバイザーを務め、2009年に武者リサーチを設立。日本を代表するストラテジスト。近著に『日本株「100年に1度」の波が来た!』(中経出版)がある。




この記事は「WEBネットマネー2013年8月号」に掲載されたものです。