昨年7月7日、ホワイトハウスで会談するトランプ米大統領とイスラエルのネタニヤフ首相/Andrew Harnik/Getty Images

(CNN)何年もの間、イスラエルのネタニヤフ首相がトランプ米大統領との会談で米首都ワシントンを訪れるときには、筋書に沿った演出が施されてきた。赤絨毯(じゅうたん)に温かい握手、そしてイスラエルと米国の同盟関係の緊密さを強調する共同メッセージなどだ。

しかし、両者が最後に会ってから5カ月、その関係は著しく変化した。イランとの戦争が始まった当初に見られた緊密な協力関係と惜しみない称賛は、トランプ氏による罵倒(ばとう)を伴う激しい怒りの言葉に取って代わった。怒りの矛先は、自らへの支持を最も声高に表明する国外の盟友に向けられた。

トランプ氏が政権に復帰して以来、ネタニヤフ氏が米国を訪れるのはこれで7回目となる。その回数は他のどの世界的指導者よりも多い。しかし今回、同氏は再選を目指す首相としてワシントン入りする。目に見えて緊張が高まった関係の立て直しを図りつつ。

米政府当局者とイスラエルの情報筋によると、ネタニヤフ氏はここ数週間、ホワイトハウスへの招待を取り付けようと努めてきた。訪米の目的は、イランとの戦争の進展について協議し、トランプ氏に対して外交的な譲歩を行わないよう警告することだ。

トランプ氏は会談に消極的で、一部のホワイトハウス当局者もイスラエル側に対して不満を抱いていた。彼らにとっては、イスラエルがメディアへの情報漏洩(ろうえい)を通じて会談実現を既成事実化しているように見えたからだ。今週行われるリンゼー・グラム米上院議員の葬儀が両者に顔合わせの機会を提供する形となったが、それに続いてより大きな会談の場が設定される見込みだ。

ある米政権高官は、トランプ氏がネタニヤフ氏と「強固な関係」を築いているとした上で、イスラエルには「米大統領以上の友人はいない」と述べた。「米国民と世界中の同盟国はすでに以前より安全な状況にある。米国とイスラエルが大胆な取り組みを通じ、イラン政権の核兵器開発能力を食い止めているからだ」。この高官はCNNの取材にそう語った。

両首脳は前回の2月の会談で、その後のイランに対する共同軍事作戦の土台を築いた。戦端を開いた攻撃は前例のない軍事的連携を示すものとなり、ネタニヤフ氏とトランプ氏はともにその成果を積極的に宣伝、称賛した。しかし、イラン政権の転覆という過度に楽観的な目標を達成できないまま戦争が長期化すると、両者の溝は明確になった。ネタニヤフ氏がイランに圧力をかけ続けることを望む一方、トランプ氏は戦争からの出口を求めた。

戦争に至るまでの過程で、トランプ氏はネタニヤフ氏や他の関係者から、紛争はあくまでも限定的で、数週間程度で終わると説得されていた。だがそれから数カ月後、犠牲者を伴う不安定な膠着(こうちゃく)状態に対する怒りから、同氏は非公開の会合で罵(ののし)り言葉を連発。当初の想定と異なり、イランの体制が屈服しないことへの憤りを募らせていると、ある米当局者は明かす。

一方、イスラエル側関係者によると、今回ネタニヤフ氏はイランの核開発と軍事力再建の現状に関する最新情報をトランプ氏に提示する予定だという。ただしこの関係者は、イスラエル側の評価として「少なくとも11月の米中間選挙まで、トランプ氏は全面的な戦闘再開にほとんど関心を示していない」と述べた。

ネタニヤフ氏は、4月の突然の停戦について公の場でトランプ氏と対立することは避けてきた。しかしネタニヤフ氏の政治的同盟者たちはイランとの合意を激しく批判。親ネタニヤフ系メディアは、その合意を主導したバンス副大統領、トランプ氏の娘婿のジャレッド・クシュナー氏、スティーブ・ウィトコフ中東担当特使を公然と標的にした。これに対しバンス氏は、ネタニヤフ政権の閣僚らがイランとの交渉を妨害し、合意に反対するよう米国世論を誘導しようとしていると非難。イスラエルは「自らに残された唯一の強力な同盟国」を遠ざけつつあると警告した。

イスラエル総選挙を10月に控え、ネタニヤフ氏が政治的圧力に直面していることをトランプ氏は敏感に察知しており、自身の支持が選挙結果に決定的な影響を及ぼし得ることも理解していると、当局者らは述べている。

少なくとも公の場では、トランプ氏は現在の苦境についてネタニヤフ氏を非難してはいない。しかし以前には、停戦を危うくしたレバノン国内での爆撃作戦を継続したことについて、ネタニヤフ氏を「狂っている」「扱いにくい」と酷評。また自身の戦争目的から逸脱したとして、電話で厳しく叱責(しっせき)したこともある。

こうした両者の目的のずれは、イラン問題にとどまらない。

イスラエルは最終的に1カ月前、レバノンとの三者間合意に同意したが、レバノンのイスラム教シーア派組織ヒズボラが先に武装解除しない間は、レバノン南部からの完全撤退を拒む姿勢を示す。ネタニヤフ氏は26日の安全保障閣議でトランプ政権について、レバノンだけでなく、ガザやシリアからもイスラエル軍を撤退させたい考えだとの見解を示した。会談について説明を受けたイスラエル側の情報筋が明らかにした。

その情報筋がCNNに語ったところによれば、ネタニヤフ氏は撤退の構想に反対する意向を明確にしたという。

長年にわたる地域紛争に加え、ここ数週間でさらに二つの問題が浮上した。一つはトランプ氏がトルコに最新鋭のステルス戦闘機F35を売却する可能性が浮上したこと。もう一つは米国・サウジアラビア間の民生用原子力協定だ。イスラエル当局者は、前者については同国の質的軍事優位性が損なわれる恐れがあると懸念を表明。後者については地域的な核軍拡競争を引き起こしかねないと警戒している。トランプ氏はサウジとの合意について、公にはイスラエルとの国交正常化やアブラハム合意の拡大と結び付けているが、サウジ政府はそのような関連性を確認も容認もしていない。

27日、トルコへの戦闘機売却の可能性と、それに対してネタニヤフ氏が異議を唱えていることについて問われたトランプ氏は、売却するかどうかを決められるのは自分だけだと強調。その上でトルコを「素晴らしい同盟国」と呼んだ。

イスラエル側の関係筋によると、ネタニヤフ氏は今回の会談に臨むにあたり、トルコへの武器売却やサウジとの原子力協定がイスラエルの軍事的優位性を損なわないという保証を求める考えだという。また、長期的な米・イスラエル防衛協定を改めて推進することも要求する方針だ。この協定は、期限切れが近づいているオバマ政権時代の覚書に代わるものとなる。

ネタニヤフ氏はトランプ氏との摩擦について「戦術的」な意見の相違にすぎないと一蹴し、関係はこれまでと変わらず緊密だと強調している。しかしイスラエル政府の高官によれば、トランプ氏との会談の日程調整には時間がかかり、当初は「実現を阻まれていた」という。ただ阻んだのが誰なのか、この高官は明らかにしなかった。会談が正式に決まったのは、ネタニヤフ氏がグラム氏の葬儀に参列すると発表した後だった。

ネタニヤフ氏にとっては、これ以上ないほどの正念場が訪れている。最新の世論調査によれば、10月の選挙で想定される獲得議席は、再び政権を担うために必要な過半数に遠く及ばない。トランプ氏は長年、ネタニヤフ氏にとって最も重要な選挙戦の支援材料の一つであり、今回の訪米で引き続きその影響力を示すことは極めて重要になる。ネタニヤフ氏は現在も、選挙前にトランプ氏をイスラエルへ招きたいと望んでいる。

注目すべきことに、今回の会談では現時点で公開の写真撮影が予定されていない。2月の会談でも、戦争前の機微な軍事計画に配慮してカメラは入れられなかった。果たして今回の慎重な対応は、次の対イラン作戦の計画を隠すためのものなのだろうか。そうでなければ、次の停戦をめぐる両首脳の緊張関係を覆い隠すための措置なのかもしれない。