〈お前、ポンコツだな〉「証拠隠し」「違法捜査」「不倫」不祥事続出の検察に新たなパワハラ疑惑…自民党からも″第三者委″求める声
政府は女性で初めて検察トップの検事総長になった畝本(うねもと)直美氏の8月12日付での退任を決めた。2年間の畝本体制下では東京地検特捜部の検事が、取り調べた捜査対象者との不倫におぼれるなど不祥事が続出。
「退屈な調べしやがって」「お前ポンコツだな」元検事の男性の手記の画像、研修で浴びせられた罵声の内容が記されている
8月3日には大阪地検で証拠隠しやパワハラが行なわれたのではないかとの新たな疑惑も提起された。自浄能力に期待できないとして自民党内からも第三者委員会の設置を求める声が出ている。
女性初の検察トップも在任時は不祥事噴出
「最近の連続した検察の不祥事は目に余るものがあります。冤罪。証拠の隠蔽。証拠の捏造。違法な取り調べ。セクハラ、パワハラ。捜査対象者との不適切な関係。一般企業だったら経営者の責任問題に発展します」
3日、都内の日本外国特派員協会で検察の現状を厳しく批判したのは自民党の森雅子参議院議員。法務大臣在任中の2020年、東京高検検事長の賭けマージャン問題などを受け綱紀粛正策をまとめた経験を持つ森氏は「私が法務大臣を終えてから今まで6年間、検察は(綱紀粛正策に基づく改革に)取り組んでこなかったのです」と言い切った。
法務・検察当局は7月29日、東京地検特捜部で「キャップ」と呼ばれる捜査主任も務めた西田将仁元検事(48)を、捜査対象の女性と不適切な関係を持ったなどとして懲戒免職処分にしている。
「女性は2024年に特捜部が当時の柿沢未途衆議院議員を逮捕した公職選挙法違反事件の関係者とみられ、西田元検事が直々に取り調べを行い、略式起訴した。違法なカネを受け取ったとして略式処分になっています。
ところが既婚者の西田元検事はその刑事処分が確定する前にこの女性と交際をはじめ、取調室として公費で宿泊料を払うホテルを私的に利用して性行為に及び、金銭まで受け取っていました。公判中の別の被告は違法捜査を疑い西田元検事の証人尋問を求めています」(司法記者)
畝本検事総長は2024年7月に就任し、慣例では2年後の今年7月に退任するはずだった。8月になったのは西田元検事の問題に追われたためとみられている。
準強制性交の被害にあった女性検事が会見…後輩検事のパワハラを公益通報
畝本体制ではほかにも不祥事が噴出。大阪地検特捜部に所属した検事が取り調べで被疑者を「なめんなよ」と恫喝したとの特別公務員暴行陵虐罪で起訴されたこともあった。
そうした中で森氏は、大阪地検元検事正の北川健太郎被告が元部下の女性検事に対する準強制性交罪で起訴された事件で第三者委員会を法務省と検察庁の両方に設置することを求める自民党内の新たな議連会長に就任。「今、検察の改革をやらないと検察は変われない、そして新たな犠牲者が出てしまう」と外部の目を入れた検証と改革の必要性を訴える。
その女性検事、ひかりさん(仮名)はPTSDに苦しみながら職場に第三者委の設置を求めたがこれを拒絶され、4月30日に辞表を出したが退職手続きが終わっていない状態だ。
ひかりさんも同じ8月3日、都内で会見を開いた。パワハラでつぶされたと訴える男性の元検事から手記を預かったとし、自分の責任でその内容を「公益通報」としてメディアに知らせると切り出した。
「男性の検察官が大阪特捜(部)財政経済犯のキャップ検事から違法捜査を強要され、酷いパワハラをされ、『被害申告するな』と脅迫、口止めをされた。さらに心身をひどく傷つけられ、検察庁に被害を告発するも内部調査で握りつぶされ、加害者は処罰されずに守られ、被害者が辞職に追い込まれた事案です」(ひかりさん)
「ポンコツだな」「3時間睡眠で仕事は回せるだろ」…隠ぺいの指示も
手記によると、西日本の地検に所属し約10年の検察官キャリアがあった男性は2023年、大阪地検特捜部で約1カ月間、脱税事件の実務をこなしながら処理を学ぶ研修を受けた。その際、被疑者が容疑の一部を否認し、それを聞いた教官のキャップ、A検事が連日のように
「退屈な調べしやがって。お前、ポンコツだな」
「今まで仕事をサボってきたからろくな調べができない」
「3時間睡眠で仕事回せるだろ。俺もそういうようにやってきた」
と人格を否定するような罵倒を浴びせたという。さらに、被疑者が否認しているのにA検事の見立てに沿う“作文の自白調書”を作成するよう指示され、容疑に疑問を抱かされる内容の録音データが見つかると「隠蔽しろと指示された」と書かれている。
精神的に追い詰められた男性は指示に従ってしまうが、罪悪感から先輩検事に打ち明け、この先輩の助言で特捜部副部長にも報告。しかしA検事から「お前が刺すならこっちもきっちりやるからな」と恫喝され、研修終了後に心身の健康を失い退職を決意したという。
退職前にこのことを大阪高検次席検事に報告し調査を求めたものの、高検は数か月後、
「パワハラはあったと認定した。証拠隠しは、そのように男性検事が勘違いしてしまう発言があった。Aの言動は問題だがパワハラと認定したのは1回目だから今回は許すことにした」
と伝え、不問に付したとしている。
男性は手記を検察組織を改善するためのひかりさんの活動に活用してもいいとしながら、自分の特定につながることは伏せてほしいと求め、その理由を「検察庁に関わりたくないし、国家権力に反旗を翻したらどのようなことになるのか不安で仕方がないからだ」とつづっている。
「対応できなかった畝本さんはひどいトップだと思います」
手記を紹介したひかりさんは、2017年まで約5年間に5人の検事が自死した記録を示し、
「一生懸命、被疑者、被害者と向き合って仕事をしている職員はたくさんいます。その職員が安全に仕事ができる環境を整えるのは検察組織の役目だと思います。
しかし万能感や選民思想、認知の歪んだ人たちが幹部職員にはびこり、真面目にやってる職員を大切にせず、自分たちの価値観で違法捜査も何の躊躇もなく押し付けたり、被害者の声も聞かずに職務怠慢で不起訴にしろっていう指示もあります。そう言ってどんどん本当に懸命に働く職員を辞職や自死に追い込んでいっているありさまだと思います」(ひかりさん)
と検察の体質を厳しく批判した。
朝日新聞によれば大阪地検と大阪高検は3日、この手記に対しいずれも「『手記』の内容を把握しておらず、現時点ではコメントできない」と回答したという。
不祥事が続出する中、畝本検事総長が去ることにひかりさんは、
「畝本さんの時代だから問題が起きたのではなく、脈々と続いていました。それが表に出続けているのに対応できなかった畝本さんはひどいトップだと思います」
と話した。組織が人命や人生を左右するほどの問題を起こせば第三者が調査を行なうのは今や常識だ。検察だけがなぜ例外を主張できるのか。
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取材・文/集英社オンライン編集部ニュース班

